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~散ればこそ~【スポーツ法政新聞会】

※この記事は、今年4月に発行されたスポーツ法政新聞第255号に掲載された記者コラム「ノーサイド」を再編集したものです。


今年は、全国各地で桜の開花が記録的に早くなっているという。東京の桜はすでに見頃を終え、この紙面を読者の皆さまにお届けする頃には散っているのかと思うとなんだか切ない気持ちになる。

〈散ればこそ いとど桜は めでたけれ うき世になにか 久しかるべき〉

現代語訳で、「桜は散るからこそ、一層すばらしいものだ」と歌った和歌が伊勢物語に登場する。なぜそんな風に詠んだのだろうか。一般的に『散る』という単語はマイナスのイメージで使われているのに。「桜散る」や「夢が散る」といった言葉があるように失敗や敗北の象徴である


 目を凝らすと「散」も「敗」も同じ部首を持つことが見えてくる。辞書で調べると、「攵」は「のぶん」といって、「叩く」動作を表す漢字に使われているらしい。スポホウの活動は決して勝者だけに光を当てている訳ではない。私たちはこれまでに、あと一歩のところで惜敗し、拳を地面に叩きつけて悔しさをあらわにする選手たちを数多く目にしてきた。


 改めて考えると私たちは、負けても立ち上がるその姿に勇気をもらっていた。夢が散るのは終わりではなく、次の目標に向けたスタートなのだと選手たちが教えてくれたのである。まるで桜のように。


 このコラムをどう締めようかと考えていたら、桜の見頃はこれからであることに気づく。今年度はどんなすばらしい活躍が生まれるのか。勝っても負けても、懸命にプレーするその姿に私たちは感動し、そして思わず手を叩くのだろう。

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