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立花龍(Burgundy、或る感覚)にとっての"遊び場"

はじめに

10月6日(日)に新宿NINESPICES/新宿SACT!/新宿SUNFACE/HILLVALLEY STUDIOの新宿4会場で開催されるBurgundy主催のサーキットイベント『BANAFES2019』。或る感覚の復活やこのイベントへ賭ける想いを立花龍さん(Burgundy、或る感覚)に伺ってきた。

インタビュー・テキスト・撮影:高橋響

インタビュー

金だけが利益じゃないと思っているからね。

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-『BANAFES2019』のテーマはなんですか?

立花龍:去年とかもそうなんだけど、『BANAFES』のやりたいことを簡単に言うと”ザコの逆襲”なんだよね。バンドには失礼になるかも知れないけど自分も含めて"ザコの逆襲"だね。Burgundyを始めてから、或る感覚の時は全く繋がりのなかったインディーズシーンのバンドと接する機会が増えてきて”カッコ良いけど評価されていないバンド”が多い気がして…そういうバンドにとって身の丈に合った無理のないキャパシティの会場を用意したつもり。”カッコ良いけど評価されていないバンド”がライブハウスパンパンの状態でマジックを起こす瞬間が見たい。新宿LOFTを会場に入れていないのはそういう理由があってだし、小規模サーキットだと割とどの時間、どの会場もお客さん一杯になるのは強みだと思う。だから小規模に拘っているかな。

-小規模の良さを活かすために新宿SUNFACEやHILLVALLEY STUDIOの様な小さな規模の会場を使っているんですね。

立花龍:敢えて狙って小さい会場を使ってる。勿論キャパに合わないネクライトーキーみたいなバンドもいるけど(笑)。「このバンド出るのかよ」みたいなバンドを今年も1、2組呼んでる。

-ネクライトーキーはビックリしました。それと同じくらい千葉のtricoにもビックリしました。

立花龍:tricoはカナダの洞窟にいるミュウツー※1みたいなバンドだから(笑)。世界レベルのバンド。

-或る感覚に始まり"衝撃的"なバンドが多く出演しますね。

立花龍:そうだね。あとはNo Buses、Bearwear、レイラとか新宿NINESPICESで遊びを作る上であまり関わらなかったバンドも呼んでる。若いシーンの中心にいつつもその世代特有のどこか鬱屈としたオーラに魅力を感じた。

-ジャンル、世代のミックス感は『BANAFES』の魅力のひとつですね。

立花龍:世代的なところで言うと午前中と午後で年齢層は意識したかもしれない。午前中に若いバンドを固めた。多分、wash?ぐらいからお客さんもバンドも年齢層は高くなっていくかな。最初は若いお客さんで一杯で日が暮れるに連れて大人のお客さんが増えてくる画が見られたら面白いなと思う。色が変わるフェスってそうそうないから。最初から最後までぶっ通しで見て欲しいとは全く思っていないから勝手に来て勝手に帰って欲しいし、疲れたけどまだ見たいっていう人は岩盤浴に行って休んで欲しい(笑)。

-「小規模で...」という話がありましたがその他に別のサーキットイベントと『BANAFES』の違う部分ってなんですか?

立花龍:収支を完全に度外視している事。だから潰れる可能性はある(笑)。そうなったら漁師になっても良いかなって本気で思ってる。2年くらい海の上で生活して帰ってきてそれも面白いかなと思う。でもそうなったらBurgundyのメンバーも一緒に船に乗ってもらうけど(笑)。

-(笑)。失敗したらヤバい額になるんですか?

立花龍:うん。去年はソールドしたけど俺の手元に残ったお金、1万円くらいだったしね(笑)。でも、金だけが利益じゃないと思ってるからね。あと『BANAFES』は内面を曝け出しているし、俺が思う本当に良い音楽を集めているし、それが分かるお客さんも多いっていう信頼感はある。だからどの会場もずっと埋まっている状態になるっていう部分で差別化を図れているかな。

-龍さんの正直な部分が皆にすごくダイレクトに伝わっていて、人間味のあるイベントだと思います。あと、去年の『BANAFES』に行った時、どの会場にも人が沢山だった記憶があります。「俺が思う本当に良い音楽」とありましたが龍さんの中で呼ぶバンドの基準ってありますか?

立花龍:単純に「このバンド応援したいな...」ってバンドを呼んだ。自分が好きなものは全部守りたいんだけど、それは綺麗事だから約50組弱自分の手の届く範囲で売れてくれたら俺が嬉しいバンドをブッキングをした。かなり厳選したけど(笑)。

-僕たちもそうでしたが『NOT FOR SALE※2』など『BANAFES』に関連するイベントを通して龍さんに出会えた事はとてもプラスになります...

立花龍:『NOT FOR SALE』とかアンプラグドライブを通して作り続けてきた遊び場の集大成が『BANAFES』という遊び場かな。

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-今後の『BANAFES』についての展望はありますか?

立花龍:今回の『BANAFES』で新宿小規模サーキットで出来ることは完結かなと思っている。だからこそ或る感覚も仲間に入れて最後に花火打ち上げるか...という気持ち。

-今回の『BANAFES』は色々な意味で集大成という感じなんですね。今後はなにか別のイベントを企画したりするんですか?

立花龍:4月7日のBurgundy企画で霧の国くらいスモークを焚いて、照明を暗くするっていう特殊な演出でライブをしたんだけど、そういう音楽の中の「おや...?」っていうカルチャーを見つけたい。漠然とはしているんだけど、やってみたいのは洞窟で生音演奏をするイベント。洞窟の自然な反響だけを使ったステージと野外の爆音で演奏するステージの相反する2ステージが存在する野外フェスをやりたい。今、全国のレンタルできる洞窟を探している。

-かなり大規模な構想ですね。

立花龍:中に飽きたっていうのは結構あって、音に肯定されている状況っていうのを生音で感じたから、自然のリバーブを使える環境でやりたいなと思う。

-龍さんのやる事って斬新で新しい事が多いイメージなんですけど、あまりお金にはならなそうだなと...

立花龍:お金にならない事が殆どかも知れないね。斬新というよりものすごく古い事をしていると思うんだけど、それをわざわざやろうとしている人はあまりいないのかもしれないね。イベントを企画する人はまずブッキングの内容でなんとなく売り上げを先に確保していると思うんだけど、俺は行き当たりばったりの"なんとかなるでしょ精神"でやっていて、いつか痛い目見ると思うんだけどそれをずっと続けてきたから、失敗しても死ななければ大丈夫かなと思ってやっている。

-その精神性のおかげで龍さんの周りには音楽好きが集まっている様な気がしますし、何より説得力がありますよね。

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-或る感覚でスタジオには何回くらい入りましたか?

立花龍:月何回かの定期的なペースで入っている。

-手応えはどうですか?

立花龍:やっぱり音を鳴らした時に上手いと思ったね。Burgundyは各楽器の個性が強いから実はぶつかり合ったりしていたんだけど或る感覚は俺を主役にしてくれる。椅子の取り合いの仕方が或る感覚のメンバーは上手いと思う。大野(Gt)だけが特別に上手いって訳じゃなくて、全員ボーカルを立てるのが上手い。

-Burgundyを経験したからこその発見ですね。以前と音作りは変わりましたか?

立花龍:変わったね。一個違うのはセミアコを辞めた事だね。尖りを間違えていた時期に「ソリッドギター※3を使いたくない」っていう気持ちがあったんだけど、やっぱりソリッドギター良いなって(笑)。

-(笑)。或る感覚って元々凄く独特な音作りだとも思うんですけど、プレゼンスガツンって。

立花龍:プレゼンスはどのバンドより出ている自信があるね(笑)。ハイミッドじゃなくてとにかくプレゼンスをあげる音作りしてたね。レコーディングの時エンジニアさんにも「いくらチャラいと思われても良いんでプレゼンス出して下さい」って言ってた。それが大野の味なんだと思う。もはや潰れてるけどね(笑)。

-やっぱり聞けばわかる或る感覚サウンドって存在しますよね。以前のインタビューでサウンド面では「ASIAN KUNG-FU GENERATION、NUMBER GIRLに影響を受けた」と言っていましたがそれを独自のサウンドに着地させるのは本当に凄いと思います。どの立場だよって思うかも知れませんが(笑)。

立花龍:NUMBER GIRLとかハヌマーンとかとは親和性があるものとして取り上げられてきたけど、大野のギターがどちらとも違うし、勿論ルーツも違って...彼はギターを使わない様なHi-FI音楽が好きで、それをギターで表現した時、必然的に音も早くなる。Perfume好きだからね(笑)。

-意外ですね...

立花龍:中田ヤスタカさんが彼の一番好きなミュージシャンだからね。大野は音楽で飛びたいんだと思う。

-確かに大野さんよりぶっ飛んでる早さのギタリストって僕の知る限りいないです。

立花龍:確かに中々いないかもね。大野は日本のギタリストの中でオリジナリティで言ったら一番過小評価されてると思う。俺に関してはBurgundyを経て上手くなったし、他のメンバーに関しても北原ジャンクション(Dr)以外はブランクないし...上手くなっていると思う。

-進化した或る感覚とても楽しみです。どういう気持ちでライブに臨みますか?

立花龍:自分で想像しないようにしている。普通にテンション上がったままドーパミンドバドバで30分過ぎそう。

-或る感覚で今一番好きな曲は何ですか?

立花龍:見直したのは「masa」かな。大野の曲やりたいってのはずっとあって、彼の曲は少数しかないんだけど全部良いなと思う。「スローウェイブ」とかも当時は「ギターロックしてるな(笑)」って感じだったけど彼の中にあるギリギリの物差しが秀逸で改めて聞いたら「良いな...」って思った。

-全部好きです(笑)。精神的な部分でも大分当時と変わりましたか?

立花龍:昔はあんまり人の迷惑考えていなかったな(笑)。無鉄砲さはずっとなくなっていないと思うけどね。前と違うのは味方には剣を振り回していないところかな。「自分の仲間は守っていくぞ」っていう気持ちになった。

-孤独だった不良がゆくゆく信頼感を得ていく構図に近いような気がします。

立花龍:そうかもね。或る感覚の時は群れたくなかったんだけど...あの時と格段に違うのは頼られたり利用されることにプライドがなくなったのかも知れない。良くも悪くもね。或る感覚の時の「俺はアーティストだ」っていう感覚が薄くなってきているからそれを取り戻す為の再結成でもあるかな。

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-最近、NUMBER GIRLやELLEGARDENなどが再結成しましたが或る感覚の再結成も紐付けて、どう思いますか?

立花龍:向井さんなんかはハッキリ公言していたけど、想像以上に自分が影響力を持っていることを自覚したのかも知れないし...現役の時よりも良い状態で戻ってこれる確信があったんだと思う。或る感覚はあまり考えず行き当たりばったりで、なんとなくだけど「もう一回やってみたいな...」っていう気持が各々にあったから...

-或る感覚の再結成からはビジネスチャンス的な匂いが全くしなかったです(笑)。

立花龍:『BANAFES』1番手を或る感覚にしたのも、10時からって結構本気で好きな人しか見に来てくれないと思うから…1発目は本当に好きな人だけ見てくれれば良いかなと思うし『BANAFES』が終わってみて「やっぱり或る感覚でステージに立つの気持ち良いな」と思ったらその場でライブを決めるくらいのノリでやろうかなと。

イベント詳細

日程:2019年10月6日(日)

会場:新宿NINESPICES、新宿SACT!、新宿SUNFACE、HILLVALLEY STUDIO

時間:OPEN/START 9:00/10:00

チケット:前売り ¥3,500/¥4,200(+1D)

出演:或る感覚/Burgundy/神々のゴライコーズ/死んじゃうじゃんか/ペドラザ/potekomuzin/UlulU/kumagusu/ペペッターズ/trico/Bearwear/Cody・Lee(李)/レイラ/6EYES/GRASAM ANIMAL/salsa/the McFaddin/Suhm/みそっかす/Teenager Kick Ass/三輪和也/the seadays/C SQUARED/AKOGARE/SEMENTOS/SONOSUKIMAKARA/Kroi/サナダヒデト(バンドセット)/ネクライトーキー/wash?/17歳とベルリンの壁/memento森/YUMEGIWA GIRL FRIEND/Large House Satisfaction/No Buses/LONE/The Whoops/ヘンショクリュウ/airezias/zazieVS(ex. Happy!Mari)/ayutthaya/Outside dandy
FOOD:Burgundyのフェス飯(ルーロー飯、薬膳スパイスカレー)

※1ミュウツー...ポケットモンスターシリーズに登場する809種のポケモン(架空の生物)のうちの一種。伝説のポケモンである。

※2『NOT FOR SALE』...新宿NINESPICESで定期的に開催されている『BANAFES』主催のリスナー向けショーケースイベント。入場料が無料且つ出演のバンドの音源を購入すると主催から1ドリンクが貰える良心的すぎるイベント。

※3ソリッドギター...エレクトリック(エレキ)・ギターで,共鳴胴をもたないもの。 外見上は共鳴胴のあるギターと似た形をしているが,ボディは中空でなく単なる板にすぎず,弦の振動はボディに共鳴することなしに直接に電気信号を発生させ,それをアンプで増幅してスピーカーで音にする

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