FUJIROCK 2014 THE ARCADE FIRE

「アーケイドファイア、フジロックヘッドランナーで参戦」

この文字がTwitterから流れ、そしてオフィシャサイトにかかれたArcade Fireの文字が、一瞬現実のこととは思えなかった。本当に、来るんだーー。四年前の新木場スタジオコーストの来日公演、思えばそれが、中々ライブに行けなかった僕が初めて体験をした、海外アーティストの来日公演だった。ステージの上の彼等の魔法を必死で観て、そして叫んだ。あの後有名新人様々なライブを観たけれども、あの公演を上回るライブ体験は未だない。本当に特別な時だった。

そんな彼らが、サバーブスツアーでは来日を見送り、海外との知名度の差があるという日本でも、さすがに段々と彼等の知名度と評判は広がっていった。コーチェラでのライブをヘッドフォンで大音量で観て、1人アパートの一室で合唱してしまって全身から汗が吹き出したりもした。彼らのライブが観たい、それもコーチェラみたいな野外フェスで観られたら、もう仕事だって辞めたっていいと思っていた。

そして、今回の大望の告知があった。発表からその後の半年間は、僕自身も色々な事があったし、冬には本当に仕事も辞めてしまった。夏が近づいて、何とか新しい職場も見つかって、僕は初任給を握りしめて渋谷の岩盤へ行って、初めての野外音楽フェスのチケットを買いに走った。

1人で行く初めてのフジロックも、全てが新鮮で、自然や音楽に胸が高鳴るばかりだった。そして段々と日が沈んでいき、後方でデーモンアルバーンを見終えてすぐに、少しでも近くでアーケイドファイアが観たくて、前方エリアのモッシュピットの柵の内側に入るための列に並び、何とか右中央あたりまで来ることができた。客席中央にも小さなステージがあるらしく、また段々と変えられていくステージにも、ミラーが取り付けられ、真っ白な機材が置かれて行って、開始40分前から開演までの間も、どきどきしながら、その時を待っていた。

そしてーー夕方5:30、遂に彼らが現れた。中央ステージにも全身ミラー男がでてきて前置きをし、会場の興奮が高まり続ける中で、Reflektor が鳴り響き始めた。

それぞれのアルバムもどれも本当に特別な1枚1枚であるのに、それがライブになって、また1つの体験へと紡がれて、僕達を激情の渦に巻き込んでくれる。モニターの上にウィンが立って拳を上げて、そして僕達も一緒になって、ただ声が枯れるまで声を上げた。猛暑の終わりのその時、それぞれの歌の物語を、苗場の空へと解き放っていたのかもしれない。

そして、他のアルバムもそうだけど、何度も聞いたFuneralは特別に色んな情景や感情と結び付いてしまっていて、ちょっと自分でもどうかしてると思いながら、中盤の(3rd収録)Ready To Startからの、(1st収録)Tunnelsで、僕は気持ちの糸がぶち切れてしまって、歌いながら嗚咽してしまった。その後のWe Existでは破顔をしたけれども。

魔法は、あっという間に過ぎていく。途中でみんなが振り返るから、中央ステージか後方で何かの演出をしたのだろうけれども、とても振り返る余裕もなく、段々と少しづつ前方へと押し流されていき、最後は前方三列目くらいまで来てしまった。ライディーンを挟んでHere Comes The Night Timeで狂乱の中でうねりの中で飛び跳ねた。そして目の前で破裂音がして、気がついたら周りが紙吹雪でいっぱいになって、顔にも容赦なく紙吹雪が張り付いて、そんな中でライブは、アンセム、Wake Upが!うねるような大合唱が、日本で、苗場の夜空に向かって炸裂した。恐ろしいくらいの昂揚感。ーーもう、言葉にならない。

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