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【特定箱サイズ】好きなゲームトップ3と、箱サイズの考察

ボードゲームには、数多の種類、サイズの異なった箱が存在します。

中には、クニツィアスペースと呼ばれる空白の多い箱があったり、中身が入りきらず箱が浮いているものや、メーカーが違うのに全く同じサイズの箱とかもありますね。

さて、今回は収納というボードゲーマーに極めて近しい言葉と切ることのできない、「箱サイズ」に注目して、特定の箱サイズの好きなゲームトップ3を書いていきたいと思います。

後半は、箱サイズはなぜ同じものがあるのか? 縦長と正方形、横長の話や、側面の話をしたいと思います。こちらは創作向け、雑学向けかも。「なんでこんなサイズやねん!?」と1度でも思った人は読んでみてほしい内容です。


1.今回の箱サイズ

ランキングのために、どの箱にしようかな、ってことは考えませんでした。
個人的に割と好きな箱のサイズはあって、その話をしたかったのです。

先に結論を書いておくと、「130x180x48mm」ぐらいの箱です。と書かれても一部の人達以外は分かりませんよね。

具体的なタイトルでいうと、(やや大きいけど)カルトグラファーズ、ストライク、5211、アブルクセン辺りでしょうか。古くはFX schmidのアタックや号外、Queen Gamesのレス・パブリカやシュナッペンヤーグドとかね。Hexa Games(すでにありませんが)もこのサイズ多かったなぁ。

小箱ではないけれど、少し大きめの箱で、カードゲームにしては少し多めのカードが入っていたり、追加でチップや薄めのボードが入ってたりしますね。

値段で言うと2500-3000円ぐらいで売られているゲームです。
私はこの辺の値段帯のゲームが結構好きです。細かい点は後半に譲るとして、このサイズのゲームで好きなもの、トップ3をご紹介します。


2.第三位

スルース(シド・サクソン)

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写真は記念で再販されたバージョンなので、若干箱が大きいんですが、推理ゲームの古典がランクインです。ドイツではダイヤモンドヤーグドってタイトルでも売られていたのは知っています。(何かのついでに「これも付けてあげるよ!」って言われて手に入れた記憶があります。)

スルースには、36枚の宝石カードと54枚の探索カード、そして専用のメモ用紙が入っています。

あらかじめ宝石カードから1枚抜いて、残った宝石カードを各プレイヤーに配ります。
このあらかじめ抜いた宝石カードが何かを当てるゲームです。

探索カードも4枚ずつ配ったらゲーム開始です。
手番プレイヤーから時計回りに手番を行います。
手番では探索カードを1枚、他のプレイヤーに出して、それを持っているかどうかを聞きます。(宝石の数や種類が描かれています。ただ具体的すぎるものでもありません)
それらの回答をメモ用紙にメモして、絞り込んでいきます。

最初にあらかじめ抜いた宝石カードを当てたプレイヤーが出たら勝ちます。

このゲームは、情報の整理はもちろんのことながら、自分から見える景色と相手の景色が違うところが面白くなっています。つまりは自分の手札の宝石を知っていると知っていないとでは動きが異なるのです。

また、それを逆手に取った推理も可能で、よく見ているプレイヤーはその質問から他の3手先を推理していることもあります。

推理にはいろんな方法があるんだな、工夫ができるんだな、ということにしばらくプレイすると気づける、古典ながら楽しいゲームです。
※1971年初出です。


3.第二位

キャメルアップカードゲーム(ステフェン・ボーゲン)

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このサイズは、ボードゲームのカードゲーム化の際によく使用されるサイズでもあります。
第二位はSdj(ドイツゲーム大賞)で大賞を取ったキャメルアップのカードゲーム版、キャメルアップカードゲームです。

キャメルアップはそのパッケージイラスト故、ラクダが不評で、遊んだことがない人がそれなりに回りにいるんですが、騙されたと思って遊んでみてほしいゲームではあります。

ゲームは何ラウンドかに分かれて、1つのレースを行います。言い換えれば、ゴールまで複数のラウンドのあるレースです。

各ラウンドでは、「ラウンドの終了時にどのラクダが何位なのか」を当てることを主眼としています。
ただ、誰でも好きなラクダに賭けられるわけではありません。あらかじめ各色のラクダが何位なのか、というカードが置かれており、早い者勝ちで取れます。

さらにゲーム終了となる、ゴールテープを切るのはどのラクダなのか、最下位はどのラクダなのか、というのもいつでもとることができます。こちらはラウンドごとに戻されず、取ったらそれまでです。また、1人のプレイヤーが重複して(例えばトップに別々のラクダを)取ることはできません。


ラウンド中、ラクダを進めるのは手札のカードです。
ですが、それを手札から出すことはありません。

このラウンドで使われるカードをあらかじめ各プレイヤーの手札から出してまぜこぜの山札にします。
手番で1枚めくることができ、それで進みます。

手番では、先ほどのように進むカードをめくるか、ラクダの順位予想カードを取るかして進めます。
こうして進むカードがすべてめくられたら決算があり、次のラウンドとなります。

自分の入れたカード、他のプレイヤーが入れたカードをよく考えつつ、順位を予想していきます。
面白いのは山札からめくられるカードの順番が非常に重要で、同じマスに後から来たコマはすでにあるコマの上に乗ります。下のコマが動けば一緒に動き、何なら上のコマの方が順位は上の扱いです。
どんどん上に乗るため、動く順番のいたずらで、最下位になるはずのコマが、ほぼカードがめくられていないにも関わらず、なぜかトップにいたりします。

簡単な仕掛けのわりにドラマチックな展開を見せるところがこのゲームの面白いところですね。しかもそれが発生しやすい。
いや、プレイヤーの思惑の賜物なんですけれど。


4.第一位

ベンチャー(シド・サクソン)

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そんな訳で、トップは競りゲームの古典、ベンチャーとなります。ボッセ、ってタイトルでドイツでも出てたはず。後、筆者の「シド・サクソン」好きも反映されています。

ゲームはセットコレクション系になるのかな。株っぽい雰囲気はあるんですが。

手番では、お金カードを使って公開されているカードを買うか、山札からカード(お金やイベント)を引けます。

買ったカードは、自分の前に集めていきます。
カードはA~Fのアルファベットがいくつか書かれていて、「違う色」で「一致するアルファベットが必ず1つある」ことを条件に重ねていけます。
重ねられない場合は新たに別の山にしていきます。

これを繰り返して、中間決算(何回かあります)と最終決算での合計得点が高いプレイヤーが勝ちます。並んだカードの枚数が多い方がもちろん、得点が高いです。

1列しか作らず、さらにそれらで複数のアルファベットを合わせて高得点を狙うこともでき、方針をどうするか、他人と必要なカードをどう逸らすかが重要になってくるゲームです。

遊ぶとわかりますが、足元を見るタイプのゲームでもあります。
先に集めるともちろん強いのですが、介入されると邪魔でしかなく、対応しているうちに他の人に抜かされます。

最初に書いたように古典です。1969年です。
古臭さはあるし、テーマなんかの味付けはほぼない感じではあるんだけれど、人の業を目の当たりにしているというか、感情に訴えてくるものがあります。「てめぇ」って言葉しか出てこないこともありますが(笑)<足元を見られていると

個人的にはこういうドロドロした部分もボードゲームの面白さかなと思っていますw


5.箱のサイズの意味

そんな訳で、ここからは半分トリビアみたいな、創作向けみたいな話になります。とりあえず、クニツィアスペースと呼ばれる、無駄にでかい箱がなんで無駄にでかいのか、という理由の一端を知ってもらえればなと思います。

もしくは、他と全く違うサイズの箱で、整理に困るやつとかですね。


早速ではありますが、これを読んでいる人は、箱のサイズに「意味」があるのを御存じでしょうか。作者の変な好みで作られているわけではないのです。(いや、幾分かはそんなパターンはあるんですが)
いくつかの意味があります。


・ゲーム内容との整合性
・物流


・ゲーム内容との整合性
ゲームのルールと箱の大きさはある程度対応しています。偶然や否定の言葉が聞こえてくる気がしますが、長く商業でされている方も同意されていたので、間違ってはいないと思います。

内容物に合わせて箱が大きい、という訳ではないのです。結果として、内容物が多くなり、箱が大きくなっている、ということはあります。


ちょっと分かりにくいので掘り下げますね。

例えば、ここに「山札がぴっちり2つ入るタイプのカードゲームの箱」があるとします。ゲームをたくさん買っている人であれば、「1000-2000円程度かな」と予想されると思います。

そして、ゲームの中身は15分から、長くても45分ぐらいのゲームって思いませんか? もし思っていない場合はそう思ってくださいw

そうです。箱のサイズからゲーム内容の一端が導き出されるのです。

ちなみにこれに一致しないゲームっていうのも数多くあります。近場で言うと同人ゲームなんかにすごく多いです。

でね、この話ってすごく小さい話に聞こえるじゃないですか。
世の中には店頭含めてそれに合致しないゲームが多いし、何なら通販メインで買う人にはあまりなじみがないしって思うじゃないですか。ねぇ、思っといてもらえません?(誘導が多い)

でもね、『買った時』、そして『箱を開けた時』、『パッケージを見たときの期待度』も背負ってるんです。箱の大きさって。

もちろん、そのイラストのパッケージ自身によるものもありますが、箱を開けるとき、無心で開ける人っていうのはほぼいないと思います。
多少の先入観を持って開けるのです。これはきっとこんなゲームだろうって。

その上でルールを読み、タイルを抜き、カードを数え、眺めます。
これらはつながっていないようで、すべてつながっています。

だから、そんな時、中身がスカスカだった時のがっかり感があるのです。クニツィアスペースもそのがっかり感から来ているのです。


正直、私もこの職業に着くまで、15年ほどボドゲを触ってきてはいましたが、仕事にならないとそういった目線までたどり着くことはありませんでした。とはいえ、実際にパッケージを作る仕事をしているとこういったことに出会うことはあるとは思います。

逆に書くと、大箱のゲームはセットアップが大変でも遊んでくれます。
小箱のゲームでセットアップが大変だと、なぜか徒労感を持ったことはないでしょうか?

大箱のゲームを開けて、(アクションゲームを除いて)セットアップ、テーブル上のごちゃごちゃ感がほとんどしない場合、何故かちょっとがっかりしないでしょうか?

あまり感じない人もいるかもしれません。
でも一番は自分のボードゲーム棚を眺めればいいのかもしれません。大箱なのにテーブル上が簡素、小箱なのにセットアップが大変、というゲームはあまりないと思います。

そんな訳で、ボードゲームの箱は、中身を体現している、と言っても過言ではないと思います。
これを逆手に取ると、作ったボードゲームに見合う箱が必要です。それに応じたコンポーネントも必要です。そして、もしそれらが見合っていないのであれば、見合うように調整するのも「ゲームデザインの一部」なのです。

正直言うと、この話はこの仕事をする前から少しは知っていました。でも、実感を持つには至らなかった、というのが本音です。
この仕事を始めてからも徐々に見えてきて、ボードゲームの商品化、ということをいろいろな面から見るようになって、ようやく見えてきたところがあります。

すべてはつながっているし、それらを切り離した結果はあまりよくないものにしかなりません。

期待、面白さ、テーマ、システム、コンポーネント、何もかもつながっているのです。

中々分かりづらい話になっているかもしれませんが、箱にはこんな話があるんです。



・物流
理解だけでいえば、こちらの方が簡単ですね。
これは同人、というよりは数多く運ぶ場合に考えなければならない点です。
それは、「パレットサイズ」というものです。

ボードゲームは段ボールに入れられて運ばれます。
多くの同じボードゲームは、多くの段ボールをパレット(すのこみたいなやつ)に乗っけて、トラックで運ばれます。

パレットは規格があり、大きさが決まっています。
そこに限界まで乗せた方がもちろん、運送が楽ですし、何より安くなります。ゲームをいれた箱に余白なんかあった日には、箱破損の原因にすらなります。

そんな訳で、パレットに合わせて段ボールのサイズが決まります。
そこからさらに逆算で箱のサイズが決まります。

この時、他のボードゲームと全く別のサイズの段ボールならいかがでしょうか。輸送時、他と混ぜて運ぶと空白がたくさんできますね?

ボードゲーマーの棚ではないんですから、混載は難しいことがあります。特に箱のダメージなどを考えると避ける場合も多いでしょう。

そうなると、パレットにいっぱいゲームを置くことができなくなることもあります。(繰り返しになりますが、バランスが異なった場合、輸送時の荷崩れに繋がります)

こういったことがあり、可能な限り均一である方が物流は楽です。

そのために箱のサイズが大体同じものになります。

もちろん、これには生産の都合などもあります。
紙自体においても規定サイズというものがあり、簡単な方を書くとA4やB5というサイズぐらいは聞いたことがあると思います。それに合わせた紙を使って箱を作ると安く済みます。なぜならプリンターがそれに合っているからです。※実際は全紙とかそういう話になるんですが、それはまた別の機会に。

同人ボドゲは同じサイズが多くなりですか? それにはプリンター、加工で安く済ます知恵の結晶が詰まっているのです。(記載以外の部分もたくさんあるはずです。)


そんな訳で、ボードゲームの箱は、「内容物だけ」を見て作られているわけではないことが伝わったでしょうか?

個人的には逆です。箱があってから内容物が作られるのです。

弊社(COLON ARC)では、この辺を一昨年ぐらいから一気に見直しをかけて、サイズを変えたりし始めました。
まだまだ私の理解が追い付いてなくて、できていない部分が大量に残っているのですが、1つずつ対応を進めています。

正直、この辺りの知識がない、初期は「かわいい」、「個性的」というだけで箱を決めていました。やってみないと分からないですね。反省。でも面白いですね。

さて、箱のサイズの話はこの辺にしておきます。
実際、箱についてはここに書いたもの以外にまだ山ほどのポイントがあります。なんなら多すぎて掴み切れないぐらいです。もちろん、つかんだからと言ってたくさん売れるわけではありませんが、やらないよりは売れるとは思います。

もし今後、新たにボードゲームを買うことがあれば、箱に注目してもらえると面白いことが分かるかもしれません。

もし今後ボードゲームをデザインすることがあって、箱について考えることがあるなら、作りたいボードゲームの難易度と箱のサイズは比例する、ということを思い描きながら作ってみてほしいです。

それでは箱のサイズの話はここまでです。
また次のお話で。


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