見出し画像

中華カレーを作れ

夏に食べる中華カレーは美味い。

中華!?カレーナンデ?アイェェェェエ!!と中華カレーリアリティショックを起こしそうになるくらいだ。

日本の中華料理屋やラーメン屋ではカレーを出す店もちょこちょこあるが、それはあくまで日本料理としてのカレーライスなので中華っぽさはさほど感じられないし、わたしが20年くらい前に北京に住んでいた頃はカレーはあまりポピュラーな食べ物ではなく、吉野家で牛丼のついでにカレーライスが売ってるなぁとか、なんか厚揚げをカレー粉で炒めたようなものがあったなぁとか、香港のほうだとなんかシャバいカレーのような汁掛け飯があるらしい程度の認識しかなく、基本的に中華とカレーは北朝鮮とアメリカのように相容れないものだと思っていた。

ところが時は流れ今は2019年である。トランプは金正恩に会いに行ったし、なんでこんな所にインドカレー屋が?!と感じさせられるくらいに日本全国津々浦々までインド/ネパール料理の店も行き渡り、タイカレーもカレーの1種としてすっかり市民権を得ている。

そんなある日の午後、情報の波に乗るか飲まれるかの二者択一を迫られる2019年、わたしは無印良品のビーズクッションa.k.a人をダメにするソファーに深く沈み込み、文明の利器であるスマートフォンを片手にインターネットサーフィンに勤しんでいた、、、

なにを調べていたのかは覚えていないがGoogleの検索候補に『カレー 中華風』というワードが出てきてわたしは「おいおい、オマエさん冗談はよしてくれよ、カレーと中華なんてヘチマにチョコレートをつけて食べるようなもんなんじゃねぇのかよォ」と訝しがったがどうやら玉ねぎと肉を炒めたところにカレー粉を入れて中華スープと水溶き片栗粉で仕上げる中華カレーなるものがあって、神戸の中華街ではそこそこポピュラーだったり深夜のギロッポンで呑んだくれた後の業界人が好むらしいとかそんな情報を手に入れた。

なるほど、確かに蕎麦屋のカレーの出汁が中華スープになり、炒める工程がある事で中華としてのアイデンティティも保たれている、まさしくこれは中華カレーだ。自分はガチめなインドカレーを作るのが好きなのだがいざ作るとバーモントカレー甘口原理主義者である妻からは「ウメェけど普通のバーモントカレー甘口食わせろよ」との無言の圧力を感じるし、子供達にはスパイシーすぎて匙が進まぬ、かといってルーのカレーは美味いけどコッテリし過ぎてオッサン化が進むわたしのボディにはそろそろツラミちゃんだ、鍋洗うのめんどいし。

しかしこの中華カレーなる物なら全員の要求に応えつつ作るのもラクそうだ、これぞまさにオルタナティブなソリューション。よし、晩メシはこれで決まりだと決意するやいなやわたしは肉のハナマサへと走りテキトーに材料をみつくろい、中華鍋を取り出し火にかけた。

玉ねぎを酢豚の中に入ってるやつくらいの大きさに切り、ついでにこないだカレー作った時に余ってたじゃがいもを火が通りそうなサイズに切ったら熱した中華鍋にぶち込みジャーッと炒めて玉ねぎの色が変わってきたら塩胡椒して片栗粉ふっておいた豚バラ肉と2~3mmにスラッシュしたマッシュルームを鍋に合流させて肉に火が通って所々こんがりしてる感じになったらカレー粉(更に中華に寄せたければ五香粉を少し入れるのもいい)をファサーっと入れて、中華スープの素(鶏ガラとか味覇とか創味シャンタンとか)と片栗粉を水で溶いたやつをジャバーッと入れて中火でとろみがつくまで加熱、この間に米を盛り付けておくのもよかろう、とろみがついたら味見して問題無ければライスの上にバーッとかけよう。

冷めないうちに机に運んで実食、スプーンで一気にかっこむ、中華あんかけのようにとろみのついた中華カレーと炊きたての米の組み合わせは江戸っ子の好む風呂のように熱い、わたしは猫舌なんだ、1足先に別に猫舌でもなくふだん食事に対してそこまでコメントをしない妻も「食べた事ない味だがこれはウマい」とかっこんでいたのでとりあえずこの食べ物が美味い事は確かなようだ。

黄色くて玉ねぎと肉が入っているので匂いもビジュアルも中々のカレーっぷりなのだが食べると中華スープと水溶き片栗粉のおかげで中華丼のように感じる。初めて食べる時はこれはカレー?それとも中華?と脳が混乱するのが楽しい。基本は玉ねぎと肉の炒めものをカレーあんかけにしたものなので具のアレンジもしやすそうだ、今回のマッシュルームとじゃがいもはとても好相性だったし、菜食主義者ならば肉を厚揚げにしてダシを植物性のにすれば良かろう。すっかり中華カレーの味をしめたわたし、次はマーボー茄子を中華カレー化するのなんて美味そうだなと想いを馳せているが、ぜひ君だけの組み合わせも見つけてみて欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?