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ランパンプスとなんかやる配信

大衆の前で話しをすることで、日々の糧を得ている。いわゆる「しゃべる仕事」である。ご多分に漏れず、5月時点では業務内容に大きな変更を余儀なくされており、先行きは不透明だ。幸いなことに組織人であるので、副次的な業務をしながら日々を暮らしている。

さて、「しゃべる」の形態は、わりと数多にある。何かを売り込むためにしゃべる者、知識や技能を他者に習得させるためにしゃべる者、情報を広く伝達するためにしゃべる者、他者に啓示を与えるためにしゃべる者、場を盛り上げるためにしゃべる者、など。要求されるものもおそらく違う。声質や容姿の良さを強く要求される場合もあるだろうし、知識や経験年数が強みとなる世界もあれば、その場の瞬発性で戦う場所もあるだろう。養成機関で発話・発声のトレーニングを積むような性質の職業もあるだろうし、「しゃべる」ための原稿づくりが本人の業務に含まれるような仕事の形態もあれば、その場の雰囲気をいかに構築できるかが重視される職業もある。私が主にどの方面に属するのかということはあえて書かずにおくが、少なくともお笑い芸人ではないということは明記しておきたい。

なぜお笑い芸人だけは名指しして職業名を書いたのかといえば、あるお笑い芸人の動画とその中での語りについて、本noteで取り上げたいからである。


YouTube「天津向チャンネル」より、『天津向とランパンプス寺内がなんかやる配信』。5月16日に配信され、自然な雰囲気に引き込まれた。


天津向は生粋のアニメファンで知られ、また自らライトノベルを出版するなどオタク芸人として幅広く活動している。ランパンプス寺内は、小中高の教員免許状ならびに保育士の資格を有しており、また、コロナ禍の折にはYouTube配信企画「ランパンプス笑期講習」をかなり早い時点で実現し、成功に導いたことは記憶に新しい。

そんな多方面で活躍をする2人が、配信の中で同じ「しゃべる仕事」である教育者・声優・俳優の職業者としての特質を芸人のそれと対比して語っており、興味深く聞いた。それぞれの業種のカルチャーを尊重しながらも、差異や戸惑いを感じたところを愉快に語る。互いが共感している様子が垣間見え、芸人同士の連帯感のようなものが終始にじみ出ていたのがとても印象的だった。

2人とも大変に気遣いのお人である。アイドルや声優との現場でMCの仕事をする話、人間味があふれていて大好きになった。自分があらかじめ決めておいた立ち位置と、その目論見が外れる場面でのエピソード。画面の中では流暢な進行を行うプロにも、迷いと葛藤がある。当たり前のことではあるのだが、隣の芝生は青く見えるので、そういう部分を聞くとなんだか安心する。

若輩者の私の話で恐縮だが、「しゃべる仕事」は楽しいが、時として怖く、後悔も多い。でも、どの職業だってそうだとは思うが、続けていればやはりおもしろい瞬間が確実にあって、もっと良い仕事をしたいと考える。誰もが互いに人間同士なのだと気づいておくことは、案外忘れてしまいがちで、されどしゃべる仕事は相手があってのものだから、本当はいつも留めておきたい。


配信の冒頭で、今のリモートのスタイルについて、2人はそれぞれ次のような言葉を残している。

ランパンプス寺内「お客さんの返りと相方の反応があって 僕芸人やってたんだなと思いますね」
天津向「ダブリューじゃ満たされてねぇんだよ、俺ら」

しゃべる仕事の最前線に立つ職業人の、最高にかっこいい生きた言葉だった。早く、彼らが元の主戦場へ戻れることを願う。私も早く現場に出たい。待っているのは彼らが作り出せるような笑い声ではないが、やれることはあるはずだ。「新しい生活様式」の壁は高い。何があっての自分の仕事なのか、今一度考え直さざるをえないだろう、それでも。この仕事の魅力を見切るには時期尚早だ。しばらくは、みんなでじたばたしていこうと決めた。


あとがき

天津の向さん、話し上手は聞き上手を地でいく方ですよね。「なんかやる配信」、数珠つなぎでいろんな芸人さんがゲストで来られるのですが、1対1の形式がすごくハマっていてちょこちょこ聞いています。お風呂の中でぼーっとするのにぴったり。作業中はそうでもないんですが、1日のうち湯舟浸かってるときだけは、人の声が欠かせないタイプです。

ちょっと前にすゑひろがりずのお二方もそれぞれ呼んでいただいていました。南條さんの回、R-1のあたりでできてしまった10円ハゲ映してくれたのが個人的に一番の山場でした。変なところがツボですいません、きちっと見せてる人から出てくる生身の人間感に弱いんだと思います。The 人間でした。


そしてランパンプス。寺内さんと小林さん、不思議なコンビですよね。幅広くされているけど、人狼・滑狼との親和性の高さは何なんだろう。理詰めの寺内さんはなんとなく分かるんだけど(キレっキレの地頭の良さ、先日の滑狼リモートゲートも大活躍でした!)、小林さん×人狼、さらに小林さん×滑狼は本当に謎。形容できない魅力、誰か書いてください。
「笑期講習」の即応性にも惚れました。これはまた別記事で書きたいなあと思ってます。


出典

[1] YouTube「天津向とランパンプス寺内がなんかやる配信」(2020.5.16)


[2] YouTube「天津向とすゑひろがりず南條がなんかやる配信」(2020.4.14)


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