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スケッチ考

本稿は2018年頃の資料を元に昨年7月作成のブログを転載したものです。
設計のデジタル化が加速する中、スケッチという行為がどのようになって行くのかを呟いたものです。


1.設計とはこんな風に教わって来た

普段の設計作業全てではないがコンペや提案型企画物件などの設計はイメージを具体化することを中心に進めることになる。
先ず多くの検討案を描き、スタディを重ね変更を繰り返すことで設計は始まる。
考えながら描き、描くことによって考える。描くことを止めると思考は止まる。描いたものの痕跡は思考の痕跡でもある。
アイデアやヒント思い付き偶然に出来た形などを待ちながら思考とイメージ描きを続ける。しかし、現実は実務に追われる。発注者の意向や利益にも沿わねばならない。材料に関する知識や施工条件も考慮しないと具現化しない。
その他都計法や建基法はじめ種々の関連法、条例、指導要綱など制約が多い。この環境の中で作業時間と思考と判断する為の時間配分、そして節目節目決定までのプロセスを踏む。それを繰り返す。根を詰めた作業と自由に発想する時間、一瞬に思い巡らす決断の瞬間。多くのクリエイティブな作業と同じような時間リズムによって建築は生み出されていく。この時間的リズムの中で簡単に設計者の独りよがりだけで建築は作らせてもらえない。
前述のように何よりも発注者の意向や利益を最大限確保しなければ案は頓挫する。設計者は発注者や施工者、建築行政マンなどによって鍛えられ育つ。彼等が共感、納得しない限り設計は前に進まない。そしてそれは設計者自身の描くアイデアや閃きと葛藤し続けることになる。当初描いた生ぬるい思考を何回も重ねながら、節々に、共有化されることで少しずつ確固たる思考に昇華されていく。
それに伴う成果物も独りよがりの思い付きの形ではなく現実や社会に受け入れられる理論武装した感性の塊に変わって行く。思考も描く形も途中変わって行くが当初から変わらぬ部分と変わってもいい部分が柔軟な変更を繰り返すことで分かってくる。

2.さて「描く」とは

ここで「描く」とは、以前は手書きスケッチや模型であった。今は何か?
パソコン上にマウスとキーボードでモニター上に表現することか。
思考とイメージの具体化の形作りは非連続ではなく連続した一体的な反応を繰り返していくことが理想である。設計のデジタル化が加速している。昔ながらの手書きスケッチとデジタルの違いは何か。

3.手書きスケッチとデジタルツールの比較

手書きスケッチの利点
◇思考との連続性
直感的なアイデアの捉えやすさ、自由な発想、手の動きと思考の連続生が可能。手で線を引いたり形を描いたりすることで、直感的にアイデアを形にすることができる。また、手の動きによって思考が連続的に流れることで、スムーズな形の追求が可能となる。手書きスケッチのアプローチは、創造的な発想や概念の探求に適しているとされている。デジタルツールでは再現しにくい。
◇個性の伝達性
手の動きや筆圧の表現、質感や雰囲気の伝え方など、個性的な感性を手書きスケッチは表現が可能。
◇曖昧さの表現が可能
初期の段階ではきちんとした図面もない。提示するイメージ案は未だ検討途中の曖昧さを含んでいることを暗に伝えることも重要なことであり、それが可能である。
手書きスケッチの欠点
◇修正とデータ共有の難しさ
手書きスケッチには修正の難しさやデータ共有の制約がある。手書きのメモやスケッチは、修正や変更が困難であるため、紙を交換するか上書きする必要がある。また、手書きのメモやスケッチはデジタルデータではないため、簡単に他の関係者と共有することができない。
デジタルツールの利点
◇柔軟性と修正の容易さ
デジタルツールは、形状や素材を簡単に変更することができる。これにより、アイデアを追求しながら形の変遷をスムーズに行うことができる。修正や変更は数クリックで行えるため、手書きスケッチに比べて効率的。
◇可視化とデータ共有
デジタルツールを使用すると、細部まで正確な形状や寸法を表現することができ3Dモデリングやレンダリングなどの技術を活用して、アイデアをリアルな形で可視化することができる。これにより、他の関係者や顧客との意思疎通がスムーズになる。また、デジタルデータは簡単に共有できるため、リモートでのコラボレーションも容易。他の設計ツールやシステムとの連携がしやすい。
◇分析とシミュレーション
デジタルツールには、建築設計の分析やシミュレーションを行う機能が組み込まれている(ソリッドモデル)。空間環境シミュレーションなどを行い、設計の品質や性能を評価することができる。これにより、手戻りの少ないより効率的な設計を追求することが可能。(図:6参照)
◇コラボレーションとフィードバツク
デジタルツールを使用すると、関係者や顧客とのコラボレーションが容易になる。3Dモデルやレンダリングを通じて、アイデアや形状をより高い理解度で共有し、フィードバックを得ることができる。これにより、自分のイメージに近く且つ関係者の要望に応える建築を追求することが可能。
デジタルツールの欠点
◇思考連続性の途切れ
ツール操作に手の動きが必要なため、習熟度が低いと集中力がツール操作に向かいがちで思考の連続性が途切れる可能性が高い。
自分でやるには習熟度を高めることは必須。協働者との分業化も一策。
◇図面化可能な要素決定が必要 
手書きや模型、粘土細工のような直感的な形作りは苦手で、ある程度の図面化可能な要素決定が前提として必要となる。その為何もない時点からのイメージの具現化よりも元になるイメージがある程度固まってから取り組むことがツールによっては必要となる。曖昧さを残した表現よりも正確さを表現する方が得意なツールである。
デジタルツールに入る前段階の検討を何でするかが重要なポイントとなる。

4.BIMの導入は何を変えるか

BIM導入は設計工程のフロントローディング化が可能と謳っている。これは設計着手から竣工迄の作業量を出来るだけ前半に集約し早い段階で技術的検証、環境シュミレーション、コスト検証、3Dモデルなどのプレゼで関係者の高い理解度、共有化が可能となり後々手戻りの少ない高品質な建築設計が可能であると謳っている。(図:1)
しかし、私はAUTODESK社もこのフロントローディングの中に私が長く教わって来た初期『重要な前段階』の直感的アイデアを大切にする思考と形作り工程についてBIMでは十分役目を果たせないことを自認していると思っている。思考と手書きスケッチや模型による形作りの作業手法について、より近いITツールとしてAUTODESK社は自社で載せている記事によると直感的 3DソフトとしてSketchUpを視野に入れており、同じようなformltというソフト提供を用意しているとある。私が知った2018年頃当時はiPad専用ソフトで操作感はSketchUpを非常に意識したプッシュ&プルで面を操作するものであった。
モデル形式としてSketchUpのようなサーフェイスモデルではなく BIM同様いろいろな属性を持ったソリッドモデルであり、環境シュミレーションなども出来る点がSketchUpと大きく異なる。当然fbrmltからREVITへ連携が可能であり、そのことにより、直感的スケッチ段階を重視する初期も含めたフロントローディングが可能という考え方を標榜していると思われる。さて翻って足元を見ると、多くの設計者はこの『車要な前段階』の設計期間、どのような方法で思考とイメージの一体化をしているのであろう。

5.設計体のいろいろ

いろいろな設計体があるが、デザインはじめソフト条件と法規、コストなどハード条件重視或いは偏り方は夫々異なる。それをザクッとしたパターンで分けて考えてみた。

■ Aタイプ(図:2)
イメージを具体化する形は必ずしも深い思考と共に固められるものでもない。ちょっとした思いつき程度は念頭に置きながら顧客からの要求ワード、種々の法規、コスト等のハード条件整理をガンガン詰めて一つの解を求めることで十分という設計体。設計者も時間に追われる中、深追いせず必要以上に振り返えらずに発注者、関係者に結果を見せ評価を待つ。指摘が出てきたら次のステップとしてその回答を探るべく修正案又は別案となるよう手を加える。これを繰り返し最終案を作る。工程全般でソフト条件整理作業は少なくハード条件整理作業割り当てが圧倒的に多く最後まで変わらない。
■ Bタイプ(図:3)
Aタイプで一通り済む前後に一度振り返る。成果物である形を見ながらデザイン主旨や周囲環境との擦り合わせ方なども考える。即ち後付けの思考を加える。変えられないものは残しながらその思考に基づいて形の修正を試みる。そして初回案が出来、発注者、関係者の評価を聞く。指摘に対し自分の思考との差異を考慮しながら新しい解について形だけ変えたらいいのか思考迄修正が必要なのか思考と形の両方の精査を試みる。ここがAタイプと異なる点である。この繰り返しにより形が収斂していく過程で、変わらない、変えられない思考部分と形部分が分かって来る。成果物に対する揺るぎない自信となる。
ソフト条件整理は工程が進むにつれ作業割り当てが高くなって行く多くの設計体の実務に近い標準的な設計工程である。
■ Cタイプ(図:4)
Bタイプが初回の成果物を出す前ひた走りに詰めて来た段階で振り返った行為を最初から思考とイメージ作りを繰り返し初回成果物に辿り着く設計体。
現実には限られた時間内で顧客要望、ハード与件を消化しながら思考も模索しなければならないが、ハードな与件をきちんとクリアしていないと、先ず誰からも評価されない。そうなると少なくても重要なハード与件は初期の段階から検証を終えておく必要がある。
ソフト条件整理の為の作業比率が早い段階から高く多くの時間を思考と形の凌ぎ合いの繰り返しに割かなければならない。初期段階でハード条件も押さえ、ソフト条件の思考と形の凌ぎ合い時間も多く確保するには残業が当たり前となる。そんな時代もあったが今は安易に出来ないであろう。限られた時間が濃密な設計作業を生み集中とスピードを高め、チームワークを醸成し、設計体としての創造のモチベーションを高める。それは設計体として理想的な形の一つかもしれない。

6.設計体各タイプの作業模式図

設計作業中の思考とイメージの具体化の繰り返しなどの作業をソフト条件の整理・組立てとし法規との整合性や事業性、コストの検証などの作業をハード条件の整理・組立てとする模式図で作業時間害|り当ての変化を比較してみる。
縦軸は作業「量」ではなくソフトとハード作業量の「比率」である。
更に図:1のAUTODESK社の従来プロセス及びフロントローディング後の作業量変化ラインを重ねている。

図の最下段に各DRの位置付け(案)を書いてみた。
DR1,2は既に出来上がった図面資料について過去の経験などを元にフィードバックする為のレビューである。どちらかと言うと上から目線の指摘による軌道修正についての示唆となる。 DR0は初期段階できちんとした図面もない段階で将来の全貌を見渡して自由な発想で展望を語るレビューでありたい。立場の上下もなくプロジェクトに対するあるべき、ありたい姿をブレーストーミングする。ワークショップによる設計プロセスもこの形に近いものと思われる。『重要な前段階』で手を動かす前、思考の閃き、アイデアを整理していくために使いたい。

7.各タイプにBIMを導入すると

各タイプの設計体がBIM導入でフロントローディング化を図ろうとすると設計工程の前段での作業量は飛躍的に多くなる。
BIMによるフロントローディングには3Dモデルやレンダリングとの連携というソフト条件の整理もあるが、設計図そのものの作図を含め圧倒的にハード条件の整理を前倒しでやることになる。それを念頭に各タイプの考察をトライしてみた。
■ Aタイプ
元々ソフト系の作業に多くの時間を割いていないので、今迄やって来たハード系作業量が前半にスライドし単純に増えることになる。初期のフィードフォワード的な先を見越した課題抽出も割愛するであろうしBIMを導入したといえ3Dモデルを駆使したプレゼに多くの時間を割くということもないと思う。 BIMの導入は設計工程全般を通した情報の一元化、3Dモデルを駆使した理解度の増進と整合性の確認の為活用もするが何よりも設計作図ツール視(3D_CAD)するであろう。設計の『重要な前段階』という配慮はないであろう。
■ Cタイプ
Bタイプの前にAタイプと真逆のCタイプを先にみてみる。
設計初期段階から思考と形作り中心にソフト系作業の手順を踏み作業的にもフィードフォワード的テーマを抽出しながら従来のスケッチ作業を踏んだうえでデジタルツールを駆使するフ口ントローディング化を図ろうとするはずである。特に設計前半は元々高い比率のソフト系作業にハード系作業も増える。果たしてフロントローディング化が可能なのであろうか。或いは取り組もうとするのであろうか。フロントローディング化しなくても全体を通してプレゼカも高く手戻りも少ない良質な建築を生み出すシステムが出来ているのではないか。小規模の設計体は取込まないかアウトソーシングして設計協働化を図る。マンパワーのある設計体は外注又は内製による分業化で就業時間の平均化を図りながらも思考と形の研鑽も繰り返し且つフロントローディング化が可能なのかもしれない。
このタイプもBIM導入はAタイプと同じく設計図作成と設計工程全般を通した情報の一元化、3Dモデルを駆使した理解度の増進と整合性の確認活用に重きを置き、プレゼカのアップはこのBIMに頼るまでもないであろう。『重要な前段階』は狙うデザインにもよるがSketchUpや Formltのような直感的デジタルツールまで採用するのではなく伝統的手書きスケッチや模型中心に進めるように思える。
■ Bタイプ
最も多いと推察しているBタイプの設計体はスタート時はAタイプに類似し、暫くしてCタイプ程ソフト検討に時間を割かないもののハード条件こなしながら徐々にソフト系作業に割く時間比率を高めて行く。このタイプの設計体に期待したいのはフロントローディング化という流れを BIMというツールによるものだけでなく設計作業全貌を見渡したフィードフォワード的テーマ前倒しや『重要な前半』段階にBIMに連携するイメージの具体化方法をデジタルツールで行うなども含めてフロントローディング化が理想である。いきなりBIMのようなデジタルツールで進めようとするとツールの制約や操作に集中することで、アイデアの自由な発想や形の追求に制限が生じることは大いに予想される。
いずれにしてもこのタイプの設計体もBIMを取込んだフロントローディング化は前半のマンパワー集約が必要になる。内製又は外部との協働を前提に分業化で業務量を平均化しながら進める方策を探ることになると思われる。
BIMの活用はA、Cタイプと同じく設計図作成と設計工程全般を通した情報の一元化、3Dモデルを駆使した理解度の増進と整合性の確認とともに、導入をきっかけに3Dモデルを駆使したプレゼカのアップも図りたい。
重複するが、『重要な前段』取り組みを是非併せて考えて行きたい設計体である。
■ まとめてみると
Aタイプのような設計体は本質は別として作業面だけを考えるとフロントローディング化を取組み易いであろう。
BとCタイプは前半のソフト及びハード条件整理作業量の増大解消の為分業化は必要になると予想される。BタイプはCタイプと同じくBIMに繋ぐ前の自由な発想でイメージ検討も含めたソフ卜系作業を今まで以上に前倒しで行うことをフロントローディング化の中に含めると大きな効能が望めるように思える。
総じてBIMを導入するにしても『重要な前段階』での初期イメージの具体化は手書きスケッチを活用するのが効果的かもしれない。或いは直感的作業という意味で手書きスケッチ程ではないが中間的なツールSketchUpやFormltの活用は次のデジタルツールへの橋渡しという意味でも直感的手書きと変更に柔軟なデジタルツールの利点を活かすクリエイティビティと効率性を両立させる現代的な解決方法に思える。
AUTODESK社のREVITにはマスデザインなどボリューム企画機能もあるがやはりCADぽい操作感のように感じた。

8.スケッチいろいろ

以前手書きスケッチの見直し、それに代わるデジタルツールを関係者と議論していた頃の資料である。初期のイメージスケッチ、設計途中のスケッチにおいてスケッチの薦めとSketchUpの位置付けをまとめてものである。

■サーフェスモデルとソリッドモデル
サーフェスモデルのSketchUpとソリッドモデルのBIM(REVIT)]こついて比較した資料である。

9.参考資料 

•Formltについて ・フィードフォワードについて

Formltについて
出典:Autodeskコンシェルジュセンター
無料ソフト「Autodesk FormltJで建築3Dモデリング 

パース作成などに用いる無料の建築3Dソフトといえば、SketchUp (無償版はSketch Up Make)を思い浮かべる方が多いと思います。SketchUpは、建築やインテリアの分野で使用されている3Dモデリングソフトで、操作性に優れていることからプロはもちろんのことモデリングが初めてのユーザーにとっても利用しやすいソフトです。 
実はオートデスクからも、このSketchUpによく似た3Dソフトが提供されており、Web版は無償で利用可能となっています。
オートデスクが提供する無料の建築3Dモデリングソフト
オートデスクが提供する建築3Dモデリングソフト「Autodesk Formlt」は、コンセプト設計段階に利用できる直感的な3Dスケッチツールです。有償版以外に、無償で利用できるFormlt Webアプリが用意されています。
Formltの基本操作を動画で見てみよう
Formltでは、立方体や円柱などの立体を伸ばしたり、縮めたり、つないだり、穴を開けたりしながら徐々に複雑な形に仕上げていきます。その手順や操作性は、まるで SketchUpのようです。
Formlt Webアプリの使い方
無償で提供されているFormit Webアプリでは、インターネット環境さえあればWebブラウザーで利用できます。早速、3Dモデリングを試してみましょう(Webブラウザーは、 ChromeまたはFirefoxをご利用ください)。

Formlt Webアプリでモデリングをしてみよう
まずは、簡単な操作から慣れてみましょう。内観パースを作成するチュートリアルを用意しましたので、ダウンロードしてご利用ください(2021年9月時点のFormit Webアプリ環境で作成)。
Formltの動作環境と学び方
Formltの動作環境と学習リソースについては、メーカーサイトを参照ください。英語表記のコンテンツもありますので、Chromeの 翻訳ツールなどをご活用ください。
httos://www.cadiaDan.com/soecial/autodesk 一 concierge/useful/article/211026一01 /

フィードフォワードについて

フィードフォワードとは?
新たな人材育成方法のひとつであるフィードフォワードは、その意味や注目されている背景、フィードバックとの違いを知ることで、理解を深めることができます。
フィードフォワードの意味とは
フィードフォワードとは、未来完了形の自己変革を目的としたアイデアを周囲の人間から集める、人材育成の手法を指す人事用語です。人は「知的学習において、フィードバックのような意見の収集を本能的に認めたがらない」とされており、フィードバックに代わる新たな人材育成方法としても注目されています。フィードフォワードは、結果から軌道修正を行なうフィードバックと異なり、解決策に焦点を当てた未来を見据えたアドバイスを重視しています。そのため、部下やチームメンバーへの批判的なアドバイスの抑制、前向きな姿勢•自主性の育成および訓練に効果的といわれています。また、助け合いの精神で、チーム全体で取り組まれることから、組織のコミュニケーションの円滑化や結束力の強化、客観性の担保にも効果的です。コーチングや業務のワークフローとも併用しやすく、現場の人材育成力の強化にも効果が期待できます。
フィードフォワードが注目されている理由
フィードフォワードが注目される理由には、「組織力強化に向けた自発性の高い社員の育成」が理由と考えられます。経済のグローバル化に伴い、日本企業の多くが全体最適が進む中、現場のチームワークは組織力の向上に欠かせません。そのため、チームメンバーや部下自身が「自ら考え、行動する」自発性の高い人材育成が急務といわれています。しかし、自己の成長のために活用されていたフィードバック(360度評価)は、評価対象となる人の「負の感情」を生みやすく、自由裁量を阻害してしまうデメリットが生じます。
そのため、組織力を向上させる上では、社員の自発性を阻害してしまうフィードバックよりも、メンバーひとり一人の意識改革と自発性の向上が期待できるフィードフォワードに注目が集まっていると考えられます。

フィードバックとの違い
フィードバックとは、社員の自己成長を目的とし、過去や現状を見直し、原因を究明することで、更なる成長や課題の解決を目指す人材育成方法です。目標設定や動機付け、コーチングなどと併用されることが多く、評価対象者の上司、同僚、さらには取引先企業や提携企業などの第三者(協力者)の間で行なわれるのが一般的です。フィードフォワードは過去や現在ではなく、 「未来に目を向けて、自己成長を目指した建設的なアイデア出しをする」という特徴があります。そのため、将来の自己の変化を予測しながら、方法・軌道の修正が可能です。
また、着眼点にも違いがみられます。フィードバックでは、過去・現在の問題や欠点、誤りなどに注目し、ダメ出しや指摘を中心とした内容に偏りがちです。しかし、フィードフォワードは解決策自体に焦点が当てられるため、内容も解決を目的とした、前向きなアイデアが中心となります。さらに、フィードバックは評価対象者よりも優位な立ち場にいる人間が行ない、主観的な評価が行なわれる傾向が強いとも指摘されています。一方で、フィードフォワードは、上下関係に関わらず、職場の仲間(協力者)として、助け合う(支え合う)ことを前提としているため、批判的なアドバイスになりにくい傾向がみられます。このように、フィードバツクとフィードフォワードではプロセスや着目点、評価に対する考え方に明確な違いがあると考えられます。




本稿は2018年頃の資料を元に昨年7月作成のブログを転載したものである。
2022年春から夏にかけ画像生成AIが次々と公開され、あっという間に設計のイメージ可視化において新しい可能性が示唆されて来ている。
本稿で課題視していた設計の『重要な前段階』でのアイデア出し、インスピレーション取得、そしてイメージ固めの手法もより幅広くなりそうである。
2024年5月、手書きや2D_CADの達人に向けて、 AIが描く新たな可能性を記事にしたのは、この 『スケッチ考』 の続編の位置付けという思いであった。
▼手書きや2D CADの達人へ/ AIが描く新たな可能性
https://note.com/preview/n2b8042e40d94?prev_access_key=daa5305aafd686fdc09d2e267ab81540

2024年5月


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