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「いたみをはかる」に寄せて:天使と屍体はいたみを感じるか?

自宅待機生活のあいだ、《皆殺しの天使》の配信を観ました。といっても、ブニュエルの映画それ自体ではなく、これをもとに最近オペラ化された舞台の映像です。イギリスの作曲家トマス・アデスによって音楽が付けられたこの不条理劇は、ザルツブルク音楽祭で2016年に初演されたあと、ロンドンやニューヨークなどで再演を重ねています(ちなみに、現代オペラで再演が続く作品はなかなか珍しいのです)。 映画があまりにも有名なので、改めて説明する必要もないかもしれませんが、この《皆殺しの天使》は、オペラ

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「いたみをはかる」に向けて(後編):漢字に羽化するまえのことば

今日も今日とて書きはじめるにあたって、昨日の記事(前編)を読み返してみたりすると、大事なことを書き忘れていることに気づきます。読んでくださった方もそう思ったかもしれません。 ……パサージュ? パサージュ、ベンヤミンの著作のタイトルを飾るその言葉、しかしそれが何であるか説明されないまま、貝殻の潮音からパサージュが導かれると、さながら夢の構造に似ているだの、裏地にアラベスク模様をあしらった灰色の布だのと言われ、挙句の果て、そこは「われわれの両親の、そして祖父母の生をいまいちど

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「いたみをはかる」に向けて(前編):貝殻の話

もういくつ寝ると……と呑気にうたっている間もなく、イベント「いたみをはかる」が明後日に迫っています。「あ、参加登録忘れていた……」そんな迂闊な方は今すぐこちらから…… 「でも、ここにある情報だけでは当日どんな議論がなされるかわからないし」……迂闊だなんてとんでもない、失礼いたしました(本当におっしゃるとおりです)……しかし実のところ、議論がどんな展開をみせるのか、私たちにとってもいまだに未知数なのです……今回は田中純さん(以下、田中先生)というスペシャルゲストにコメントをい

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« Paris de la Peine version Verre »(痛みのパリ、ガラス編):観察者の話

collectif pointは、2020年2月14日から18日にかけ、パリの国際学生都市内の日本館で、« Paris de la Peine version Verre »というイベントを行った。 こちらのイベントの詳細は、collectif pointのFacebook ページに掲載されている。 この記事は、そのイベントのドキュメンタリーを制作した、Hirai が書いている。 ドキュメンタリーは、collectif pointのYoutube ページに公開されている

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都市の肖像ーミンスク

ベラルーシ・ミンスクを写真や多様な情報源で紹介しています。

都市の肖像 — ミンスク(後編)

Portrait of a city — Minsk II 筆者らはインターネット上のヨーロッパの観光情報サイト、EURO TRAVELLERに記載された「ベラルーシ旅行の拠点!ミンスクで訪れたい観光名所20選」という記事を読んだことをきっかけに、2019年8月にベラルーシの首都・ミンスクを訪れた。記事の前文の「旧ソ連回帰を目指し、欧州最後の独裁国家と呼ばれる東欧ベラルーシ」という文言と、そこに掲載された写真に興味を持ち、行くことを決めた。 [I, 1] 現地では、友人の

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都市の肖像 — ミンスク(前編)

Portrait of a city — Minsk I 筆者らはインターネット上のヨーロッパの観光情報サイト、EURO TRAVELLERに記載された「ベラルーシ旅行の拠点!ミンスクで訪れたい観光名所20選」という記事を読んだことをきっかけに、2019年8月にベラルーシの首都・ミンスクを訪れた。記事の前文の「旧ソ連回帰を目指し、欧州最後の独裁国家と呼ばれる東欧ベラルーシ」という文言と、そこに掲載された写真に興味を持ち、行くことを決めた。 [I, 1] 現地では、友人の友

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