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90年間 2021/5/12(水)

9時頃起床、のんびりと過ごす。
普段の生活からは考えられないゆっくり流れる時間。

病室に向かった叔父からの連絡を待ちながら、叔母とダラダラ話す。

叔父がもうダメかもしれない、とバタついているのをソワソワしながら眺める。
とりあえず連絡待ち。
少しすると、施設へ向かうように電話が来る。

小雨の中急ぎ足で施設に向かう。
祖母の口元はモグモグ動いてる。
でも、血色が悪い、、、

大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせながら
「昨日手のマッサージしたから、続きするわ〜」と
今日は足のマッサージ。

とにかく良く歩くおばあちゃんだった。
スーパーど田舎ジャングル村なのに、山道だろうとなんだろうと歩きまくっていた。

そんなパワフルなおばあちゃんを90年間支え続けてくれた、立派な脚。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。

少しマッサージしていると、足の血色が良くなる。

「気持ちよさそうな顔してるわ〜」と、母の声。

おばあちゃん、私がマッサージをしたいと思ったのは、こんな風に誰かに喜んでもらいたかったからやねんで。
お金で感謝の気持ちを表すことが出来なかった私が、何か喜んで貰えることをって探した結果得た、マッサージの技術。
親族では初だ。おばあちゃん。

気を抜くと溢れ出しそうな涙を堪えながら、必死でマッサージする。
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
20分か30分か、みんなで声をかけながら優しく見守る。


だんだん表情に動きが無くなってきて、施設の方々がパタパタと出入りしだす。

それでも堪えていた涙。

でも、お別れの瞬間って本当に分かるものですね。

特に何が起きたわけでもない。
特に誰かが何か言ったわけでもない。
急に、私の涙が溢れ出した。


これは違う、自分の涙腺が弱くなっただけだと無理やり言いくるめてはみたものの

お別れの瞬間は、とても静かだった。






部屋の荷物をまとめて戻ってきた。
その時、ずっと何となく気になっていたぬいぐるみ。
これと言って何も無い部屋に、ポツンと座っている可愛らしい羊。

こいつはなんだ?🐏
と思いながらも連れて帰ってくる。


この羊、昔私がお土産で買ったものらしい。
その時何を考えていたのか
どんな思いで渡したのか
全く覚えていない。覚えていないのに
そんなぬいぐるみがずっとずっとおばあちゃんの横に居たなんて。

お前、やるな。
ありがとう。羊。🐏



昨日、一日一緒に過ごせて良かった。
今日、私が行くまで頑張ってくれて良かった。
最期、90年間おばあちゃんを支えてくれた足を楽にさせてあげられて本当に良かった。

おばあちゃん、おばあちゃん、おばあちゃん。
本当にありがとう。

おばあちゃん。
また夢でね。

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