即興小説 #買ってよかった2015 #Xmas2015

「クリスマスだなー」と友人からラインでメッセージが届いた。だから私は「そうだね」と返した。

クリスマスといえば何を思い出すのだろうか。サンタクロースやトナカイは歌の中の生き物で、結局フィクションなのである。思い出すのは……

金田一少年が解決した「赤髭のサンタクロース」。麻薬中毒のおじいさん。赤は血の象徴だって? それは殺人事件が「赤」を規定するために先行してしまっているだけだ。あいつは共産党だって!? そんなバカな! いつだって、政治を語りたがる奴は、事を単純にしたがる!

でも、グロテスクなプロダクトはクリスマスとは不釣合いだ。

いや、それにしても……。

「餃子が食べたい」

友人はそう告げる。

「餃子か」

と私は考え、そして返す。

餃子はいつ食べても美味い。いつ食べても! でも、今日は特別なんだぜ? 特別な日には特別な事をしなくちゃ! そういうと、友達は東京駅に行かずに、新宿へと向かって行った。もちろん私も。

電車に乗りながら、餃子を食べた口で、アイドルにキスをするという妄想をしてみた。アイドルと処女性を結び付けたがるきらいのある人々は、きっと、餃子を食べた口でアイドルにキスをするなんてことは思いつかないだろう。なぜなら、私はアイドルと処女性を結びつけて考えないし、彼女たちが穢れ一つ無い存在であるとはまったく思わないからである。

穢れ一つ無いものは、いつだって概念である。概念? むしろ、象徴というべきだろうか?

わたしたちが使用する言葉。それは、いつだってわたしたちの現実を構成していない。言葉とわたしたちは共犯しているが、そこには裏切りが見え隠れしている。なぜかって? 彼らとは国籍(「国籍」なんて言葉すら、無限の差異を表出するのだけど)が違うから。だから、到底わかりあえっこないよ!

見つけたぞ! 何を?――餃子屋さん。

われわれはクリスマスだろうとなんだろうと、餃子を求めてしまうだった。

餃子といえばビールである。ギネスではなくバドワイザーでもなく、ハッカープシャール(正式名称は覚えていないので間違っているだろう)でもない。エビスに決まっている。もちろん、われわれの間での契約であるのだが。

何を言っているんだ! そんなことはどうでもいい! 餃子なんて、家で食べればいいじゃないか!

私がひねり出す文章は、私の欲望と・経験と・蓄積した妄想に支えられている。とにかく留まることのできない幻影の中を泳ぐ私は、ひたすらに、明確な時間的記号の中を、ゴールなき深淵から抜け出る等より、より潜水するために、ひたすら息を止めなければならなかった。

(1064文字)

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