見出し画像

「三菱商事CFO、25年3月期『増配も検討』 稼ぐ力向上で」に注目!

三菱商事CFO、25年3月期「増配も検討」 稼ぐ力が向上 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

三菱商事が稼ぐ力の高まりを受け、株主への利益還元を手厚くしています。2月に同社で過去最大となる5000億円の自社株買いを発表しました。配当と自社株買いを合わせた総還元性向は2024年3月期に9割を超えます。2025年3月期には増益が視野に入るなか、株主還元や投資に資金をどう振り向けるのか。野内雄三最高財務責任者(CFO)に聞いたインタビュー記事です。

2月に自社で過去最大となる5000億円の自社株買いを発表したことについては「キャッシュフロー(現金収支、CF)や資産の入れ替えに伴う売却収入が当初の想定を上回る。来期まで3年間の中期経営戦略でめざすCFを1兆円程度上振れすることがみえてきた。(上振れ分の)半分を還元しても投資の余力を維持できると判断した。資源価格の下落などがあっても財務の健全性が保てると検証した上で決めた」とコメント。

また、2024年1〜3月期以降も資金が潤沢な状況は続くかについては「稼ぐ力は着実に改善している。通期計画に対する2023年4〜12月期の電力ソリューション事業の利益の進捗率が悪いが、資産の売却で(計画は)実現できる。豪資源大手BHPグループと合弁で手掛ける原料炭2炭鉱を売却する。当社の持ち分では3000億円程度の売却収入を見込み、2025年3月期を含め複数年にわたり相応の金額を受け取れる」と発言しています。

株価上昇で配当利回りが下がっています。来期に向けて増配する考えについては「(毎期配当を減らさない)累進配当を続けながら、市況や外部要因による利益の上振れは自社株買いで対応する。ただ配当利回りも念頭に置く。自社株買いとのバランスや、何が一番、市場の要望に合う形か考えながら増配もしっかり期待に応えられるよう検討していく」とのことです。

2月には子会社のローソンを持ち分法適用会社にし、KDDIと共同経営することを決めたことについて「親会社として打つべき手は打って足元では最高益まで回復しているが、ここから先もう一段というのは我々の力だけでは難しかった。(デジタルに強い)KDDIの力を借りてローソンの企業価値を高められれば、資産の効率を改善できるはずだ」とコメント。

資産効率の観点から政策保有株の縮小も課題になっていることについては「実際、2023年3月期までの3年で計2000億円程度売却し、数年前に1兆円を超えていた残高は5000億円程度まで下がった。まだ減らせると考えており、2025年3月期も縮減を進めていく。いわゆる持ち合い株は基本的にゼロにしていく」と発言しています。

来期は投資を加速するかどうかは「中期経営戦略では過去最大の3兆円を掲げるが、候補にある案件を含めると3兆円をはるかに超える。候補の中には数百億〜1000億円単位と大きな戦略的M&A(合併・買収)もある。米国では大統領選後の不透明感もあるが、潜在性が大きくポートフォリオ拡大の可能性がある地域だ。将来性のあるインドも工夫して投資対象として検討していく」としています。

三菱商事の過去最大の自社株買いは、これまで資源価格など不透明要因に備えて稼いだ資金をため込む傾向があった商社の財務戦略のあり方に一石を投じました。商社は横並び意識が強いため、2025年3月期以降も株主還元の動きが強まる可能性がありそうです。

株式時価総額は13兆円を超え、首位を争ってきた伊藤忠商事との差は3兆円以上に開いてきましたが、同社は伊藤忠テクノソリューションズの完全子会社化など成長投資に注力しています。持続的な企業価値の向上へ成長投資とのバランスが課題になります。

なお、中期経営戦略2024によるキャッシュ・フロー配分として、3年間で想定約5.5兆のキャッシュ・イン、キャッシュ・アウトの見通しを立てています。キャッシュ・アウトでは投資3.0兆円で、株主還元で従来公表分の1.5兆円に追加して0.5兆円して合計2.0兆円とし、残りの0.5兆円は成長投資を積極的に検討しながら、今後のキャッシュ・フロー動向を踏まえて投資と株主還元への配分を検討していくとのことです。コメントにもある通り、3兆円を超えるパイプラインがあるとのことなので、今後の三菱商事の成長に期待しています。