見出し画像

テツandトモとすゑひろがりず

「あぁ良かった」という心地よい清々しさ、これが書物なら読後感という言葉で表すのだと思う。では、舞台の場合は何といえばよいのだろう。「ええもん見たなぁ」という満足感。お金を出すエンターテインメントには、少なからずそういうものを期待する。

1月6日、「すゑひろがりずの新春ルミネ座大公演」が素晴らしかった。新春の幕開け、初春の慶びをすゑひろがりず、そしてテツandトモと共に。新しい年の始まり、この佳い(よい)時季はどうしたって、「ええもん」を味わいたい。「ええもん」――いいもの、めでたいもの、ハレのもの。正月に汲む酒が特別であるように、味は普段と変わらずとも、飾り切りを施した紅白のかまぼこにだってどこか心が動くように、その境界は極めてあいまいなものではあるけれど、それでも確かに「ハレ」と「ケ」という概念は生活の中に息づいていて、ひとたび「ハレ」にふれたとき、私はそこに宿る大きな力を感じざるを得ない。

「日本一めでたい寄席を目指してやってます」との前口上で始まったとおり、そこにちゃんと「ハレ」があった。テツandトモの全力のパフォーマンスと、それに加わるすゑひろがりず。一年前の正月と同じ感動が、同じ舞台で再び生み出される様は、さながら「一月一日」。「年の始めの 例(ためし)とて 終(おわり)なき世の めでたさを」である。

「松竹(まつたけ)たてて 門(かど)ごとに 祝(いお)う今日こそ 楽しけれ」――深く味わうほど、テツandトモ、そしてすゑひろがりずの二組がこの唱歌に馴染む。次の正月も、その先も、この幸せでめでたい光景が見れたらええなあ、この一年がええ年になればええなあ――2022年が動き始めた。


あとがき

すゑひろがりず、1月10日「第7回上方漫才協会大賞」大賞受賞おめでとうございます!なんばグランド花月の大舞台の真ん中で二人のために放たれた紙吹雪。二人がそれを浴びる光景は、それはそれはええもんでした。

折り目正しくきれいなお辞儀をする南條さんと、まるで子どもが花火を見上げるように、肩の力を抜いて天を仰ぐ三島さんの姿が印象的でした。2022年、今年は初笑いも初泣きもすゑひろがりずです。


出典

[1] 吉本興業 ONLINEチケットよしもと (公式Webサイト)
https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/

[2] ORICON NEWS 「すゑひろがりず、『上方漫才協会大賞』受賞は「青天の霹靂」 驚きのあまり鼓叩くの忘れる」(2022.1.10)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?