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コンサルから見たカーボンニュートラル

カーボンニュートラルを知るべき理由

 気候変動モデルをベースにした研究により、最近の温暖化傾向は二酸化炭素の増加によるものという指摘が行われている。この気候変動モデルは2021年のノーベル物理学賞を受賞した真鍋さんが基礎を作ったものだ。
 二酸化炭素以外のパラメータはどう影響を与えるのか、そもそもこのモデルに含まれない要素があるのではという指摘は以前から行われており、二酸化炭素だけを悪者にすることが正しいかどうかは現時点ではまだわからない。
 しかし、各国政府はこれが正しいかどうかはさておき、二酸化炭素を削減する方向に舵を切った。正しいかどうかが証明されてからでは手遅れになる可能性がある以上、この対応は政治的にはアリだと私は思う。大気中の二酸化炭素濃度をこれ以上高めないために、二酸化炭素の排出量と吸収量をバランスさせて二酸化炭素排出量がニュートラルな状態を目指す。おそらく今後30年、各国政府の施策はこの目標を前提に規定されるだろう。
 いずれにせよ、この意思決定により産業構造に大きな変化が起きる。そして、変化があるところにコンサルの飯のタネがある。どんな分野のコンサルでも、知っておいて損はない分野になったのだ。

影響を受ける業界

 日本のCO2排出量は部門別にみるとエネルギー転換部門が最も大きく、ついで産業部門と運輸部門である。産業部門が工場に相当するが、鉄鋼と化学部門の排出量が大きい。これらの産業では、まさに喫緊の課題としてカーボンニュートラルに取り組んでいる企業が多い。業績が悪くなるとかそういう問題ではなく、迫りくる死として認識されている企業が多く、対応優先順位は最大に設定されているケースが大半だ。
 ちなみに定量データは温室効果ガス排出・吸収目録や日本国温室効果ガスインベントリ報告書あたりを参考にされたし。

戦略系コンサルのアプローチ

 この課題に対し、戦略系のコンサルはまず将来のシナリオ作り、自社への影響度の予測からはじめ、自社の目標設定と社内の現状把握、ギャップを埋めるための施策立案と実行支援といった提案を行っている。
 戦略系として特筆すべきは、個社での対応だけではなく大きな絵を描くことも視野に入れている点である。業界内での連携や、CO2排出量の算定ルールの設計、リサイクルの仕組み設計に関しても提案を行う。提案先は公的な機関であったり、あるいはその枠組みの核となる大企業だったりする。こうした大きな枠組みの話ができる点は、戦略コンサルの魅力の一つである。

誰がこの分野で笑うのか?

 私はBig4、特に監査部門がカギを握る思っている。
 現在の大きな課題の一つに、CO2排出量の算定ルールが統一されていない点がある。使用材料+加工工程でのエネルギー消費量等を積み上げる、あるいは一部配賦を行うことで製品ごとのCO2排出量の推計はできるが、そのルールが統一されていないので各社がその計算結果を公表しづらい状態なのだ。アップルトゥアップルで比較できない数字が独り歩きすることは、一方的に不利益を被る可能性があり皆慎重になっている。
 そうした中で、おそらくここ数年のうちにそのルール統一が行われるだろう。その際に、計算の中身を明かすと原材料も加工法もモロにばれるので、計算結果だけを公表することになる。すると、その計算方法や使用したデータが正しいかを保証する外部機関がどうしても必要になるのだ。
 経産省か環境省あたりの天下り団体ができて頭になり、その下で監査法人が実務を担当することが想定される。SDGs等のデータ保証とともに、環境データの保証でBig4が美味しい思いをすることが予想できる。正直うらやましい。


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