VRとか演出とか

この記事は cluster Advent Calendar 2019 12日目の記事です。

クラスターでデザイナーをしているCOMです。
主にライブの演出制作を担当したりしています。

デジタルでの演出、とっても楽しいですね。現実では不可能だったりお金がかかりすぎたりすることが何でも出来ます。
とりわけHMDを介したVRは現実に身を置いて視界の一部にあるモニターを覗き込むのとは質が違う体験をすることができます。

私が普段作っているVRライブでも意図的に観客席を巻き込む演出にするなどして「お、"VR"っぽい」と思ってもらえるように心がけているのですが、やはり自分で後から見てみても物理的な現実には無いものを"そこにある"と感じさせる技術には可能性を感じますね。


その一方で、このまま技術が進化した先の所謂完全なフルダイブVRを考えた時、演出に関して物理の制約が無いことが仇になる可能性があるのではないかなぁと最近思う時があります。

つまり、何でもできることが"分かりきっている"世界で何かが起きたときに演出そのものに対して人間は心の底から感動や新鮮さを感じることが出来るのか?ということなんですが、どうなんですかね。どうなんだ

全然別の話なんですがどうせ脳をハックするなら五感とは違う方法で物体の認識をしてみたいです


あと、ライブとか演出を作る時は何を考えているの?と社内でたまに聞いてくれる方がいるので、頭の整理もかねてちょっと書いてみたいと思います。

普段自分が考えていることを言語化するのはなかなか難しいのですが例えば、

画像1

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"これ"を見た人はほぼ確実に"あ、なんかかわいい"と感じます。(もしくは、このかわいさから敢えて狙っているようなあざとさを連想します)

なぜそう言えるかというと、人間の脳みそがこういう構造を"かわいい"と感じる作りになっているからです。

実は、"一つのものとして区切って数えられるもの(上の例で言うとストライプや画面縁の「モコ」)が画面上に明るめの低コントラストで立体を感じさせずシンプルなパターンで並んでいる"と人間は相当な確率で"かわいい"と感じます。

別にこんなに条件を組み合わせなくても、例えば"シンプルなパターンで並んでいる"だけでもかわいくなり得る要素ではあるのですがここまで組み合わせるともうどの角度から見ても"かわいい"です(もちろん"かわいい"にはいろんな種類があるのですが、今回はこの"かわいい感じ"のことです)。

いやいや、ものの感じ方なんて人それぞれなんだから勝手に決めつけるなって感じなんですが、そもそも人類または特定の文化のグループでこういった共通の認識が出来ないと"何か"に対して"かっこいい"、"かわいい"、"価値がある"という評価を集団で一致させることが不可能になるので当たり前といえば当たり前のことでもあります。

生き物として先天的なものなのか後天的に学習したものなのか分からないのですが、少なくとも上の"かわいい"の例は現代の殆どの人は共通するようですね。もし興味があったら上の例で挙げた要素のうちどれか一つを意図的に変化させてみたりしてみてください。結構面白い結果になると思います

こんな風に私達が普段何気なく感じている"かわいい"や"かっこいいい"ってつまりどういうことだ?を突き詰めてどんどん分解していくとどこかのタイミングで必ず、「これ以上はどう頑張っても要素を分解できない、もう、脳が"それ"を"こう"感じる仕組みだからとしか言いようがない!」という地点にたどり着きます。

ライブ(別にライブに限った話じゃないですが)を作る時も同じで、"こう"感じさせるためには"あれ"が必要だから抽象化した"それ"と"これ"を"この"タイミングで組み合わせよう~、みたいな、すごく雑な説明になってしまったんですが大体こんな"感じ"で作っています。

恐らく理性は感覚を凌駕するのですが、まだ原理的に脳を理解している訳ではないので知識はあくまでものさしとして使うのがいいかもしれないです。


もうすぐ2020年ですね。明日はKIZONA-AIさんによる来年の抱負です。