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五福さんと騎西屋さん

音色展にご参加くださる作家さんのことをつらつらと。

彫金作家「騎西屋」関口まゆみさん
帯留とかんざしを出展、東京、大阪ともに在廊されます

京焼、絵付の帯留「五福」五福香菜子さん
帯留と根付を出展、大阪、東京ともに在廊されます

お二人には共通点が。
関口さんは、大きな関東平野が尽きるあたり、四季折々の緑が濃い山の端に工房があります。
五福さんは、和泉と紀伊の国の境目あたりの、物なり豊かな里山に工房があります。
お二人の工房は共に広々として、虫や鳥や動物がたくさんいる、川と森の自然に囲まれています。

実のところ、この自然や虫や様々な動物が私には恐ろしくてならないんですが、お二人とも自然を見る目がとても優しい。

作風と持ち味は違っていても、身近にある花や自然、虫や生き物をモチーフにした作品に、小さな幸せや、日々のちょっとした好きの気持ちが込められています。

騎西屋さんに先日、お客様の振袖に合わせるかんざしを誂えで製作してもらいました、技巧が行き届いてエレガントで素晴らしいものでした。
(投稿現在、別注はお休みされています)

神楽坂の芸者さんの挿し物を制作されています、目の肥えた姐さん方も納得のクオリティーがあるんですね、江戸の芸者の粋とハリ、スッキリ直線的で格好良さを求めるみなさんに受け入れられる作風だということがわかります。

フォルムはあくまでもなめらかで流麗、ただその中にほんの少しの毒といいますか苦味を感じます、綺麗な花には棘があるの例え、あくまでもキレイキレイではないところが、作品の感覚としての奥行きになっているように思います。

小さい作品でも存在感を発揮します。
コーディネートが締まります、スパイスの役目とでもいいますか。

コーデにとって奥行きはキーワードのひとつですから、彫金の立体感は大事なポイントです。大人でエレガントな風情に。

輝石を使い、彫金と合わせた作品もとても美しいんですよ。

楽しいモチーフもありましてね、遊び心も演出できます。

五福さんとの共通点。
お二人とも作品に「妖怪シリーズ」があります。

関口さんのは結構リアルです、おどろおどろしさが逆にユーモラスで、今回出展があるかはわかりませんが「お歯黒べったり」や「ろくろっ首」など、見たまんまです。

そのリアルさと毒っ気を楽しまれるファンもおられます。よく見れば「妖怪コーデ」分かる人には分かる的な、少しひねった、捻りの効いた、そんなウキウキを楽しまれます。

五福さんの妖怪は本来不気味なはずなのに、可愛く昇華されます、これは作風なんだと思います。「私が作ると全部こうなってしまう」と五福さんご本人は言われます、丸くてゆらぎがあっておおらかでふんわりして、蒸したてのお饅頭のようです、それがまた良いのですよ。

この筆づかいに目を細められるファンも多く、そこが人気の所以でもありますが、私はむしろ可愛いだけでない、その中の意思みたいなものがとても好きです。

五福さんとは沿線が同じこともありしばしば会ってお話をしますが、想いの強さ、作ることへの前向きさ、美しいことや技芸に対する工夫と向上心に感心しきりです。

筆運びがどんどん精緻になっている、なんと言いますか筆運びに迷いがなくなっている、これは技術の裏付けがあってこそです。ほんわかと自然体な感じは変わりませんが、作風に熟練の手強さを感じます。

今回の新作は、立体と言いますかレリーフと言いますか、そんな作品もあります。これがまた可愛かったり面白かったりです。

コーデがパッと明るくなるのが五福さんの特徴、例えば海をイメージしたコーデなら、帆船やカモメの帯留をすることで一気にその世界になります、当たり前のようですが、伝えるのは案外難しいものです。伝わりやすくわかりやすい、素直で真っ直ぐなんです。ありそうでないんですよ。

ものづくりで生きて行くというのは実に壮大なことだと私は思います、美大を出ながらクリエイターではない私からすると尊敬以外ありません。

お二人とも、一歩一歩を大切にされます。もちろん華やかさもお持ちですが、浮かれたところのない実質主義の技量と職人気質があります。

日々の生活に花を添えるような、身近な自然に寄り添うような、ミニマムな中に大きさを感じる、そんな作品を創られています。

音色展でご覧いただけましたら幸いです。




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