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読書ノート「海をあげる」上間陽子著

 

 文体が優しくてやわらかくて自身のエピソードから書いているからか、ノンフィクションというよりはエッセイという感じの始まり方。でも読んでいくうちに、沖縄で育つということ、若者の抱える問題、国から基地を押し付けられた沖縄に住むということ、そこで女性はいつもレイプの被害におびえながら暮らさなくてはいけないということ、住民にどんなひどいことがあっても国は守ってはくれないというあきらめ、それは沖縄の問題を見えないように無関心でいる自分も含めた人たちも関係していて次の問題をひき起こしているのだということがわかってくる。

 貴戸理恵さんの本で出てきた「いじめの『傍観者』もいじめに参加しているのとおなじこと」という考え方に通じると思った。

 上間さんが聞き取る沖縄の人たちの話は、なぜか分からないけど声が聞こえてくるみたいな近さや質感がある。

 十代で妊娠、出産し、一人で子供を育て仕事をし、養護施設に入ってはいるけどその施設の職員はあまり信用できず、仕事は風俗店で安定しない。誰も信用できて頼れる人がいない彼女はいつのまにか上間さんとも連絡が取れなくなってしまう。

 戦争を体験した人の話は、想像が難しいくらいに凄惨で、国は沖縄の人たちを見捨てるもんだというあきらめが伝わってくる。

 繰り返される米軍による沖縄の女性レイプ事件も痛々しくて残酷で、でも「またか」と問題意識も怒りも持たないでいた自分も、傍観者で加害者になってたじゃないかという気づき。

 上間さんは怒ってるしその声をまず聴かないといけない。

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