岡澤由佳の自己紹介

こんにちは。岡澤由佳です。
劇団コギトは2021年3月に行った公演*1 を最後に卒業しているので、OG2年です。

近影(チラシの写真撮影後、散歩しに行きました)

自己紹介をnoteですることになり、何を書こうかとっても迷ってしまいました。これはその末の一記事です。

ある通過点の話をします。

演劇などの創作に携わり始めて10年以上になります。中学で演劇部に入りました。高校でも演劇部を続け、大学受験のため1年間は創作をお休みして。
忘れもしない、大学受験の翌日。東京で第一志望の大学の試験を受けて、地元に戻ってきた私はすっかり気が抜けていました*2。 なんならこの日に観劇の予定を入れているくらいです。通っていた高校であっせんがあり、おたよりを受け取った時から楽しみにしていたのでした*3。

『K.テンペスト』という劇です。

高校へ行く時と同じように自転車をかっ飛ばして劇場*4 まで行きますが、入り口はいつもの正面玄関ではありませんでした。脇の小道を劇場に沿って歩くと見えてくる搬入口がこの劇の入り口でした。いつも通れないところから入れるなんて。すでにワクワクしています。

建物内に入ると、特設会場と聞いていた通り大ホール裏のスペースに舞台であり客席である場所が設けられていました。階段上にきれいに整列した2階席と舞台面と地続きでさまざまな種類の椅子が置かれた1階席とがあり、ぐるっと囲むように配置されています。観客は自由に席を選ぶことができました。私は後者、舞台と地続きの一席に座りました。

開演までの時間、自分の席から周りを眺めていました。近くに大きな船の紙模型があったり、1階席のいくつかの座面に分厚い本が置かれていたり。そうやっていると、ときたま出演者が隣にやってきて話しかけられたりもしました。ここでは舞台上と客席の境界線がないんだと気づきます。

だんだん観客も座り終え、劇が始まるかという頃、分厚い本が置かれた席に次第に出演者が座り始めました。そうか、そのために置かれていたのか。本当に観客のすぐ隣に出演者がいて、問いかけ交えた語りからゆっくりと劇へと向かっていきました。

テンペストでありテンペストではない、というのがこの劇にしっくりくる説明なのかもしれません。シェイクスピアが書いたテンペストを軸として描く一方で出演者本人の語りであろう挿入がいくつもありました。それに、歌うし、演奏するし、大人が大人を肩車するし。

一番印象に残っているのは声の重なりとふわふわ浮かぶ丸い光によって精霊の存在を見たことです。舞台と客席も、劇中の人物と出演者も、地続きになっていて、そのせいか、精霊という普段目にすることができないものも今目にしているものがそうだと信じることができていたのでした。言葉にすると胡散臭いのですが、その時はたしかにそう体感したのです。

観終えた帰り道、ああこれから先も演劇をやりたいなぁと思ったのを覚えています。なんでもできるんだ*5 とごく自然に感じたりしたからです。

家に帰ってからも(そして今も)言葉にするのは難しかったけど、思い出してはふと考えました。その度、この劇のことを考えている時間すら劇と地続きで存在していることを感じていました。

たしかにこの劇は私にとって通過点で、でもその一方で尾を引いて、ある種通過できずにもいる。ここまで思い返して記してみてそう気づきました。
今回の『通り過ぎてゆくものたちよ』という劇は観客や私のようなつくる過程に携わった人たちにとってどんな通過点になるんだろう。通り過ぎてからしかわからないことだからこそ、なんだかワクワクしてしまいます。

ここまで読んでくださってありがとうございます。ぜひこの劇も見届けてもらえたらと思います。それでは。

*1 劇団コギト2020年度卒業公演『ほらまたね。』
*2 前期試験を終えて燃え尽きてしまって、後期試験の小論文対策を1ミリもやりませんでした。
*3 おそらくですが、客席の様子としてはあっせんのおたよりを見て、喜んで行ったの私くらいでは?という雰囲気でした。
*4 高校のそばに劇場があったので、観劇する予定がなくてもふらっと寄ったりしていました。入り口から入って左手にチケットカウンターがあり、その周辺がチラシ置き場になっていたので、気になるチラシや劇場の広報誌を収集していたのでした。
*5 中学高校と演劇の傍ら合唱をやってもいました。この劇を観た後、演劇の中で合唱もできるだろうなと思ったりしていました。

▼『K.テンペスト』のことが少しわかる
トレーラー:https://m.youtube.com/watch?v=cKFvTl7HbzU
広報誌の特集ページ:https://www.mpac.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/特集『K.テンペスト2017』.pdf


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