オオクニヌシ

お久しぶりです。
今回はConsoleilの新作であり、初のモノメタル機種である「オオクニヌシ」について解説していこうと思います。


構想

設計を開始したのは一年前の9月の事。
Consoleilというブランドを1年弱続けてきましたがここまでのモデルは全てバイメタル機種でした。
もちろんモノメタルを出したいという気持ちはありましたし、こんなものが作りたいというぼんやりとしたコンセプトはありました。

私が欲しかったモノメタルのコンセプトとは、どのヨーヨーを持っていくか悩んだとき、「とりあえずこれでいいや」と選べる物でした。
ヨーヨーコレクターの気がある私にとって、時間のない中日々の体調に左右されるフィーリングを加味しつつ出先で軽く振るためのヨーヨーを1,2個選ぶことは難しいことでした(同じ悩みの方も多いかもしれません)。
私にとってこの悩みを解決するには

・握り心地で判断することのないシンプルなシェイプ
・ゴチャ系からレール系までありとあらゆるトリックに対応できるサイズ感
・心地良いフィーリング
・飽きの来ない見た目

が必要であると判断しました。
しかし、日々沢山の魅力的なヨーヨーがリリースされている中、このコンセプトを保ちつつそれらに埋もれない強いインパクトを持ったヨーヨーの案が浮かんできませんでした。

そんな中ネットサーフィンを行っていた時、目に飛び込んできた「黄金比」という字。
黄金比含め貴金属比と呼ばれる比率は見た目に安定感や美しさを感じさせるとされており、古くから美術品や建築物に用いられてきました。

人間本来の感性に響く美しさこそ飽きの来ないものなのではないか、と考え採用しました。

設計

以下がどの部分がどのように比率がとられているかを説明する画像です。


リム周辺の簡略図

黒:赤 黄金比
黒:青、赤:緑 白銀比
ピンク:水色 青銅比
 

狙った重量に合わせて数値を計算した際、すべての数値が程よく近似できる数値になり、感動したのを覚えています。

貴金属比の美しさを引き出すためにはそれ以外の部分は極力シンプルに、という部分もコンセプトと共通していました。
シェイプ側はストレートを基調とした、あえて特徴の出にくいステップストレートに、サイドフェイスはリムの見た目を阻害しないようにしつつ、名前も含めて面白い印象を与えるものにしました(後述します)。

シンプルだからこそ如実に使い心地に影響するサイズやベアリング周りの設計にも力を入れました。

・重量は経験則からこの重量配分ならこれだけ持たせても軽快な心地よさが出るだろうと65.5gに設定。

・完全なローエッジではなく、少し高めのエッジからRを取ることで投げ出しの最後までストリングがしっかり巻かれた感覚がある頼もしくもスムーズな投げ心地の実現。

・手持ちのヨーヨーを参考にしつつ3Dプリンターでモックアップの作成を行い手の収まりが良いサイズ感を追求した結果、直径55.5mmに対し幅44mmと主流よりわずかに小さめ、幅狭めを採用。結果としてやや縦長で回転力を持たせつつ指に当たりづらいスペックへ。

本気で戦うためのヨーヨーではないため、このスペックであればレール系をするにも不安はないだろうと推察した上で慣性モーメントなどの数値はあえて参考にし過ぎないことを心掛けました。


設計が終了し、到着したヨーヨーは想定通り、それ以上の完成度でした。
投げた瞬間からスリープを使い切るまで、繊細に指を伝うしなやかさ。
しかし止めたいところは止まる、プレイヤーを不安にさせない「静」と「動」のメリハリ。
求めていたものが全て揃った、ありそうでなかった新感覚を備えたヨーヨーが完成しました。

名前

出雲神話を語るうえで外せない神様の一人が大国主命(オオクニヌシノミコト)です。
出雲国を治めておられたとても偉大な神様で、近年では縁結びの神様としても有名です。
今回の設計思想はもちろんのこと、癖が少なく手に取っていただきやすいモデルとしてまずはこのヨーヨーからConsoleilのヨーヨーに触れていただければと思いこの名前を選びました。
サイドフェイスには大国主命をよりモチーフ化するため、いくつかの工夫を凝らしました。
リム周辺のふくらみは出雲大社を代表する大しめ縄を、また、逆すり鉢状に尖らせた中心部は光が当たると太陽の光が流れ落ちるような見た目になっています。
後者について、出雲大社本殿の本当の正面は海を向いている方向であると言われています。
大国主命が見ている景色を再現できれば、という思いでこの形状にしました。

おまけ

ベアロック部をやや短めに設計しているため、アクセルを6mmに変更することで薄型ベアリングが搭載可能になり、引き戻しでも使用できるようになっています。もともとは見た目のために行った設計で、なんとなく隠し要素として見つけてもらおうと思っていましたが、使ってみると意外と良いフィーリングでしたので手に取っていただけた際は引き戻しメタルとしても使ってみていただけたらと思います(各パーツの付け替えは自己責任で行ってください)。

クラウドファンディングのリターンである1stロットでは初期状態で引き戻し仕様となっています。

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