SHって何?と聞かれた時の想像力の話

話は年の暮れ。最後のLEGは自分の担当だったのですが、雨の海外空港にて出発の準備を全て整え、あとはお客様の搭乗待ち、という時。

隣のキャプテンに「ATISのSHってどういう意味?」と聞かれました。

こういう質問、訓練生の時からよくされるのですが、訓練生なら

「ああ、驟(しゅう)雨性の雨ですね」でOKです。座学もこれで丸をもらえるでしょう。

じゃあ、プロになったらどうなのかというと、
気象学の定義を答えられたところで無意味なんです。なぜなら知識はフライトで活かすためにあるからです。

SHの文字からどこまで想像力を働かせるかが重要です。

僕がその質問をされた時に僕が思ったのは以下の3点
①ATISに表現されていないCB,TCUがあるのでは無いか
②あるとすれば経路のどちらに避けれるのか、上空の風とエリアの把握が必要
③避けれないならベルトサインの運用と客室へ揺れへの周知

この辺りを確認できるなら最低限安全の確保ができるはずです。

①に関して外を見るとオーバーキャストなので、見てもあまりわかりませんでした。レーダーを早めに作動させて確認する必要があるなと考えました。

②に関してはフライト前に調べるのは難しいですので事前の把握が絶対必要です。
SIDには高度制限があるのですが、そういう場合、エリアが輻輳していて避けれない場合が低高度では往々にしてあります。

③に関しては一番揺れるCloud baseがどこにあるかを把握して、上昇して行くとその高度から揺れると考えておきます。CLOUD TOPを推定するのは難しいので他の便の情報を集めておきます。

驟雨性の雲は対流雲ですので、その中だとBase以外でも揺れる事があるからです。

たかがSHという記号だけですが、この当たりが事業用操縦士の方々なら最低限考えている事になります。

ですので一応「SHはにわか雨ですね。雲があってもエリア的にはどちらにでも避けれますし先行機の揺れの情報でも顕著なものは無いのでブリーフィング通り行きます」

とだけ言っておきました。この業界「分かってますアピール」をする事ほど痛いことは無いですから簡潔明瞭に。聞かれた時に底なしに答えられたら良いだけです。

そんな感じで今年最終レグも無事に飛び納め。みなさま良いお年を。
来年もどうそよろしくお願いいたします。

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