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草子ブックガイドが本当に良くて

今の仕事に繋げるためにやっていた職業訓練所で買わされたOffice類の参考書を売って、代わりに1冊100円の漫画コーナーで、ぱらぱらとめくり気に入った草子ブックガイド一巻。翌日の週初めの電車と、昼休みに渋谷の裏通りを散策して見つけた小さな公園で、ミルトンナシメントなんかを聴きながら、丁寧に読まされ、とても凄く心に沁みつけられてしまった。

小さな古本屋と本を拠り所とし、学校や家に居場所のない草子の真っ直ぐな数々の本の世界の紹介が、彼女自身の葛藤や失意や熱意と重なって、美しい描写(特に物語の広がりを表現するために描かれる見開きの草子と世界の絵)、それがもう本当に、久方ぶりにストレートジャブを作品から食らったようだった。帰りに立教大学近くの某古本屋で半値で2巻を買い、翌日会社帰りに書店で定価で3巻を買い、この漫画にある真摯なメッセージに、僕は自身の音楽への向き合い方と重なり、そして反省する部分もあった。

メインの話ではないけれど、一巻最後の旅の話では、序盤でガサツな若い書店員として出てきてあまりいい印象を持たなかったのに、この話でなんで古本屋で働くようになったのか、旅や短歌の生き生きとした良さを、駆け抜けるバイクと山の風景と共に、がらりと印象を変えさせられた。物語の奥の世界とともに、この世界の豊さも、うまく、掬って広げてくれる。

本だけでなく、音楽への愛情もまたこの漫画では描かれた。3巻のとある一編で、高田渡の生活の柄が、その下となった詩と一緒に取り上げられる。物語の最後で、妻からガラクタ早くどうにかしなさいと言われて眺めるレコード棚。それが今どんどん増えている僕のレコード棚と重なってしまった。同じ棚でも作中では本棚が、その人を映す鏡のような書き方がされていたように、棚が自分自身を物語ってくれるのかなと、そう思って僕も心に残るレコード(鋭さや格好良さや新しさだけのも)を無意識に増やし続けているけれども、心が途切れた時に、それはガラクタになってしまうのかもしれない。3巻最後の父親の末路で、空っぽになることを物語を通して憂いている。

この作品の登場人物の第一印象は、どの人もどの人も、どうしようもない、好きになれない人ばかりで、主人公の草子も、最初の登場シーンが万引きのシーンなのだ。陰極なクラスメイトや(後に親しくなる男子も)、前述の若者も、図書館も、学校も、その先生も、図書館委員の子も、ぶさいくな猫も、そして泥酔して破綻してる父親も、どれもこれも最初はみんなあまり良くないイメージ。(例外が古書店の店長のおじさんかな)なのに、その人を知っていくと段々と、その人のことが好きになっていく、そんな不思議な作品だ。

物語は逃避する場所じゃない、秘密の花園じゃなく、世界を見ていく目となり耳になり、色々な生きる人々の物語を知る手助けとなっていく。色々なメディアの作品を知って、好きでいるということは、そういうことなんだって教えてくれた。受け手というだけでなく、創作のこともいろんなことを気付かされた。また読み返そう。

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