見出し画像

『愛を知らない令嬢と野獣』シーズン2開始記念!作画担当&編集に特別インタビュー

2024年6月1日からシーズン2の連載がスタートした『愛を知らない令嬢と野獣』。
本作品は韓国にて制作されていますが、シーズン2開始を記念して、作画担当・Pangeonさんと、作品のプロデュース・制作を統括している担当編集・ジウンさんとの、海を超えた特別インタビューが実現しました!

今回はcomico編集部note特別企画として、『愛を知らない令嬢と野獣』の制作裏話を大公開!
最後にはPangeonさんの直筆コメントも。ファンの皆さん、超必見です!

作画担当・Pangeonさん&担当編集・ジウンさんインタビュー

『愛を知らない令嬢と野獣』
原作:dikitalis 構成:zorengyi 作画:Pangeon

STORY
家門が没落し莫大な借金を抱え行き場を失った兄のヘイシーと妹のレイ。
かつての縁を頼りに人里離れた城に向かうが、そこで兄妹が出会ったのは…呪いをかけられ外に出られなくなった野獣・クローダンだった。

そして部屋を出ないように言われた日、兄がクローダンから受け取った投資金を使い果たしてしまったことを必死にクローダンに謝るレイ。
そんな彼女にクローダンは
「口ごもるな。お前が口ごもるたび、俺のモノを咥えさせたくなるんだ」
と言い出して――

愛に飢えた無垢な令嬢と、愛を知らない野獣の愛憎物語。

作品制作の経緯

左:作画Pangeonさん 右:編集ジウンさん
「喧嘩しているのではなく、作品について熱く語っている様子です!」(Pangeonさん)

―― 自己紹介をお願いします!

ジウン こんにちは!『愛を知らない令嬢と野獣』担当編集のジウンと申します。 編集者の私が日本の読者の皆さんにご挨拶できて大変光栄です!
現在は本作品以外にも、『とにかく私達って最高!』『脇役に憑依したら愛されすぎて困ってます』『皇女が生き残らなければならない事情』など、6作品の編集を担当しています。

Pangeon 『愛を知らない令嬢と野獣』の作画を担当しているPangeonです!よろしくお願いします。

―― さっそくですが、この作品を制作することになった経緯を教えてください。本作は元になった原作小説があるんですよね?

ジウン はい、『愛を知らない令嬢と野獣』は、韓国の人気小説を元にしたコミカライズ作品です。個人的にミステリー要素が混在しているロマンスストーリーや、限られた空間(屋敷、部屋、船など)で繰り広げられるストーリーが大好きで……初めて読んだ時、この作品はまさに私の好みを全部反映した作品だと思いました。「この面白さを読者の皆様にもぜひ伝えたい」という思いが、この作品をコミカライズすることになった最初のきっかけです。
企画時には、韓国だけではなく日本や他の国の読者にも楽しんでもらえるように、誰もが知っているおとぎ話『美女と野獣』のダーク・アダルト版という方向性にしました。

『야수의 성 (The Castle of the Beast)』
ⓒdikitalis / LA REINE (DAEWON C.I. Inc.)

ジウン また、ベッドシーンがある作品なので、体格が良くて退廃的で美しい男性が描けるPangeonさんがこの作品に合っていると思い、オファーしました。男性キャラだけでなく、ヒロイン・レイのキャラクターのデザインをお願いすると、可愛いけどたくましさもあって読者が応援したくなるビジュアルにしてくれるなど、Pangeonさんが原作小説のキャラクターをうまく具現化してくれました。

謎めいた屋敷の主 クローダン(ヒーロー)
『愛を知らない令嬢と野獣』第2話より

Pangeon 私は当初、ジウンさんから「Pangeonさんの好みに合う作品があります」と提案されてこの原作小説のことを知りました。セクシュアルでダークな雰囲気の作品が好きだったので『愛を知らない令嬢と野獣』は、ジウンさんの言葉通り、私の好みにピッタリの作品でした。また、クローダンのように黒髪でダークな男を描くのが好きだったこともありますが、作中でどんどん成長していくレイというキャラクターにも魅力を感じ、是非この作品に参加したいと思いました。

没落した貴族令嬢 レイ(ヒロイン)
『愛を知らない令嬢と野獣』第1話より

ジウン 実はPangeonさんは、この作品がWEBTOONデビュー作なんですよ。

―― この完成度の高さでデビュー作とは驚きですね!

制作の流れと分業体制

―― 本作品はどういった流れで制作されているのでしょうか?

ジウン 本作品の制作では、作画作業に入る前に単行本3巻からなる原作小説を数ヶ月かけてWEBTOON用に再構成しました。小説は長い呼吸で物語を続けて鑑賞することができますが、WEBTOONは1話ずつ区切られるので、やむをえず読者の呼吸が止まります。だからWEBTOONの制作の場合、1話内で話の完結性を与えながらも、次の1週間を待ちたい!と思わせるインパクトを残さないといけないんです。
そのため、ストーリーの進行速度や情報量の調整には特に気をつけました。また、2人のベッドシーンもこの作品の推しポイントなので、どの程度バランスよくベッドシーンを物語に組み込むのかも検討し、再構成しました。

―― 作画に入る前の物語の再構成に、かなり時間をかけているのですね。

ジウン はい、原作者の方には「小説のこのセリフはどういう意味なのか」など、WEBTOON用の再構成にあたり何度も確認しました。あとはダークで不思議な雰囲気が魅力的なクローダンは、わがままな性格にも見えるキャラクターなので、読者から「何を考えているのかわかりにくい」と思われてしまうことがないように、WEBTOON版では周りの使用人たちがクローダンについて語るシーンを増やしたりするなど工夫しました。

―― たしかに物語を読み進めると、使用人たちの会話が主人公たちの関係性や物語全体を理解する上で、重要な役割になっていますね。

▼使用人たちが活躍するシーンはこちら▼

『愛を知らない令嬢と野獣』第41話より

ジウン 構成案が完成した後は、それを元にネーム作家さんが1話ずつネームを描いて、Pangeonさんに線画から仕上げまでをお願いしています。

―― 本作は、韓国WEBTOONでは一般的な制作方法とされる「分業制作」だと聞きましたが、具体的にはどういった作業を分担をされているのでしょうか。

Pangeon 『愛を知らない令嬢と野獣』は、ネーム作家さんと私以外に、実は6人の作家さんの力を借りて原稿を仕上げています。3D人物の配置作業を担当しているHungry Bugさん、背景の配置や着色作業を担当しているDANさん、線画クリーンアップ作業を担当しているiyoさん、下地着色や服装に装身具を着ける作業を担当しているYADONさん、着色の影付け作業を担当しているYONGDUSAMさん、着色の補正作業を担当しているHijinさん……これらの作家さんのたちおかげで、より高いクオリティで読者の皆様にお届けできているんです。

▼その制作工程がこちら▼

何気ない1コマでも多くの工程を経て仕上げているのが分かります

―― 本当にたくさんの作家さんが参加されているんですね。『愛を知らない令嬢と野獣』が完成度の高い理由がわかりました。

Pangeon はい。この6人の作家さんには制作以外でもいろいろ頼っているので、今回のインタビューをきっかけに一人一人紹介してみました。皆さんにはいつも本当に感謝しています。

ロマンスシーンのポイント

―― 本作はクローダンとレイのロマンスシーンも大きな魅力の一つだと思いますが、そういったシーンを描写する際、大事にしているポイントはありますか?

ジウン 制作チームでは、読者がこの作品を読む間は読者自身もヒロインになったような気持ちでドキドキしてもらえるかどうかを大事にしています。そのためにキャラクターの感情のラインは気をつけて制作しています。
例えば、レイの目線ではクローダンという男性がいかにかっこいいのか、クローダンの目線では今彼がどれだけレイを愛らしく思っているのか等、キャラクターが感じてることが読者に伝わるように、適切な絵やセリフ演出を考えて制作しています。もちろん、これは作家さんの力量がないとできないことですね。

Pangeon そうですね、2人の感情が大事な作品なので、作画面では表情の
表現に気を使っていますね。

▼クローダンがヒロインを見るときの眼差しがこちら

『愛を知らない令嬢と野獣』第3話より

―― ベッドシーンも多い本作ですが、そこでも何か気をつけていることはありますか?

Pangeon 『愛を知らない令嬢と野獣』を読んだことがある方は共感してくれると思いますが、クローダンは会話よりも体でコミュニケーションするキャラクターなので、ベッドシーンは2人の関係性を描写する意味でも重要で、特に気を引き締めて描いています……!
ですので、ベッドシーンでもキャラクターの表情には気をつけています。こういったシーンでは露骨すぎず、かといって消極的すぎないようにキャラクターを表現することが大事だと思っているので、時にはちょっと壊れたような表情を描くようにします。

制作のこだわり

―― 他にも制作においてのこだわりはありますか?

Pangeon 装飾素材はできるだけシーンの意図に沿ったものを使うようにしています。例えば、第45話の最初と最後にはクモの巣のような素材を入れましたが、こらは「クローダンが仕掛けたクモの巣にレイが引っ掛かって閉じ込められる」という意図で入れたんです。もし、演出の意図を感じてくれた読者の方がいましたらとても嬉しいです。

左:第45話の冒頭シーン 右:第45話のラストシーン
屋敷にレイをとどめようとするクローダンの強い執着心がクモの糸で表現されています

ジウン PangeonさんはWEBTOON版の作家であると同時に、原作のファンでもあるので、制作当初から「原作小説に迷惑をかけたくない」「いい作品に仕上げたい」という気持ちが強かったです。こういったクモの巣のように、装飾や原稿の仕上げのクオリティも大事にしてくれていて、私と2人で原稿を見ながら「どういう素材がいいのか」「どういった仕上げにしたらいいのか」を一日中ずっと話したこともありました。今思うと、そういう時間のおかげで『愛を知らない令嬢と野獣』にしかない独特な作品の雰囲気が作れたんだと思います。

―― 『愛を知らない令嬢と野獣』のエロティックでダークな雰囲気の裏にはそんな経緯があったんですね。ちなみに、制作で悩んだシーンはありますか?

ジウン 先ほどもお伝えしたように、週刊連載なので次週も読んでもらえるように、最後の展開をどうするべきかは都度作家さんと相談するのですが、特に第1話の最後のコマをどうするかは、作家さんとすごく悩みましたね。
第1話は最後にクローダンが「婚約者はいるのですか?」と聞いて終わるのですが、謎めいた初登場のキャラクターが「婚約者はいるのですか?」と聞くのは突然すぎるかも……と思って(笑)。最終的にセリフはそのままにしましたが、Pangeonさんと話して、クローダンへの読者の印象が悪くならないように、クローダンをものすごくかっこよく描くことにしました…!

▼第1話の最後のシーンがこちら!

『愛を知らない令嬢と野獣』第1話より

―― 私はかっこよくて美しいクローダンがこのセリフを言うことで「これから何が起こるのか……?」と読者に今後の展開を期待させる上手い仕掛けだと感心していたのですが、制作チームではそんな風に心配していたんですね! では他にも、読者の知らない裏話があれば教えてください。

ジウン そうですね……実はPangeonさんはレイの胸の大きさにこだわりがありまして……。私としてはヒロインの胸を大きすぎないぐらいで描いてほしかったのですが、制作当初はPangeonさんに指摘しても「修正しました、どうですか?」「何も変わってないです……」みたいな会話を繰り返してました。最終的にはPangeonさんにも納得していただだき、ちょっとずつ私が求めるサイズ感に変わりましたが、最初の方と今のレイの胸の大きさは実はちょっと違うんです。もし、残念に思われる方がいらっしゃったら申し訳ないです……(笑)。

―― 確かに残念だと思っている読者もいるかもしれないですね(笑)。

日本のファンの反応

―― 制作チームでは日本の読者の反応もチェックしていますか?

ジウン 拝見しています! 公開の翌日にはコメントが溜まっているので、翻訳アプリを使ったり、日本語のわかる人に聞いたりして、日本の皆さんの感想を確認してます。楽しく読んでくださっている皆さんのコメントを読むと、これからも頑張ろうと思いますね……!
どんな感想でも、時間を作って感想を残してくれるのは作品への愛情がないとできないことだと思いますので、読者の反応はできる限り作品に反映させるようにしています。
例えば「今日はクローダンとレイのいちゃいちゃシーンがない!」というコメントが多い時は、ネーム作家さんと話して2人のいちゃいちゃシーンを入れるようにストーリーの順番を変えたりします。最近だと「クローダンの秘密はいつ分かるの?」という意見が多かったので、シーズン2の中にクローダンの過去シーンを追加しました。

Pangeon 私も読者コメントを拝見しています! 韓国では「称賛はクジラも踊らせる(=豚もおだてりゃ木に登る)」ということわざがあるのですが、作品を褒めるコメントがあれば私も踊っています(笑)。
原作小説が別にあるため、ある種私もこの物語の読者の一人なのですが、作中でクローダンが悪い行いをした時、「これはクローダンが悪いよな……」と思ったところで、読者が私と同じ反応をしていると嬉しくなりますね。

―― 最後に、作品の宣伝とファンへの一言をどうぞ!

ジウン いつも『愛を知らない令嬢と野獣』を読んでいただいている皆様には本当に感謝しています。シーズン2では、レイが感情面で大きく成長します。気難しくわがままなクローダンが、成長したレイによって苦悩する、嵐のような展開になる予定です。作家さんたちとみんなで頑張って準備したので、是非読んでいただければと思います❤

Pangeon シーズン1終了後も作品を読んでくださったり、忘れずに読みにきてくださったりする読者の皆様に心から感謝しています。シーズン2も読者の皆様の期待に応えていきたいと思います。いつもありがとうございます!

▼Pangeonさん直筆イラスト&コメントがこちら!

訳:「『愛を知らない令嬢と野獣』シーズン2はもうまもなく!よろしくおねがいします‼️」

『愛を知らない令嬢と野獣』はcomicoで好評配信中!

Pangeonさん、ジウンさん、制作でお忙しい中インタビューありがとうございました!
『愛を知らない令嬢と野獣』は、2024年6月1日からシーズン2開始!
皆さん是非ご覧ください!

『愛を知らない令嬢と野獣』ⓒPangeon, bandi, dikitalis/NHN