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7/24 、ミハイル・カンディンスキー"モスクワの風"#2 プログラムノート

今年2021年4月27日に行われ、好評を博したピアニストミハイル・カンディンスキーさんのリサイタルシリーズ ”モスクワの風” の第2弾が西早稲田のトーキョーコンサーツ・ラボで開催されます!

今回はサンサーンス没後100年を記念したスペシャルプログラムです。またゲストに気鋭のヴァイオリニスト、上野真理さんが演奏を披露します。前回のように1回目と2回目で趣向を変えています。盛りだくさんな内容でたのしみです♪ 

このコンサートで取り上げるサンサーンスの名曲の数々についてカンディンスキーさんご自身が解説したプログラムを公開させていただくことができました。ぜひこれを読んで演奏会へGo!

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解説:ミハイル・カンディンスキー

 幼少期から神童と言われ、素晴らしい天分に恵まれたカミーユ・サンサーンス(1835-1921)は、 フランスのオルガニスト、ピアニスト、作曲家、指揮者でした。弟子のフォーレ、またその弟子の ラヴェルも彼を大変尊敬しました。サンサーンスの音楽はクラシックの伝統に自身の魅力を加え、 洗練された透明な響き、大きな空間の感覚があります。そしてオペラ『サムソンとデリラ』、 室内楽曲『動物の謝肉祭』など色々なジャンルに多作であり、楽器の組み合わせもユニークで、 例えば交響曲第3番「オルガン付き」にはオルガンにピアノやハープも入り多彩です。

6つのエチュードOp.52 第1番「プレリュード」は、最初から大きな聖堂の響きを思わせる、 ピュアなハ長調。底からトップへ駆け上がる勇ましいパッセージは、ショパンのエチュード 第1番のハ長調を彷彿とさせ、もしかすると彼自身もそう思ったかもしれません。 第2番「指の独立のために」の作曲技法は、繰り返す同じ和音の中からどれか一つの音符が強く 浮き上がり、メロディとなってゆくユニークなもの。ショパンの抒情性に近いです。 第5番「プレリュードとフーガ イ長調」はバッハの同曲名を想起させ、彼も研究したに違いあり ません。プレリュードは天または大聖堂からメロディが降りてくるよう。このモチーフから次の フーガのテーマは生まれます。私はふと、ヨハネ黙示録のおわりに書かれるような、新たな地、 新たな街を思い浮かべます。

左手のための6つのエチュードOp.135 第5番エレジー。左手のためのソロの作品と言えば、 大作曲家のなかではサンサーンスとスクリャービンの二人が有名ですが、どちらも右手を故障した 友人・自身のために書かれたことを思うと寂しい気持ちにもなります。エレジーは両手が弾くかの 様に工夫された変ニ長調の美しい響きです。

交響詩「死の舞踏」は、エピグラフに「ジグジグジグ 墓石の上 踵で拍子をとりながら」と始まる アンリ・カザリスの詩がついています。サンサーンスに影響を与えたその詩は「死を前にして、 人は皆同じ」という中世の伝説から来ています。死の舞踏のテーマはヴァイオリンに演奏され、 曲の始まりは、ホルンのロングトーンの闇の上に響く、12回のハープの音。それは夜の12時の 鐘の音。トリトン(減5度/増4度)のヴァイオリンの調弦が鳴り、この世でない踊りが始まり ます。中間部は(この世にない)恋人たちの愛の場面。その後オーケストラに珍しいシロフォンの 音で、それは骨だったことが分かるのです。半音階の吹きすさぶ冬風とともに、年に一度の大 舞踏会は激しさを増し、明け方、オーボエの音で鶏が鳴き、骨たちは墓に逃げ帰ります。年長の リストがこの交響詩を巧みにピアノ一台に編曲し、サンサーンスは喜んだそうです。

ヴァイオリンソナタ第1番ニ短調Op.75は、1885年10月に書き上げられました。その年の夏に、 サンサーンスがピアノとヴァイオリンのための『グランド・デュオ』を作曲していると書いて いる通り、大変ヴィルトゥオーゾな曲。リストは『コンサート・ソナタ』と呼びました。二つ または四つの部分に分かれ、全編を通して演奏され、輝かしい終結部に至ります。翌年完成された 交響曲「オルガン付き」と、構成の共通点もあります。 先の「死の舞踏」、「プレリュードとフーガ」ほか、沢山のサンサーンス作品と共通するディエス・イレ(怒りの日)。グレゴリオ聖歌から来ているこのテーマは、この作品にも現れます。 なお、ディエス・イレでまず思い出すモーツァルト最晩年のレクイエムは、今年で作曲されてから 230年になります。私は、ここでは明るく感じられ、最終的に栄光へ到達すると感じています。


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▼出演者
ミハイル・カンディンスキー(ピアノ)
上野真理(ヴァイオリン)

▼日程
2021/7/24(土) 1回目 12:30開演 / 2回目 15時開演 

▼会場
トーキョーコンサーツ・ラボ (東京都)

▼チケット販売 Livepocket
1回目公演 https://t.livepocket.jp/e/kap4v 3,000円
2回目公演 https://t.livepocket.jp/e/q5pju 10,000円
※2回目はリクエストにお応えするスペシャルコンサートです。チケット1枚でおひとり誘って入場できます。



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