そう遠くない未来の話

そう遠くない未来の話

朝靄の中 駅に向かうまばらな人影
無言で改札を抜け 乗車
無言で必要な場所に向かう

道路は自動運転の配送車ばかり
自家用車はこの時代にはほぼ需要が無くなった

人々は家の中でリモートワーク 
ごく一部の人々が外で働いている
彼もそのうちの一人
自動運転の車に乗り込み配送の仕事をしている
各軒先に荷物を届けるのはまだ人の手を使う
とある建物に複数の荷物を宅配BOXに入れて戻ると
5分タイムロスですと、無機質な声が運転席から流れる
彼は
ちぇ5分でこれかよ!とぶつぶつ言いながら車に乗り込み次の配送先へ向かう

家の中ではある女性がリモートで各家に営業をかけている

AIの自動音声で事足りるのだが
人と話したい一定層には好評である 彼女の澄んだ心地よい声はAIには難しいらしい
特異な声(自分の声だが)のおかげで仕事に就けているのだから良かったのだ
お時間よろしいですか?と今日も話し始める

殆どの人間はAI進化のためのデータ提供という"仕事"に就いている

要は求められるままに
買い物をし食事をセレクトし決められた睡眠時間を取り 健康状態をも決められている

病気の対応のために不健康な生活を強いられたり
のんびり暮らしたいのに時間に追われた生活を提唱されたりと、まぁデータをとりたいという"意思"が働いているのだから仕方ない

家から出たくない人々にとっては多少の不満はあっても安定した生活が出来るのだから 色々呑み込んで生きている
進化したAIは自分のメンテナンスのために技術者も養成している 勿論適正を見極め 従順な人間を使って育成している
そうやって人々は直接他人と交わらず 関わらず生きている
そんな時代が近づいているのかもしれない


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