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「期待値」からワクチンのリスクとベネフィットを考える

今日はデータだなんだは関係ない話です。

ワクチンがどんどん打たれていた時、推進側が言っていた言葉に「ベネフィットがリスクを上回る」がありました。

その論法について考察をしてみます。

ワクチンのベネフィット=コロナのリスク なので、この場合は

「コロナのリスク」と「ワクチンのリスク」、つまりリスク同士を比較し、リスクの低い方を選べばいいことになります。

「コロナのリスク」には「感染率」が関わってきます。これは確率なので、確率を考慮した平均値「期待値」の判断が役立ちます。


「期待値」→確率の見地から算定した平均値。一つの変量の各実現値とそれが起こる確率との積の総和。


簡単に言うと、「確率の掛け算」です。「確率」となにかを掛けて算出したものが「期待値」です。

例えば、袋の中にクジが10枚あります。そのうち300円もらえる当たりクジが3枚。あとの7枚は0円のはずれクジです。クジを引いたら袋に戻します。参加費は1回100円です。あなたは参加しますか?

このクジを引くかどうかの判断に期待値が役立ちます。期待値で言うと

0.3(30%)x300円=90円
0.7(70%)x0円=0円
合算:90円

この90円が「期待値」となります。1回引くごとに平均90円の獲得が期待できる、ということです。参加費が1回100円なので、クジを引くたびに差し引き10円損します。そのため、トータルではこのクジは引けば引くほど損となります。

このように、確率と何か(金額とか、点数とか)を掛け算することで、期待できる数値、つまり「期待値」を求めることができます。

前置きが長くなりましたが、この期待値を「コロナのリスク」と「ワクチンのリスク」で考えてみます。

まず「コロナのリスク」。先程も書きましたが、コロナは「感染率」が関わってきます。「感染率」の抽選を受けて、当たりを引いた人は「各症状(無症状とか中等症とか重症化とか)」のステージに進みます。「感染率」の抽選がはずれた人は、何も起きません。そしてこの感染率は約1%(この議論がされていた当時)。つまり「コロナのリスク」においては

0.01x【コロナのリスク量】

が期待値となります。

次に「ワクチンのリスク」ではどうなるでしょうか。ワクチンの場合、「感染率」のような言葉がないのでここでは「影響率」としますが、この影響率は「100%」です。なぜなら、ワクチンは注射器で直接注入するので、100%必ず体に入るからです。皆接種と同時に「副反応」のステージに確実に進みます。「副反応がなかった」「軽かった」などは「副反応」のステージに進んだ後の話であって、そのステージ自体に進む確率は例外なしの100%となります(プラセボとかのややこしい話は一旦抜き)。しかも、複数回接種するたびに100%が上乗せされます。つまり、

①1回目接種 1.00x【1回目ワクチンのリスク量】
②2回目接種 1.00x【2回目ワクチンのリスク量】
2回接種のリスク量=①+②

が期待値となります。

「ワクチンのリスクとベネフィット」を考える際、多くの人は頭の中で【コロナのリスク量】と【1,2回目ワクチンのリスク量】のみを比較していたかと思います。そして、「重症化するくらいなら、副反応は我慢しよう」と判断したと思います。これは、先程のクジの例えで言うなら「300円の当たりクジが入ってるなら、100円払ってクジを引いた方がよい」と考えるのと同じことです。

しかし、「期待値」での判断の場合、クジを引くのは損です。実際、引けば引くほど損していつか破産するでしょう。一方で胴元は儲かります。この「期待値」を巧みに調整して、儲かると錯覚させるのがだいたいのギャンブルの本質です。

そして、ワクチンの場合もコロナの「感染率」とワクチンの「影響率」も合わせて比較しなければいけません。これは

「1%」と「100%」

となります。その差は100倍。期待値計算に使用する「確率」の部分に、100倍の差があるということです。2回打ったら200倍です。

この状況で、コロナのリスク(ワクチンのベネフィット)が上回る条件は主に2つです。

①「コロナのリスク量」が「ワクチンのリスク量」の100倍以上あるケース。

コロナに罹ったときのリスク量が、ワクチンのリスク量の100倍以上危険であれば、確率を考慮してもワクチンのベネフィットが上回ります。しかし、「ワクチンのリスク量」は、中長期のリスクについては不明点が多いですが、数日の発熱や倦怠感、痛みなどの症状があることはもうわかっています。では「コロナのリスク量」はこの100倍以上あると言えるでしょうか?罹患したら高確率で半年くらい寝たきりになる、とかならまだわかりますが…。この判断はおまかせします。

では次のケースです。実はこのケースでは100倍の差を簡単に克服できます。それは

②「ワクチンのリスク量」がほぼ0のケース。

「ワクチンのリスク」の「期待値」の確率部分は100倍なんですが、「リスク量」が0なら、0に何を掛けても0なので、「ワクチンのリスク」の「期待値」は消失します。あるいは限りなくリスクが小さいケースでも、掛け算なので「ワクチンのリスク」の「期待値」は一気に小さくなります。

つまり、「コロナのリスク量」がそれほど高くない以上、②のケースを目指すほうが現実的ということになります。

事実、従来のワクチンはリスク量をできるだけ減らすべき、と言われていました。これは健康な人に打つから、といった理由もありますが、期待的にそうせざるを得ないという意味合いも含まれていたはずです。

リスク量をできるだけ減らすなら、中長期のリスクも見る必要があるので、10年単位の時間もかかります。しかし今回はそこをすっ飛ばしてリスク量があるまま使用した。当然期待値的には跳ね上がることになるので、期待値を意識しないよう「ベネフィットとリスクを比較して~」ということを言うことになったのだろうと推察します。これは先程のクジの例で言えば「300円当たるから、100円の参加費は安いよ」と誘っているのと同じことで、ペテンの詭弁だと僕は思います。

当時の僕は、「パチンコは負けるようにできてる」とか「宝くじを買うやつはバカ」とか「競馬は胴元が勝つ仕組みになっている」などなど言っていた人たちが、「ベネフィットとリスクを比較して~」と言われて疑問も持たず打っていたことになんとも不思議な気持ちになっていました。てっきり期待値的なギャンブルの本質がわかってるんだろうな、と思っていたのに「なんなんだこれは?」と首を傾げていました。(別に僕はギャンブル好きではありません、念のため)

ただ、コロナとワクチンの「リスク量」については、実質的な部分についても、考え方についても個人差があります。これが絶対のリスク量だという答えはありません。なので100倍以上リスク量があると思うなら打っても良いかとは思います。ただ、「ベネフィットとリスクを比較して~」論はカジノの胴元の誘い文句と同じではないか、というのは頭に入れておいてほしいです。

とはいえ、もうこの「ベネフィットとリスクを比較して~」というペテン論法も今は使われなくなって、今は「種類よりもスピード」とかいうキ●ガイの領域に突入したので、もう笑うしかないと思っています。

あとこれは余談ですが、上記の話は「ワクチンがコロナを完全に防ぐ」前提の話です。ワクチンの効果が限定的だった場合は、「接種してもコロナのリスクがある」ので上乗せ分が出てきてしまい、余計にワクチンが不利になりますので、そこは押さえておいてください。

※追記
上記では、「ワクチンベネフィットリスク論」が最盛期だったのが去年の話なので、感染率を1%として計算しています。現在は累計で言うと感染率は去年より高いですが、3回目を打てばワクチン側にも100%分さらに上乗せなので、結果として大した違いはないと考えていいと思います。