自治会イベント

「今年も沼祭りやらないんですかぁ?」という、なんとなく恨めしそうなお言葉を、既に4人くらい自治会住民の方からかけられただろうか。

私が今役員をやっている自治会の「メインイベント」とも言える「沼祭り」は、もう20年以上継続していて、この地域に長く住んでる古い住民の方には楽しみの一つだろうな、ということは、間違いなく感じている。それでも、自治会長と相談の上で「今年も実施しない」という方針を出して、「拡大役員会」を開催し「今年は沼祭りをやらない」という結論を出した。「今年は」というよりも、従来の形式での沼祭りは、もうずっとやらないという流れにするつもりでいる。無論、私だけで決められることではないけれど、そこは、役員権限というか、押し切った感じだろうか。
(いや、文句があるなら、役員をやって欲しい・・・)

役員が2オペ、本来4人で回すはずの仕事を、自治会長と私の二人だけで回している、という背景は、無論ある。私も自治会長も、リタイアした訳じゃないから、仕事を持っている。空き時間があまり取れない。それもあるのだけれど、最大の理由は「沼祭り」の開催形態だろうか。

会場は「沼公園」で、公園といっても人が集まれるスペースは沼の護岸というか、沼の周囲のかなり狭い場所で、その狭い場所で、プロパンなどをレンタルして焼きそば、豚汁、焼き餅、お汁粉、焼き鳥を提供する。材料は全て自治会費から支出するので、住民は無料で食べ放題となる。(と言いつつ、過去、一人で何回も「おかわり」する人がいて、「あれは問題だ」という話があって、一人ワンセット(各1枚で5枚組)の食券の束を配布する形に切り替えたけれど。)その「食券」の束を毎年準備しているのは、会計の私ですが。
食べ物だけじゃない。飲み物は完全に「飲み放題」で提供していた。ビール、日本酒、焼酎、そして、無論ソフトドリンクで、ウーロン茶、日本茶、子供も来るからオレンジジュース、その他、会計の私の判断で、子供が好きそうな飲み物を用意。過去、一度だけ、年配の住民の方のリクエストで、その飲み放題にウイスキーを加えたこともあった。

ぶっちゃけ、お酒を飲まない住民の方からしたら、「不公平じゃないか」というクレームの来そうな「お祭りの運営形態」ではあったけれど、いわゆる長老格の方々に酒豪が多かったから、誰も文句は言ってこないまま20年は同じスタイルで実施してきたと思う。お祭りの「目的」もはっきりしていて、「一緒に酒を飲みながら、つまみをつつきながら、とことん話でもして、親交を深めようじゃないか」ということだったと、私は理解している。

同じ趣旨の「会計手配事項」に、自治会総会の後の「懇親会」があった。自治会総会で、自治会の前年度決算と新年度予算が決まり、行事日程と自治会役員人事の承認が得られたら、その後「懇親会」を実施する。ここでもビール、日本酒、焼酎、(一時期はウイスキー)、ウーロン茶、日本茶、ジュースなどを「飲み放題」で用意して、オードブルと弁当を人数分手配し、総会と同じくらいの時間を「懇親会」に割いた。ほとんどの隣組長や理事、幹事、役員の方が参加していたのは10年くらい前、までで、私が役員になったあたりから、少しずつ変化が出てきたと思う。「懇親会」になると「すみません、用事があるので」と(堂々と)帰る人が出てきた。コロナ前になると、半数くらいが「懇親会」になると、「オードブル」と「弁当」(いずれも、レジ袋付きで個別に持ち帰れる状態で手配してあったの)を持ち帰って、「懇親会」に残るのは年配の方が中心で、悪い言い方をすれば「常連の呑んべ」ばかり、みたいな感じになった。
会計としては、万事を「前年踏襲」でやってきたから、懇親会を実施しなくても、オードブルと弁当は手配した。そして、会議用の「お茶」と、以前は「飲み放題」だったアルコール類は「缶ビール一本」を持ち帰っていただく、ということで、「前年踏襲」との折衷案のような形で、コロナ後の(今年に至る)4回の総会は実施してきた。ただ、コロナがなくても、「懇親会など参加しない」という人がほとんどになっていた、という気がする。

沼祭りについては、判断の決め手は「三密」だった。公園のうち、人が集まれるスペースが狭いから、例年、1平米あたり2〜3人という密度で、焼きそば、豚汁などの前に並んで受け取り、プラスチックのコップに好きな酒(か、ソフトドリンク)を入れて、(飲食を伴うから、当然マスクはできない状態で)会話をする。祭りの趣旨として、「みなさん、是非、ふだん話をしない人と、ご歓談ください」があるから「黙食、黙飲して下さい」などとは言えない。酒を飲みながら話をすれば、当然、唾液の分泌も盛んで、飛沫感染のリスクはかなり高くなる。
私が役員になってから、「ストラックアウト」とか、「ビンゴ」をイベントとして加えた。子供たちに楽しんでもらうため。

「ビンゴ」をイベントに加えた最初の年、普通に7等くらいまでだけ(200世帯を超える地域で、食券は毎回150枚が全部出尽くす状況で)景品は50くらいだけ用意して企画したら、「ビンゴ、当たんなかったよ」と、かなり多くの方に声をかけられて、(さすがに、自治会役員を7年もやってると、色んな方が普通の知り合い的に声をかけて下さって、)どうしようかと悩んだことがあった。
その時期、地元の方がよく顔を出している居酒屋に足を運んで、話をしていたら、ビンゴ大会についての助言をもらった。
「お祭りでのビンゴみたいなのは、景品が高いか安いかじゃなくて、当たるかどうかが問題なんだよ。みんな、「当たった〜」みたいな気分になりたいんだから、安くてもいいからとにかく景品をたくさん用意することが大事なんじゃないの?」という助言。これは、大ヒットだった。そもそもが貧乏性の私だから、ポケットティッシュ一個というのが9等賞で20本。その下、12等賞でキャンディ2個を袋に入れてリボンをつけて、というところまでやって、景品総数130超えで、用意して(私が一人でやりましたが)、一等は地元スーパーマーケットの1000円の商品券、という「豪華景品」も用意しながら、総額7600円の予算で150個の景品を用意して、それでも大盛り上がりした。これは、楽しかった。いい思い出です。

だけど、「ビンゴ」も「ストラックアウト」も含めて、企画は全部中止。やはり、「三密」はなんとしても避けたい。なんとなく気になるので、地元の居酒屋には今でも顔をだす。話をしていると、「あそこの社長さんがコロナで亡くなった。」とか、そんな話も耳にする。(情報収集しないでいると、なんとなく不安でならない。)結局、どう考えても「沼祭り」を実施して、かなりの「三密」の環境を作り出して、コロナ感染の住民が出たりしたら、自治会役員としては責任を取りきれない。どれだけ「やらないんですかぁ〜〜」と言われても、「やらない」という判断を押し通すしかない、と思っている。

それ以上に気になるのは、ここ10年〜20年の変化、だろうか。私の時代は「飲みニケーション」というか、「酒でも酌み交わしながら、とことん、話をしようや」ということが、そこそこあった、と思う。ある意味、それは「日本的なコミュニケーションスタイル」だったかも知れない。私の地元は「日本酒」の蔵がいくつかあって、日本酒は地場産業でもある。町には「乾杯条例」というのがあって、「とりあえずビール」ではなく、宴会などでは「とりあえず日本酒」で、地元の酒造メーカーを盛り上げましょう、というのがある。

ただ、一緒に酒を酌み交わして、それまでは話をしたこともなかった人と、「お前、案外いい奴だな」なんて言い合いながら、肩を組んで千鳥足で帰る、なんていう昔のサラリーマン漫画みたいな情景は(実際、昔は何度も経験したことがあるけれど)今はもう、あり得ないんじゃないか、というか、少なくとも「ジジイ」となった私と、若い方々との間で、このやり方によるコミュニケーションの取り方というのは、ほぼ、不可能だ、という気がしている。

私が大学生だった頃は、教授と学生とで酒を飲みながら話をする、なんていうことは普通にあった。(「在野のW」を看板に掲げる大学だった。)無礼講(と言いつつ、一定のルールの範囲内で)で、新人だった自分が会社の事業部長と直接話をする、なんていうことも、酒の席ではあり得た。ただ、そもそも学生が最近は酒を飲まなくなってきているし、会社などでも、部長などと直接話をする機会があるよと言っても、若い人たちなどは「そういう面倒くさい集まりには出たくありません」と、はっきりと断ってくるケースが少なくない(というか、ほとんどだ)と、聞いている。
昔ながらの「酒の文化」は、今はもう、消滅しつつあるような気がしている。
私が大学の専任教員だった時から、学生のスタイルとして「別に、先生方と親しくなりたいとは思いませんから、酒なんか一緒に飲むなんていう面倒なことはしたくありません」という、(私が学生だった頃のコミュニケーションスタイルとは、まったく別の)スタイルが、当たり前になってきたと、感じた。ビジネスライクと言えば、そう言えなくもない。

自治会の老人会の方々にしてみたら、飲み放題で酒を提供するのをやめてしまい、「酒を酌み交わしながら会話をする」機会を提供しなくなったら、(酒が好きな方の楽しみがなくなる、ということもあるだろうけれど、)若い住民の人たちとの交流の機会がなくなるじゃないか、というお考えもあるかも知れない、けれども、そもそもが、若い方たちは酒に釣られてイベントに顔を出すということが、なくなりつつあるんじゃないか、という気もする。
自治会会計としての手配を、どうしたらいいんだ、ということもあるけれど、酒を飲む飲まない、とか、イベントをやるやらない、とか、それ以前に、親しくなる必要がないというあたりを、どうしたらいいんだ、というのが悩みの種かも知れない。

「コロナ」が心配だから、少なくとも「沼」を会場としてのイベントは、私が役員の間は反対すると思う。万一、誰かがそれで感染したりしたら、(気分的に)責任を取りきれない。年配の方が亡くなったという話を(居酒屋情報だけれど)複数回聞いている。(不確かな話はあまりしない方だから、かなり正確な情報だと思う。)自分が役員を務める自治会で、不本意な「コロナ禍」は起こしたくない。
加えて、「酒でも飲みながら」という従来のやり方では、若い、新しい住民の方と、古株との交流は難しい。

特に、私の自治会、アパートが増えてきて、外国人がかなり増えてきた。欧米系に見える方もいれば、明らかにイスラム圏の方もいる。アフリカ系に見える方も見かけた。(私の自治会を通り抜けて、さらに先に住んでいるのかも知れないけれど。)一番気になるのは、万が一災害が起きた時に、そうした外国人も含めて、昔から住んでいる半数以上の古株の住民ばかりではなく、もしかしたら既に3割を超えているかも知れない外から来て今たまたまここに住んでいる住民の方とが、うまく災害対応などできるだろうか、という点だろうか。

イスラム圏の方に、「まぁ、酒でも酌み交わしながら」は、タブーだと思う。これは、若い方々にも通じない。じゃぁ、どうしたらいいのよ、という答えが見つからないでいる。(模索を続けていたら、いつかは答えが出るかも知れないけれど。)

次の役員のやり手がいない。(微妙に、やってくれそうな人がいる、という話は聞いているので、最悪の想定、ワンオペというか、自治会長兼(中略)兼雑用一般、は避けられるかも知れないけれど、)再来年に私が自治会長にならざるを得ないのは、ほぼ確定。むしろ、やりやすくなる、かも知れない。

若い方々が多数参加してくれるイベントをどうしたらいいのか。今週末に会議がある。具体案が出るとはとても思えないでいる。そもそも、私たち役員自身が代案を出せないでいる。
いっそのこと、NPOなどを通じて地元の高校に声をかけて、高校生に意見を出してもらう、なんていうのも、ありかな?なんて考えている。今年と来年、何かを新たに企画するのは無理にしても、さ来年、私が自治会長に押し上げられた後で、何をどう企画するか、今から考え続けたい。なんとか、答えを出したい。少なくとも、酒がメインではない、外国人の方々や、若い方々が参加したいと思える自治会イベント。どうしたらいいのか、考え続けてみたい、とは、思っている。

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