伝聞法則1


(事例)
 Aさんは、公園で休憩していました。甲さんと乙さんが口論しながら、公園にやってきました。Aさんは、甲さんと乙さんのやり取りを眺めていました。そうすると、甲さんが近くにあった棒を使って、乙さんを殴りました。
 いろいろあって、甲さんが傷害罪で起訴されました。

(基本的な例)
 法廷では、Aさんが証人として、「甲さんが乙さんを殴ったのを見ました」と証言します。
 これに対して、甲さんの弁護人は、「本当に甲さんを見たのですか?」「甲さんの服装はどのようなものでしたか?」「あなたの視力はどのくらいですか?」「あなたと甲さんとの距離はどれくらいでしたか?」という質問をし、Aさんの話が信用できるかどうか、反対尋問を通じて検討されます。
 以上が、基本的な例です。

(書面の例)
 では、法廷で、Aさんの代わりに、Aさんの言ったことが書かれた書面が証拠とされたとします。その場合、甲さんの弁護人は、反対尋問を通じて、Aさんの話が信用できるかどうかの検討を行うことができません(書面に質問しても返事はありません。)。

(事例の追加)
 事例を追加します。さきほどの事例で、Aさんが甲さんと乙さんのやり取りを見た後、Aさんがその後、喫茶店でBさんに対して、「すごいものをみたよ。甲さんが乙さんを殴っていたよ」と言ったとします。

(又聞きの例)
 そして、法廷でAさんではなく、Bさんが証人として「Aさんは『甲さんが乙さんを殴っていた』と言っていた」と証言したとします。その場合、甲さんの弁護人が、(基本的な例)の中でした質問と同じような質問をするとどうなるでしょうか。「Aさんは本当に甲さんを見たのですか?」「甲さんの服装はどのようなものでしたか?」「Aさんの視力はどのくらいですか?」「Aさんと甲さんとの距離はどれくらいでしたか?」。このような質問をしても、Bさんは、「知りません」とか「そのように聞いただけです」としか答えようがありません。Aさんが「甲さんが乙さんを殴ったのを見ました」という話の信用性を検討することはできません。

(結論)
 (書面の例)や(又聞きの例)のように、Aさんの話が信用できるかどうか検討できないことは事実の認定を誤らせる可能性があります。それを避けるために、伝聞証拠は原則として証拠とすることができないとされています。

(予告)
 では、このことを答案でうまく表現するにはどのように書けばよいのでしょうか。よく「『要証事実』との関係で伝聞証拠に当たるかどうか判断する」と言われます。この「要証事実」というのが第1のハードルです。ハードルと言っても、難しい話ではなく、「要証事実」という言葉がいろいろな意味合いで使われることから混乱のもとなので、それを整理することが第1のハードルです。



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