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涼元悠一 『青猫の街』

KeyのAIR、CLANNADのライターになる前の、作家の涼元悠一のミステリー。

Windows95が出たばかりの(もう20年前)インターネット幼年期の、SEで27歳の主人公の、失踪した友人を、仕事の合間に足とPCで追っていく話。

昨年僕も転職して都市部のSEになって、今も物凄く古い言語とシステムを管理する大きなビルの中で働いてる。だからなのか、劇中のプログラム用語がすごくナチュラルに感じられるとともに、小学生の時にあの時代のインターネットをほんの少しかじった事もあって、あのアングラでわくわくする感覚を思い出した。今じゃ検索したら億単位の結果がでるのに、この作中じゃ数十個の結果で膨大という感覚の差なんかもあったけれど。

途中までのぐいぐい持っていく展開は単純に面白いと同時に、自分とほぼ同じ年齢や仕事をしてる主人公の世界が、なんというか凄くおっさん臭い。大人の男の成熟した世界。だから子供のころの原っぱのように、未知数なWebの海に飛び込みたくなったのかもしれないな。

少しネタバレをすると、結末に至る最中で話が深い深いコンピューターの迷宮からふいに、ノスタルジックなものになる。涼元さんは、そこから、どんな心象風景を捉えようとしたんだろう。

(ブックカバー外して見た帯のコメントがひどいね。悪意的な表現はあるけれども、インターネットを貶めてる作品じゃ全くないのに)

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