反転授業のデザイン再考−TBLTおよびCLILの観点から

昨日は、名古屋から直接、早稲田大学で行われる反転授業の科研グループ主催のイベント「反転授業のデザイン再考−TBLTおよびCLILの観点から」に、スタッフ兼参加者として参加してきました。今回は、反転授業の反転部分ではなく、授業活動に注目。その手法として、TBLTとCLILを取り上げました。この2つ、似ている気がする、違いが判らない、そもそもどちらもあやふや・・・という感じの方も多いと思います。短い時間でしたが、先生方のお話がとてもわかりやすく、すっきり理解できるイベントでした!ざっとメモ書きしたものを共有します。

TBLT 百済正和先生(関西国際大学)
【理論編】
 タスクは言語教育実践の中心的な要素である
 タスク中心の教授法は、理論語研究と教育実践の結合点となりうる
 タスク:Samuda and Bygate(2008,P62-70)
タスクは言語の発達を促すために何らかのやりがいのある課題である必要がある。
タスクの遂行過程とその成果を通して言語学習が促進させるようなものである必要があるか。
→タスクは学習者が前のめりになるようもの。
 良いタスクとは?
目的と目標が明確。その目的がコミュニケーションを通して達成される。難しすぎず、ある程度やりがいを感じながら、成果を出すことができる。豊かな言語仕様を引き出すことができる。創造性と自己表現が実現できる。インターアクションのパターンに種類がある。目標達成に向けて、いろいろな道筋がある。関連性があり、興味深いトピック。ゴールが明確。
 Communicative Language Teaching(CLT)の後継
 抽象的なものがより分かりやすいもの=タスクになった
 CLTの発展形としてのTBLT
広報的言語感の呪縛/コミュニカティブ・コンピテンス(Communicative Conpetence)/意味の存在性/言語技量
 弱いバージョンのTBL、言語知識を教えることと言葉を使わせることのバランスをどのように取るか
 「ちょっと教えて、たくさん使わせる」→日本語教育では、たくさん教えて少ししか使わせていないのではないか?

【実践編】
 タスク・ジェネレーターを利用したタスク・チェーンの作成
 タスク・デザインにおける留意点
 ストーリーの再生活動とディクトグロス
 タスクを利用することの難しさ:嫌いされる言語使用がなされない、難しすぎてモチベーションが上がらない、、簡単すぎて面白くない
→タスク・デザインの工夫
 タスク=ボルダリングのようなもの、教師の少しの助けで登っていけるようなもの
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/teach/tsushin/report/201010.html
 「普段話さないようなことを日本語で話してみよう」
→足場を作るためにタスクを渡していく。
 トピックを真ん中に置く、アイディアマップのようにタスクが紐づいてくる
 タスク・チェーン:補助タスク(いくつか)→ターゲット・タスクとつなげていく。
例)理想の仕事:将来どんな仕事をしたいか→仕事を選ぶ際のポイント
→リスト化した中で、何が一番大切か(メイン・タスク、結果)
 タスク・デザインの留意点
ステップをどう積んでいくか?
他の人が書いたものを共有して、語彙力が足りない・タスクについて興味がない学生をサポートするなど。
リストを教師が提示するか、学習者に出させるか。インフォメーションギャップを利用するかしないか。どのように情報を提示するか(書き言葉で、話し言葉で、音声で、視覚を通して)。供給した情報を利用しながら、異なるタスクを何回繰り返すか。インターアクションをどうするか。サポートをどうするか。成果をどうするのか(1つだけの答え?いくつかの可能性?)。どのような形で成果を提示するか。
 なぜタスクをするのかという話もきちんとする。媒介語は禁止にしていない。
 Jane Willis’s TBL(1996) 言語項目の焦点化は最後きちんと行う。学習者の間違えはフィードバックする。
 初級でも可能、みん日、会話のストーリー再生。ディクトグロスの手法。


CILI  ロックリー・トーマス先生(日本大学法学部
【理論編】
 インプットは教室内だけではない、教室外をどう利用するか→反転授業の可能性
 教室の中ではアクティブラーニングを行う
 「注目、要約、質問」
→この辺りは反転授業の考え方と同じ
 学習者中心型
 日本CLIL教育学会 J―CLIL Journal
 EUと日本の会状況の違いは考慮する
 4C(Content内容, Communication言語, Cognition思考, Community(Culture)協学)
 内容と学習と語学学習のバランスは1:1
 ハードとソフトがある。ハードは科目教育、ソフトは英語教育。
 評価はルーブリックをよく使う

【実践編】
 CLIL:歴史:国際的思考性を高める
 歴史的認識が変わることで、国際的認識が変わる
 CLILを反転授業させるとしたら教室外では:単語、知識、準備など
 全ての活動を評価するわけではない。振り返りは自分のためなので内容は評価せず提出を評価する。小テスト、学期の最後にまとめて評価する。ディスカッションは評価することはできない。発表をさせて評価する。試験も実施。

全員が聞きたい! TBLTとCLILって何が違うの?
CLILは必ず教科が必要
EUの中で政治的な視点からスタートし、教育理論は後から来た。
教科というと語学教師はできないんじゃないかと思うが、テーマと考えてもいい。
また、教科の専門家と協力するのも主流。
反転授業でするとしたら?
・TBLT=言語の習得
事前学習:文法学習、Listingなどの一部タスク
対面学習:タスク中心のアクティブな教室活動→対話型授業
・CLIL=言語と(教科)内容の習得
事前学習:語彙・キーワード・簡単な知識
対面学習:内容中心のアクティブな活動(TBLT)
→内容の学びの進化&教室におけるL1とL2の協働→多文化共生

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