見出し画像

イタリア戦後初 左派から右派への政権交代だが… ぬか喜び?狡猾な欧州議会のシナリオ通りの結果かも?

written by Sayuri Iwasa

戦後の長きに渡って左派政権が続いて政治的経済的に疲弊しきったイタリアで、戦後初となる右派政権が誕生したと騒ぐマスコミ。

9月25日に行われたイタリア議会総選挙で、ジョルジャ・メローニ率いる「イタリアの同胞」が上下院共に過半数を獲得してイタリア初の女性首相が誕生しました。

投票率は前回73%に対して64%で9%ダウン。投票率が高いイタリアでは記録的な低さですが日本と比べれば国民の政治への関心は高く、多くの国民がメローニにイタリア第一の政治的経済的改革を期待している気持ちが伝わってきます。

しかし、メローニ政権は、これまでの左派政権の『親グローバリズム(一極体制)反ロシア(多極体制)』ではなく、『反グローバリズム親ロシア』でしょうか?

メローニは、外交基本方針は変えないと言明しています。

イタリア外交の基本方針は「欧州統合の積極的推進と大西洋同盟の強化」です。

つまり、メローニ政権は「欧州議会に協力しロシア制裁に加わる」ことを示唆しています。

この選挙は、イタリア国民の左派政権への嫌悪感を利用して欧州議会が仕掛けた罠かもしれません。今後のメローニ政権の動向を注視する必要があります。

チャートはイタリアの政府純債務残高(対GDP比)の推移です。
(IMF - World Economic Outlook Databases)

画像1

GDPの約1.4倍の純債務残高がある国家財政の改善。イタリア第一を掲げる右派保守政党としての手腕が試されます。左派政権との外交手腕の差を見せつけることができるのか?要注目です。その観点で見れば、欧州中央銀行への依存を考慮せざる得ないメローニ政権にとって欧州議会との関係悪化は命取りになる可能性があります。

そう見れば、外交基本路線を維持するというメローニ発言も腑に落ちますが、世界の一極支配(世界政府)計画を実行している欧州連合への積極的な参加は即ちイタリア国家主権の消滅を意味します。

メローニ首相の対欧州議会・対ロシア外交の手腕を拝見しましょう。


イタリア総選挙前の9月22日、欧州理事会議長(President of the European Council)フォン・デア・ライエン(Ursula Gertrud von der Leyen 1958年10月8日 - 64歳)は、米国プリンストン大学で、

画像2

イタリア総選挙に関して懸念があるか?

という取材記者の質問に応えて、

“If things go in a difficult direction, I’ve spoken about Hungary and Poland, we have tools,” 
(私はハンガリーとポーランドについて話しました。もし事態が我々の望まない方向へ進んだら、我々には対抗手段があります。)

と答えてイタリア総選挙に干渉する言葉を述べ、選挙で反欧州連合派の政党が勝利すればブリュッセル(欧州連合議会)とローマ(イタリア政府)の関係が悪化する可能性があると示唆しました。

これはメローニへの脅迫だ!と大騒ぎですが。。。冷静に考えればメローニは反ブリュッセルではありません。

それなら、フォン・デア・ライエンの言葉の真意は???

選挙結果は、反欧州連合派の政党はすべて敗退しました。

あらら、出来レース???

さて、選挙結果はフォン・デア・ライエン議長が望む方向へ進んだのでしょうか?望まない方向へ進んだのでしょうか?

多くのマスコミは、メローニの勝利はフォン・デア・ライエン議長が望まない方向へ進んだと書いていますが、果たしてそうでしょうか?

私は、フォン・デア・ライエン議長が望む通りの方向へ進んだのではないかと考えています。狡猾な欧州議会のシナリオ通りの選挙結果ではないか?

その答えは、メローニ政権が教えてくれるでしょう。

エムケイコンサルティング USA 岩佐小百合