着陸だけじゃない。離陸の技量の話。

「今日のパイロットは着陸が上手かったなー」なんて声をよく聞きますが、実際、本職の我々からするとフワッとした着陸が一概に良いと言う訳ではないのは飛行機マニアの方々でも知っている話です。

滑る雪氷滑走路では堅固な接地で多少強い着陸でも、お、ナイスランディング。なんて思ってしまいます。

同じように、皆さんが大差ないと思っている離陸でも、僕らプロから見れば、その差は歴然にあって、ローテーションレートには特に差が出てきます。

飛行機には、超えてはならないスピードがあり、フラップを下げていると、その速度は小さくなります。離陸速度が時速280kmで、フラップの超えてはならないスピードが時速300kmだったりします。

離陸前にはフラップを出しており、いきなり突風が正面から吹くと、フラップの限界スピードをオーバーしてしまうので、お尻を擦らない程度に普段より早めのローテーションレートで、なるべく速度がつき過ぎない様に、早めに機首を上げていく必要があります。

そんな感じで、上空の風を見て、こう変化するだろうなと予想して予め手立てを打つのが我々パイロットの仕事です。

ジャンプシートと言って、飛行機のコックピットには補助席があるのですが、そこから見ているときに、風を意識しているコントロールなのか、そうじゃないかは如実にわかります。たとえ副操縦士であってもよく考えて操縦桿を動かしている人もいれば、機長でも通常のレートで上げる人もいます。

もちろんまだまだFOの僕からするとその意図を詳しく聞くことはできないのですが、なんとなく、風を常に思い浮かべながらフライトを見ていると、その差がよくわかります。

神は細部に宿ると言いますが、英語では悪魔は細部に宿る。

細かいですが、突風でフラップのスピードオーバーは世界的にも毎年あるような事象なので、プロとして「その風は予想してませんでした」なんて恥ずかしいことのないように日々安全を守りたいな、など、ジャンプシート中に思った次第です。

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