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2歳の娘にチャイルドシート拒否された日々の記録


娘のイヤイヤ期が、ずいぶんマシになってきた気がする。


2歳8か月になった今も続いているけれど、言葉が通じるようになってきたし、何より最近はほとんど「チャイルドシート拒否」されることが無くなったな、と気付いた。

娘のイヤイヤ期は、1歳半頃からはじまり、2歳になる頃にピークを迎えた。

ご飯やお風呂を拒否したり、思い通りにならないと癇癪を起したり…「これぞまさに、イヤイヤ期!」というような行動が増えてきた。

そんな中、もっとも私を悩ませたのは、「チャイルドシート拒否」だった。

田舎暮らしの私たち家族にとって、車は必需品。保育園の送り迎えも、もちろん車。

赤ちゃんの頃から、チャイルドシートに乗っている時に泣き出すことはあっても、乗る時に嫌がられたことはほとんどなかった。 

けれどある日、突然それははじまった。


いつものように保育園にお迎えに行き、チャイルドシートに娘を乗せようとすると、突然大泣きして身体を捻り、シートに座ることを嫌がりだしたのだ。

突然のことに私は驚き、娘を抱っこしてなだめたり、おむつをチェックしたりした。

たまたまだったのかな?
どこかにぶつけたりひっかけたりしたのかな?

そう思い、娘が落ち着いたので再びチャイルドシートに乗せようとした。すると、またもエビ反りになってギャン泣き。

時間をかけて格闘するも、娘の態度はひどくなるばかり。

これが噂のチャイルドシート拒否ってやつか…と、ぼんやり思った。

何とか力ずくで押し込もうとしても、背中を反らせて暴れるばかりで、どうにもならず。

無理矢理身体を抑え込んでも、娘の腕を通してベルトを止めることなんて絶対に不可能。
私は途方にくれた。

ぬいぐるみを使って話しかけたり、お菓子をあげてみたり、動画で気をひいてみたり。

あの手この手で試しても、シートに乗せようとするとエビ反りで大泣き。

唯一効き目があったのは、ハンドルの形をしたおもちゃだけど、それも二日で飽きた。三日目にはまたエビ反りギャン泣き。

手足の先だけチャイルドシートにつけて押し返し、背中は全力で反る娘。
この時の娘のポーズを見て、マントで空を飛ぶマリオの姿を思い出した。

あまりのパワーに圧倒され、私は疲弊しながらも、「1年前は歩くこともできなかった娘が、大の大人が全力を出しても押さえつけられないほどに成長したんだなあ」と感動したりもした。

けれど、それも最初だけ。
毎日毎回繰り返されると、とてもキツイ。

とにかく保育園から家に帰らなければならない。日はどんどん暮れる。周りから人がいなくなっていく。車に乗せなければ、帰る手段はない。
気持ち的に、とても追い詰められた。

格闘する時間は、毎日少しずつ伸びていった。

最初は10分、20分だったのに、次第に30分、1時間になった。

途中休憩を挟み、機嫌良くなったところを見計らって再挑戦。ギャン泣き、えび反り。休憩。この繰り返し。


どうしても乗ってくれず、仕事帰りの夫に連絡して助けにきてもらったこともある。
けれど、夫の退勤時間の方が私よりずっと遅いので、いつもそうする訳にもいかない。

ある日ついに、チャイルドシートに乗ってくれないまま、保育園の閉園時間を迎えてしまった。

あたりはすっかり日が暮れ、私の体力も限界。このまま車を置いて、抱っこで歩いて帰るしかないのだろうか。

そう思い、私は一人泣いてしまった。
仕事後の疲れた身体で二時間も保育園の駐車場で格闘し、それでもチャイルドシートに乗せることすらできない自分がみじめに思えた。

その時、戸締りのために出てきた保育士の方が気付き、慌てて近付いてきてくれた。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」

私はべそかきながら言った。

「娘がチャイルドシートに全然乗ってくれなくて…」

保育士の方が、「どうしたの~?かえりたくないの~?」と、車の中を覗き込み、娘に話しかけてくれた。

その瞬間、娘は人が変わったかのようにスッ…ッとシートに座り、自らベルトに両腕を通しはじめた。
私は驚き、慌ててベルトを止めたが、娘は全く抵抗しなかった。

これだ!と思った。
娘は少々人見知りで、慣れない人の視線を感じると、家とはうってかわって大人しくなるのだった。

それからしばらくは、チャイルドシート拒否された時には、「近くの人に声をかけ、チャイルドシートに座るところを一緒に見ていてもらう」という方法で乗り切った。

そうして騙し騙ししているうちに、娘がよく喋るようになり、こちらの言葉も理解し始めた。

そうすると、「椅子に座らないとおうち帰れないよ、帰らないとごはん食べられないよ」などと説明すれば、理解して座ってくれるようになった。

今では、「座らなければ帰れない=帰らないと食べられないし遊べない」ということを理解したからか、拒否されることはほとんどなくなった。

公園や遊び場に行って、まだ帰りたくない時くらい。


けれど子供によっては、この方法がきかない子もいるだろう。みんな悪戦苦闘して、なんとか我が子をチャイルドシートに乗せる最善の方法を模索しているのだろう。

そもそもチャイルドシート拒否をしない子もいるのだろうけれど。


この頃は、とにかくお迎えが憂鬱でしんどくて、仕事後に逃げ出したい気持ちになっていた。

体力的に精神的にも、ギャン泣きで拒否されるというのは本当に辛かった。


…などと懐かしく思えてる時点で、チャイルドシート拒否時代からいつのまにか抜け出せていたのだろうと、改めて思う。

それにしても、当時は本当に辛くて毎日憂鬱だったのに、過ぎてみたら「いやあ、大変だったなあ」で済ませていることが、自分でもおそろしい。

当時解決したくて、色んな育児の先輩たちに質問したけれど、「そんなことあったかなあ」「うちもあったけど、どうしたっけなあ」等々で、「何故誰も具体的な解決策を教えてくれないんだ!」と思っていた。

けれど、育児はそんなことの繰り返しだと最近理解した。

みんな大変だったことは、新たな大変さに上書きされて忘れる。
人は忘れることができるから、生きていけるのだ。

私も今誰かに相談されても、「わかるー!大変だよね!」としか言えないことが悔しい。


けれど、仕方ない。

今は今で、別の育児の悩みに脳の大半を費やしているのだから。私が質問した先輩たちもきっとそうだったのだろう。

ちなみに今の私の悩みは、「見て見て攻撃」「エンドレス抱っこ抱っこ」「絶対に寝ないで遊びたい」の、3本です。

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