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「WEBTOONの着色はココを押さえて!」着色ディレクターが語る【#WEBTOONのいろは】

フルカラーが魅力的なWEBTOONにとって、大事な工程である「着色」。
着色の出来栄えは作品の雰囲気やクオリティに大きく影響するため、comico編集部には「着色ディレクター」という肩書きの編集部員がいます。
今回はその着色ディレクター・Sに、WEBTOONの着色の基本をインタビュー形式で答えてもらいました。
WEBTOONの着色に興味のある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。


WEBTOON制作に着色ディレクターが必要な理由

――早速ですが、Sさんの「着色ディレクター」という仕事は、普通のWEBTOONの編集とは違うのでしょうか?

着色ディレクター Sさん

着色D はい、一般的なWEBTOONの編集は、ストーリーや作画など作品全体のチェックや進行管理が主な業務になりますが、着色ディレクターはWEBTOONの着色パートに特化した編集です。そのため、主な業務は着色部分のクオリティコントロールと進行管理になります。
例えば女性向け作品だったら、画面が煌びやかで美しくなるように、着色ディレクター自身が実際に手を加えて修正イメージを作成したりしています。
モノクロ漫画の制作現場には存在しない業務で、通常の編集業務とも異なりますが、フルカラーのWEBTOONの場合、着色は重要なポジションだと考えています!

――確かに、WEBTOONは基本フルカラー原稿なので、制作には着色についてのより専門的な知識が求められますよね。ちなみに、comico編集部で着色ディレクターになる前はどんなお仕事をしていましたか?

着色D 私自身は、過去にイラストレーターとして仕事をしていました。
その中でも着色業務は得意とする分野だったので、着色に特化したディレクター業務に興味があり、今のポジションに就きました。
色彩を通じて物語や表現を豊かにしたいと、日々試行錯誤しています。

――プロのイラストレーターが着色ディレクターとして編集部にいるのは、とても頼もしいです。

WEBTOONの着色工程

――そもそも、WEBTOONの着色作業にはどういった工程があるんでしょうか。

着色D 一般的なWEBTOONの着色工程とは、線画原稿に色を塗り、効果をつけるまでが主な作業になります。具体的な作業内容は以下の通りです。

  1. 人物のベース塗りと影塗り、線画の色トレス(主線に色をつけること)

  2. 合成レイヤー(オーバーレイやスクリーン効果等)での効果付け

  3. 画面装飾(花やキラキラの飾りなど)

  4. 背景が無いコマの背景装飾

  5. フキダシ、書き文字の着色

着色工程

まずベース塗り、影つけ等を行い、着色が基本的な段階まで終わったら、華やかなエフェクト、花などの装飾を追加し、ふきだしや書き文字に色をつけます。作品によっては花などの効果が無いこともあるので、作品に応じて内容は変わりますね。

――やることが結構たくさんありますね…!

着色D そうですね。着色と装飾次第で作品の印象が大きく変わります。

――作品をチェックする時に、特に気をつけている工程はありますか?

着色D 私はキャラクターのベースカラーの作業が一番大事だと思っています。着色の土台となる部分で、あとから修正がきかないためです。
また、同じ効果をつけたとしても、ベースカラーが適切でないと綺麗に見えない場合があります。ベースカラーの決定は一番慎重に行う必要がありますね。

着色チェック時のポイント

――具体的に「これは良い」と感じる着色原稿とは、どういうものでしょうか?

着色D 一言で「どういう着色が良いか」を表現することは難しいですが、私は以下の3つを押さえていることが大事だと思います。

  1. 作品の特性に応じて、適切な着色スタイルを選択すること

  2. 柔らかく透明感のある色彩で、読者の目への負担を抑えること

  3. 最新のトレンドや読者の反応に敏感に対応すること

どういうことか、それぞれ説明しますね。

1. 作品の特性に応じて、適切な着色スタイルを選択すること

着色D 「作品の特性に応じたスタイル」というのは、以下の例を見ていただくとわかりやすいと思います。

テイスト別の塗り分け

――確かに、作品によって着色のテイストがかなり違いますが、それぞれの作風に合っていると感じました。

着色D はい。絵柄や物語の内容によって、作品ごとに適した着色は異なるので、物語やキャラクターの雰囲気に合った色使いや効果の選択が重要です。

2. 柔らかく透明感のある色彩で、読者の目への負担を抑えること

着色D 私個人の感覚ではありますが、女性向けロマンスファンタジー作品は、共通して柔らかく透明感のある色選びが読者に好まれていると思います。例えば以下のベース塗りの画像をご覧ください。

ベース塗りの違い

――①は原色感が強くて、ギラギラしてる感じですね。②のほうがどちらかと言うと自然な配色で、線画の雰囲気や、儚げなキャラクターの雰囲気にも合っている感じがしますね。

着色D 私はWEBTOONの配色においても読者を意識することが重要だと思っていて、女性向けのロマンスファンタジーなら、女性読者向けの着色になっているかどうかを意識してディレクションしています。
例えば、こういったパステルカラーや淡い優しい色味は、女性向け商品のパッケージにも使われていることが多いですよね。
あと、先ほど①が「ギラギラした印象」と言われていましたが、彩度の高い色は視覚的に刺激が強く、読者の目が疲れやすくなり、読書の質を下げる可能性があります。
クオリティチェックの時には、「読者が疲れない配色になっているかどうか」も意識していますね。

――なるほど。他の工程と同じように、着色も「作品全体の雰囲気」や「読者にとっての読みやすさ」を考えることが重要なんですね。

3. 最新のトレンドや読者の反応に敏感に対応すること

着色D これは線画やネームの作業においても同じだと思いますが、最新のトレンド作品を読み、良いと感じた部分を作品に積極的に取り入れていくとよりクオリティの高い作品になると思います。
私自身も担当以外の作品の着色をなるべくチェックするようにしていて、「いいな」と思うものがあれば、参考にして塗ってみたりしています。

未経験でもWEBTOONの着色はできる?

――WEBTOONの着色に興味がある方が一番気になっているのは、ずばり「未経験でもできるのか?」ということだと思います。また、作業量の目安も気になるところかなと。

着色D はい、未経験の方でも大丈夫です!
comicoの作家さんはみんなCLIP STUDIO PAINT(PRO/EX)で作業してくださっているので、CLIP STUDIO PAINTが使える方であれば問題ありません。
制作スタート時は、私をはじめとした着色ディレクターと協力しながら、WEBTOONに適した着色方法を一緒に探っていくこともできます。迷ったときはサポートも行いますのでご安心ください。
実際の作業内容は作品によって多少異なりますが、線画以降の原稿を着色していただくことになります。comicoの場合、1話が45コマ以上の作業になることが多いです。

――Sさんから見て、どういう人が着色作家さんに向いていると思いますか?

着色D  線画の世界観にあわせて影の付け方や効果の入れ方を工夫するのが好きな方は向いていると思います。
また、着色作業は線画に合ったベンチマーク作品を設定し、それを参考に作業を進めていただくことも多いので、ベンチマーク作品の良さを取り入れられるかも大事です。
着色作業は作品全体のクオリティを向上させ、原稿を完成させるという重要な役割を果たすことが求められますので、創造性や柔軟性、クオリティに対する高い意識を持つ方も向いていると思います。

――では最後に、着色作家に興味がある方へのメッセージをお願いします!

着色D  着色にかかわらず、WEBTOONの分業制作は、自分の「好き」や「得意」を活かせる制作スタイルです。着色が得意であれば、自分の能力を最大限に発揮できます。
ぜひ、一緒に素晴らしい作品を創り上げましょう!

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『公爵夫人レディ・サファイアの秘密』©フェイ・飴屋ハルユキ・西根羽南/comico
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