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転んでも転んでも

昨日、人生初のバックカントリー入門を体験しました。ベテランのガイドさんの後ろについて時間をかけてゆっくり登り、柔らかく底なしの深い雪の中を腰近くまで埋まりながらも浮遊感を保ちつつ降りてくるというものでした。

必要な装備を調え、現地へ運び、深い雪の上でスキー板のソールにシール(滑り止め)を貼って、斜面を一歩一歩登るため、普段使わない部位の筋肉を使って変に力が入って息が切れるし、筋肉は震えるし、装具の状態がおかしくなっていても自分で調整する余裕もない感じでした。

柔らかく深い雪ですから、ちょっとバランスを崩すと尻もちついてしまって埋まるので、なかなか動けなくなります。いや、正直な話、何度かそうなって身動き取れなくなってガイドさんに救出してもらいました。

いよいよ極上パウダーを滑り始めるという場所で、スキー板を外してソールのシールを外したりするわけですが、そういうひとつひとつの作業において、初心者はついつい余計な力を使うものですね…わたしは早くシールを外したい一心で、両足のビンディングをパパッと外して片足を雪面にトン!と下ろしてしまったのです。そして、あっという間にその脚がズブズブと大腿近くまで埋まってしまったのでした…どうあがいても、雪の中に引きずり込まれるように沈んでいくので、浮上するのが大変でした。

こんなふうに、滑り出しの準備だけでかなりのエネルギーロスをしてしまいました。

なんとかかんとかスキー板もビンディングもブーツもウエアーも、滑り出しできる状態にセッティングできたときには、解き放たれたような自由な感覚になりました。

そうして、極上のパウダースノーを滑り降りる体験をすることができました。

数秒間の極上体験をした後、またシールを貼ったのですが、失敗を教訓に今度はスキー板を片足ずつ外して片足でバランスをとりながら作業するようにしましたが、こうやってバランスをとることにもかなり筋力を使いました。それからまた登り、またシール外しの作業をして、1回目とは別のまっさらな斜面を滑りました。

帰りの移動途中で再びシール貼りの作業をして、多少のアップダウンをトラバース中、いくぶん下って右へカーブして登り返す場所で、なんと!スキー板の先端が斜面に突き刺さって尻もちついて動けなくなりました。

この時もガイドさんに救出していただきました。

大自然の中に自分の足で踏み入るときは、荷物・装備は極力軽くして、余計なエネルギーを消耗しないようにして、体力を温存させるような身体の使い方をしないと、後で命取りになる…

一言でいうなら、わたしの装備は、わたしにとって重過ぎた…ようです。

すでに身体はへとへとでしたがなんとしても麓まで帰らないわけにはいきませんから、最後の気力を振り絞って、足下を確認しながら、ゆっくりゆっくり、一歩一歩、登り始めました。

そのときです!雲間が切れて透き通るような青空が開け、後方から太陽光が差し、雪がキラキラと輝き出したのです!

皆さん、歓声をあげ、写真を撮り始めました。冒頭の写真はそのときのもので、前屈みになって辛そうに登っている人は、他でもないわたしです。

無事に下山したときは、何度も周囲に迷惑をかけてしまって他のメンバーに申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。

しかし、意外にも、わたしの粗相があったおかげで(?)、かえって皆さんはちょこちょこ休みながら雪景色を堪能できたようです。「キツすぎないツアーになったんで、ちょうどよかった!」「素晴らしい景色と極上パウダーで、とても癒されたー」と喜んでくださいました(笑)。

ミスや足手まといなことが周囲に喜ばれるなんてことがあるのかー?と、驚きつつも、わたしもちょっと嬉しくなりました。

思えば、ずいぶん前にも似たような体験をしたことがありました。皆さんにも、そういう体験ありませんか?

何か始めたばかりの人なら誰だって右も左もわからないことだらけでしょうし、ミスしてしまうこともあるでしょう。完璧だと思うところまで知識を蓄えても、最初から完璧に実践できる人はごくわずかでしょう。そんな人は居ないと言ってもいいくらいじゃないでしょうか。

どんなに真剣にやっても、多少のミスをしたり、誰かの足手まといになることって、ありますよ〜 そんなの、わたしだけでしょうか? たとえ、わたし個人の体験だとしても…いや、そうならばなおさらに、皆さんもミスを恐れずに心を開いて他人の助けを借りてみませんか?

だからといって、わがまま放題でいいんですよとか、依存しちゃっていいんですよ、とか言っているわけではありません。

大きく道を外すと誰も助けてくれなくなったり、命取りになることがあるでしょうから、己を知り律する必要はありますよね。あるいは、自分がやりたいようにするのなら、助けてくれない誰かを責めるのは、筋違いですよね。

そのくらいの自覚は持ったうえで、自分に素直になって、心を開くと、気持ちが楽になると思います。