素材のチカラー作家のチカラ

素材のチカラー作家のチカラ
高価な画材を使って描けば、水彩でも日本画でも、それなりの発色があるが、その画材を使いこなすのは、作家のチカラ次第。値段は値段だが、猫に小判になってしまったら、本末転倒。
秋華洞ぎゃらりーで開催された「素材のチカラ」展では、素材を使いこなす作家のチカラに感動した。
たまたま最終日に在廊された池永康晟画伯から、話を聞かせて頂く機会があった。
現在描いている作品は、女性像が中心の日本画であるが、下地には泥絵具を使われているとのこと。最後には岩絵具で仕上げるが、完成した作品でも、泥絵具のままの箇所もあるとのこと。安価な泥絵具と高価な岩絵具を自在に使い分け仕上がった絵。女性の髪がきらきらとしているのは、きめの粗い黒の岩絵具を使ったから。敢えて金を混ぜなくても美しい黒髪が輝く。最終的には、安価な泥絵具を使っても、品のある作品に仕上がっている。


たまたまこちらも最終日にお邪魔した高輪画廊で吉田友幸画伯から話をうかがう機会があったが、彼の絵は墨と油絵の具が使われていた。フジタですか? と、思わず尋ねてしまったが、墨はジェッソで下地を作るときに使うとのこと。「周りにあるものを全部使っているだけ」と、他愛もないことのように微笑まれたが、それは誰にでもできることではなく、仕上がった絵画は、暗い中からひっそりと浮かびあがる緻密でリアルに描かれた植物、生物、鉱物。この背景があるからこそどこにでもある白い花びらのラッパスイセンが、確固としてそこにいる。清廉な小さな花が凛として大きな存在感を放っている。
それは、作家のチカラ。

こちらの画像は高輪画廊の許可を頂いて遠方斜めから撮影させて頂いた背景を加工(めちゃ大変でした)しております。参照までに載せさせて頂きました。

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