#ファンタジー 第31話カロン動物園へ行く〜エンジェルさんの秘密〜(その5)
窓辺に青いお月様の光が差し始めた頃、
やっとエンジェルさんは 天から戻って来ました。
エンジェルさんが窓から部屋の中へ入って来ると、
そこには、
シロクマくんと赤い風船さんの他に、
ヤドカリ猫さんがいました。
エンジェルさんの爽やかな表情を見て、
皆は安心しました。
とりあえず、
エンジェルは、先ほどのマシュマロクッションに座り、温かいミルクココアを飲みました。
ヤドカリ猫さんは、
「やっと 君は この窓を開けられたね! おめでとう! 今から、君はエンジェル稼業再開だ❗️」ととても嬉しそうに言いました。
エンジェルさんは、
ヤドカリ猫さんの言葉で 長い眠りから目覚めたような爽快な気分になりました。
そうだったのです、
このシロクマくんの部屋は、実はエンジェルさんの部屋そのものだったのです。
エンジェルさんは、気が遠くなる程 長い間、同じ仕事をしていました。
その仕事にだんだん嫌気がさして、ある日 自らの手で窓を塞いだのです。
それ以来 ずっと窓の存在を忘れてしまっていました。
"えっ、エンジェルさんの仕事ってなんですか?"
それは、
とても大切な仕事なのです。
亡くなった人間の子供達を、無事に魂の世界へ送り届ける仕事なのです。
そして天使達は、
必ず 何か一つ、子供にプレゼントを用意します。
エンジェルさんの場合は、それが赤い風船だったのです。
エンジェルさんと赤い風船の魂は、切っても切れない間柄なのです。
エンジェルさんがこの仕事に嫌気がさした理由は、
それは、あまりに悲しすぎることばかりを知りすぎて、もうそこから逃げたくなったからです。
窓を塞いでしまえば、悲しいことを知らなくてもすむと思ったのです。
はぐれ天使になってから、
とても長い時間が過ぎてしまいました。
そして、窓を塞いでしまったことさえも忘れてしまいました。
エンジェルさんは、カロンと出会って、
それと同時に 赤い風船の魂に出会いました。
そのおかげで やっと思い出すことができたのです。
シロクマくんは、
実は エンジェルさんがいつも一緒に眠っているぬいぐるみでした。
役目を終えたシロクマくんは、また元のぬいぐるみに戻ってベッドの上に横たわりました。
赤い風船の魂さんは、
「ヤドカリ猫さん、エンジェルさんをよろしくお願いします。」そう言って、淡い光の粒に戻りました。
ヤドカリ猫さんは、エンジェルさんに、
「さあ、ママ達の所へ行こう!」と言って、エンジェルさんの手を握って巻貝の中へ飛び込みました。
会議室へ入る扉の前のホールに
ヤドカリ猫さんとエンジェルさんが来ると、
そこには・・・(続く)
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