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2023年、投資家が見るべきDeFiトレンド


要旨

・中央集権取引所によるユーザー資金の不正利用が横行する最中、DeFiはクリプトにとってより大きな役割を果たした。今後、そこで得た信頼を土台に新たなDeFiのトレンドが生まれるだろう。
・2023年、新たなDeFiトレンドには、ブロックチェーンへの現実世界アセットの流入拡大、ノンカストディアルdAppsへの関心の高まり、デリバティブやオプションの発展、L2 RollupsやCosmosアップチェーンなどのDeFiスケーリングソリューションなどが挙げられる。
・弱気相場は、何が成功し何が失敗したかを明らかにし、良いプロジェクトと弱いプロジェクトを選別するのに最適な時であることが多く、投資家は次の強気相場に向けてより良いバリュエーションで確信を持って有望なトレンドに投資できるようになります。

クリプト業界は、NFT、GameFi、メタバース、そしてもちろんDecentralized Finance(DeFi)などの発展により、急速に拡大しています。本記事では、DeFiの定義と2023年のDeFiトレンドについてご紹介します。

DeFiとは?

分散型金融(DeFi)とは、ブロックチェーンを利用して、銀行や金融機関などの中央集権的な金融機関を必要とせずに金融取引を実現するフィンテック・ソリューションのことです。すべての取引はオープンで不変な台帳に記録されます。

スマホとインターネット接続があれば、KYCなしで暗号通貨の貸し借りやスワップができる点で、DeFiは利便性・統合性・透明性の向上をもたらしました。

また、DeFiプロトコルの成長により、多くの新しいクリプトプロジェクトが立ち上がりやすくなりました。需要も大幅に増え、2021年に117億8000万ドル規模だった業界は、2030年には2311億9000万ドルと、約20倍に成長するという予測もあります。 

2023年に観察すべきDeFiのトレンド

2022年以前にも多くのエキサイティングな出来事がありましたが、2023年も同じように、いやそれ以上にエキサイティングなことが起こると考えています。ここでは、注目すべきトレンドをいくつか紹介します。

1. DEXの復活

分散型アプリ(dApps)とは、通常、透明性、自律性、パーミッションレス、ノンカストディアル(ユーザーの資金を管理しないこと)などの特性を持つブロックチェーンの上に構築されたアプリです。DEXは、DeFiにおいて最も重要なdAppsであり、取引のほとんどがここで行われます。

これは、有KYCのカストディアン、つまりユーザーの代わりに資金を保有し管理するCEX(中央集権型取引所)とは対照的です。

残念ながら2022年、Sam Bankman Fried氏のFTXをはじめ、いくつかのCEXが閉鎖または経営難に陥りました。多くのユーザーは、こうした中央集権的なプラットフォームには透明性や管理力が欠けており、CEXで資金を失うことを恐れるようになってきています。

その結果、DEXが復活し、CEXから離れたユーザーにとっては自然な選択肢となりつつあるため、大きな成長の可能性を持っています。DEXはより複雑で、秘密鍵を自分で管理しなければならないため、一般ユーザー向けとは言い切れません。にもかかわらず、ユーザーは、資金を企業に渡すのではなく、完全にコントロールすることを選択し始めています。

2022年には、GMXのGLPトークンやGNSのDAI vaultsがカウンターパーティーの流動性として機能したり、Perp v2やRage TradeがUniswap v3の集中流動性メカニズムの上にレバレッジをかけて流動性と取引体験を改善するなど、興味深い流動性メカニズムが見られるようになりました。

Uniswapは今でもTVLでトップのDEXであり、UNIトークンの時価総額は2022年のETHよりもよく持ちこたえています。2023年4月にUniswap v3のライセンスが切れた後、Uniswap v4はさらにクールな機能を備えて登場する可能性があり、DEXスペースのターニングポイントとなる可能性があります。

出典:CoinGecko

2.分散型デリバティブとオプション

DEXの復活に伴い、ブロックチェーンデリバティブへの関心も高まっています。デリバティブは想定元本と出来高の観点で世界最大級の市場として知られており、CoinGecko上で確認できるCEXsのデリバティブ出来高は現在1兆ドル超に上ります。

出典:CoinGecko

デリバティブが人気である理由は、レバレッジにあります。デリバティブの例としては、無期限先物(パーペチュアル)やオプション取引などがあり、最も人気のある無期限先物DEXでは最大で50倍のレバレッジを提供しているものもあります。GMXの成長には目を見張るものがあり、手数料収益で既にAaveやCurveなどの老舗DeFiを抜いています。

出典:CryptoFees

ユーザーがCEXに警戒心を抱くようになると、この出来高の一部はオンチェーン・デリバティブDEXに移行する可能性があります。オンチェーンデリバティブの取引をより良くするための新機能が常に提供されているため、取引量及びユーザー数の増加というこのトレンドは今後も続く可能性があるでしょう。GMXなどの無期限先物はすでに普及していますが、オプション取引はまだ浸透しておらず、Panoptic OptionsやDopexなどのプロトコルは、ユーザーがオプション取引を行えるような斬新な方法を導入しています。

2023年には、"OpFi"("DeFi infrastructure powered by options "の略)と呼ばれる新しいナラティブの台頭により、オプションはより大きな普及を遂げる可能性があります。

3. RWA: ブロックチェーン上の実世界資産

実世界資産(RWA: Real World Assets)をブロックチェーン上に移行することで、現実世界では不可能または困難であった、多額の流動性を扱う様々なユースケースを解放することができるかもしれません。

ブロックチェーンは物事をよりオープンで流動的にする可能性を秘めているにもかかわらず、現物資産のトークン化は今のところあまり成功していません。その理由の一つは、現実世界の資産の大部分には、複雑ではあるものの、「十分」であり、長い間存在してきたレガシー市場が存在する点です。

カーボンオフセットは比較的新しいタイプの資産であり、このルールの例外と言えるかもしれません。カーボンに関するレガシーシステムは、変更できないほど強固に確立されているわけではないのです。実世界の資産をトークン化する最初の真の成功例は、カーボンオフセットをオンチェーン化するためのインフラ構築である可能性が高いと言えます。

さらに、MakerDAOのようなDeFiレンディング市場の大手プレイヤーは、米国債や社債に投資するプロポーザルを可決させ、従来の銀行と組んでRWAを担保にした融資を提供しています。現時点でMakerDAOは5億ドル以上の米国債を保有しており、収益の57%を占めています。

銀行や実業界とのパートナーシップは、DeFiに最も実用的なユースケースの一つをもたらします。それは、ユーザーがUSDCを実ビジネスに貸し出せるようにする分散型グローバルクレジットプロトコルのGoldfinchなどで、弱気市場を通して収益を伸ばし続け、約1億ドルの融資が行われています。担保不足で不良債権が起こりうるため一定のリスクはあるものの、クリプト外の実イールドを生み出しています。

出典:Dune Analytics

ビジネス界の多くは、すでにRWAを伝統的な機関とDeFi流動性を組み合わせる絶好のチャンスと見ているため、2023年にはこうした行為がより一般的になる可能性が高いでしょう。

Vitalik Buterin氏のブログでも、RWAに期待しており、「ステーブルコインで行われているロジックは、DAOが発行・管理する現実世界の資産に裏打ちされたステーブルコイン(例:DAI)など、他の現実世界資産の活用に適用することができる」と書かれています。

4. LSD: リキッド・ステーキング・デリバティブ

流動性といえば、2023年、イーサリアムのShanghaiアップグレードは、イーサリアムマージ後最大のイベントの一つで、ステークされたETHを引き出せるようにするものです。

Shanghaiアップグレードが完了する前は、ステークしたETHを流動化する方法がありません。そこでLidoは、ETHを手始めにLiquid Staking Derivatives(LSD)を普及させました。ユーザーはETHをLidoに預けてETHのステーク報酬を獲得し、ステークしたETHトークンを表すLiquidトークンとしてstETHを受け取ることができます。stETHは、DeFiで取引や貸し借り、流動性供給などに利用できます。

このLiquid Staking DerivativesトレンドはCosmosにも伝播し、ATOM、OSMO、その他Cosmos系人気PoSアセットにLiquid Stakingプロバイダーが複数現れました。

ステークETHは引き出しができないにもかかわらず、ステークETHの量は着実に増加しており、特にLidoでは以下のグラフからわかるように、その増加が止まりません。


出典:Dune Analytics

5. 成長を続けるCosmos

前述の通り、LSDの人気の高まりは、ネットワーク・セキュリティ維持及びガバナンス用途のPoSトークンが多いCosmosエコシステムでも非常に顕著です。2022年には、複数のLiquid Stakingプロバイダーが登場し、これらのステーキングされたアセットの流動性が向上し、それらを取り巻くDeFiアクティビティが増加しました。

しかしそれ以上に、DeFiが普及・拡大手段を模索し続ける中、Cosmosのアップチェーンが一つのソリューションとして成功し、dAppsとユーザーを引き寄せたことが証明されています。

Cosmosは、現在の弱気市場にもかかわらず、健全な数のアクティブユーザーを維持しています。例えば、OsmosisのようなDEXは毎月十数万人のアクティブユーザー(MAU)を抱えています。

出典:Map of Zones

特に有望視されているのが、dYdXが取り組んでいるCLOB(Central Limit Order Book)モデルの取引所です。今後、現物及びデリバティブ取引所がアップチェーンとして構築され、手数料や遅延削減の恩恵を受けると予想されます。アップチェーンの魅力は、Cosmos SDKによって、各DeFiプロトコルの要件に合わせたカスタマイズ可能な技術スタックを作成できることです。

これはシェアード(共有)セキュリティの一種で、新しいチェーンは独自のバリデータセットを設定する代わりに、既存のATOMバリデータを利用してチェーンを保護します。その代わり、ATOMバリデーターは新しいチェーンのステーク報酬も受け取ることができ、ATOMステークホルダーへの価値提供を増やすとともに、新しいアプリケーションは専用の実行環境とより良いユーザー体験の提供に集中できるようになります。

2023年に登場するインターチェーンアカウント(IA)は、CosmosのdAppsが互いに通信することを容易にし、dAppsのよりバランスのとれたエコシステムを作るもので、より多くのアップチェーンの起動と連携に役立つと期待されており、Cosmosがさらに大きく成長する可能性があります。全体として、Cosmosにとって興味深い1年になりそうです。

6. レイヤー2が引き続き人気を集める

アップチェーンに触れておいて、レイヤー2のRollupsを語らないということはできないでしょう。

L2 Rollupsは、ネットワークの活動が活発な時期にEthereumの高いガス代と処理速度の遅さを解決するために生まれました。当時のEtheruemは、200ドル以上のガス代がかかる取引の承認に数分を要したこともありました。

Rollupは、コンセンサスとデータ可用性をL1であるイーサリアムが提供する傍ら、取引の実行と順序付けを担うするレイヤーです。OptimismのOPトークンのローンチは、L2エコシステム全体でTVLとDeFiの活動の増加に火をつけました。そして今では現在Arbitrumが台頭しTVLをリードしています。

最近ではイーサリアムのガス代が落ち着き始めてていますが、一般的にはまだほとんどのDeFi取引で数ドルかかっており、L2の数セントと比較すると違いは大きなものです。

また、Ethereumのガス高騰時に栄えた他のEVM L1チェーンに存在する他の資本がL2に移行し続けていることも、2023年にL2エコシステムの持続的成長が予想できる理由の一つです。

出典:CryptoFees

さらに今注目されているのが、zkEVMと呼ばれるEVM(Ethereum Virtual Machine)と互換性を持ったzk RollupsであるPolygon zkEVMやzkSync、StarkNet、Scrollなどです。どれもまだテスト/ベータ段階で技術的には未成熟ですが、いくつか大手DeFiは既にこれらチェーンへの展開を模索・決定しています。

結論

DeFiは、金融技術史における今日最もエキサイティングな進歩の1つであり、優れたセキュリティ、透明性、データの完全性、およびアクセス性を備えたオルタナティブとなる可能性を秘めています。

ここ数年間はDeFiの最初のサイクルと見なすことができ、インターネットが開花するのに時間がかかり、マスアダプションを達成する前に流行とみなされたように、DeFiは、それが想定される変革的技術になる機会を持つ前に、革新と失敗のサイクルを何回か要すると予想されます。 

今回の弱気相場は、DeFiのブームが始まったときのような華やかさや誇大広告をできるだけ排除し、どのようなトレンドが残るかを観察する絶好の機会であるといえます。弱気市場における辛抱強い観察・研究は、この業界に真剣に取り組み、今後何年も発展し続けると信じている長期的なDeFi投資家により深く明確な洞察を与えるでしょう。

CoinGeckoは様々なトークンとトレンドを研究できるデータ集約プラットフォームとして、今後も変わらずアップデートを続けていきます。

原文執筆者:CJ(@fishmarketacad)


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