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マルチポテンシャライトとしてやりたいこと②

実は通訳、翻訳という仕事にあまり魅力を感じたことがなかった。日本語を英語にする、という作業は「縦のものを横にする」だけで、そこに何の価値も付加できていない気がしてたから。でも自信を持ってできることが「英語」以外になかった10年前、私は通訳と翻訳で仕事を探した。そして入った会社で実際に通訳と翻訳をやりながら、私なりの価値の与え方を学んだ。

義務教育で英語の勉強が始まる頃に海外に行き、英語勉強する、というより英語勉強してきた私は、その過程において日本語を英語に、英語を日本語に、ということはしてこなかった。初めて和訳したのは、大学時代に先輩の英語の宿題を手伝った時。教科書の文章を訳したのだと記憶しているが、英語で理解した内容を表現する日本語が見つからない!面白いくらいに日本語のライティング能力がなかった。

大学卒業後、英語を使って仕事をしたり、英語を教えたりはしたけど、通訳、翻訳とは無縁だった。初めての通訳は、監査に来たアメリカ人と一緒に国内の部品メーカーを回るという仕事。正直何ができたか(何の役に立ったか)全く覚えていない。移動中の飛行機や車の中での雑談でとても仲良くなったが通訳としての手応えはゼロ。

その後、製造会社の外国人役員の秘書兼通訳として雇われた。社内の全ての会議に一緒に出席し、その場のやり取りを通訳すること、社内の資料や議事録、海外からくるメールや書類を英訳、和訳することが仕事。

そもそも何の話をしているのか、日本語でも理解できない技術的な話をその場で英語にするのは至難の業だった。一度何かの会議の時に、同時通訳が入ったことがあり、彼らの仕事ぶりを見る機会があった。2人の通訳が、30分毎に入れ替わり、ものすごい勢いで止まることなく訳していく。内容を100%理解して喋っているのだろうか?あとから役員に話を聞いたら、その同時通訳を介しての理解度は70%程度、と言っていた。止まらないテクニック、つなぐテクニック、言い換えるテクニックなど、相当訓練を重ねているのだろう。通訳のプロを目の当たりにして、感服すると共に、私が目指したい姿ではないことが明確になった。

翻訳はある程度時間をかけて、調べたり、誰かに聞きに行ったり、見直したりすることができたからまだよかった。それでも最初の頃は「縦のものを横にする」だけで、意味はあまり考えず、素早く成果物を作り上げ、目の前のタスクを消すことだけを目標にしていた。読み手の反応を気にする余裕はなく、おまけに、訳してもらっているという引け目があるからか、社内(お客様)から「わかりにくい」とクレームが来ることもなく、完全に自己満足の世界だった。

長く働く中で、気持ちに余裕もできてきて、改めて自分の仕事の精度を上げる必要があることに気づく。私は人が好きで、人と上手に話して巻き込んで、味方になってもらえることが強みだ。誠実で在ることが大事だし、ウソとかごまかしで信頼関係が築けるわけがない。

プロの通訳ではないから、その場で完璧な通訳はできないけど、正しい内容をきちんと確認したうえで、まず自分が理解し、それをわかりやすく伝えることを目指した。専門的な話の際には、何度も「今はこういう話をしているが、内容が良くわからない。緊急ではないし、この場で判断は求められていないから、確認して、理解して、まとめて後で伝えに行く」と正直に話して待ってもらう、ということをした。結果、時間がかかってもあいまいな情報伝達は減り、私自身の知識も増え、役員の信頼を得ることができ、公の場では言えない彼の本音を聞き出して、社内の橋渡し的な役割も果たせた。

翻訳に関しても、単に英語を日本語、日本語を英語に置き換えるのではなく、何を伝えたいのかを理解して、日本語と英語の表現方法の違いを意識して、より伝わりやすい形に書き換えるように心掛けた。現在Google翻訳の精度がめちゃくちゃよくなっていて、シンプルな文章であれば、ほとんど手直し不要なレベルで訳してくれる。こうなってくると、縦のものを横にする作業は人じゃなくてもできる。そこに私らしさを加えるとしたら、相手(読み手、聞き手)のことを思いやることだったり、背景を把握してるからこそできる細かな配慮だったり、諸々の制限の中で伝えるべきものの優先順位付けだったり。付加価値はつけようと思えばいくらでも付けられる!

今、通訳、翻訳で私が関わることを決めているのは、30年来の友人を通じて出会った幼児教育の先生の素晴らしいメソッドを世界に広めるお手伝い。子供だけじゃなくて大人も含め、興味を持って学びたい!と求めている人が世界中にいて、問い合わせが後を絶たない状況をまずは交通整理するところから。順次英語のホームページのメンテナンス、教材の英訳、オンラインセミナーでの通訳、と1年以内に軌道に乗せることを目指して動き始めたところ。

研修を英語で、ワークショップを英語で、コーチングやカウンセリングを英語で、更には製造業経験者の英語講師、というニーズも結構あることを最近知った。私史上最古の武器「英語」。長年当たり前に持ってる武器だったからそれほど重要視していなかったけど、いろんな経験を積んできた今の私だからこそ、の形で上手に生かしていきたい。





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