同じ船に

noteを始めてみました。

先日、テレビ番組に対する解説放送について意見をいう機会があったので、ワンピースへの思いを書きました。

許可を得て公開します。


タイトル:同じ船に


フジテレビのみなさんはじめまして。

伊敷政英(いしきまさひで)と申します。
先天性の視覚障害があり、強度のロービジョン(弱視)です。

僕は15年ほど前からONE PIECEをほぼ毎週見ています。
空島編の終わりごろから見始めました。
そのあとのウォーターセブン、エニエスロビー、さらにインペルダウンからの頂上戦争、魚人島編、パンクハザード、ドレスローザ、ゾウ、トットランド、そして和の国編とずっと見続けています。
僕にはジャンプやコミックを読む視力はないので、アニメ放送が唯一ワンピースを楽しめるメディアです。

ロビンの「行きたい!私も海へ連れてって」で涙を流し、ロブるっちとルフィの戦いに夢中になったりしました。
魚人島編では、差別や偏見との向き合い方がテーマかなと感じたりしました。
王妃のように人間と仲良くしようとするのか、あるいはホーディのように人間を敵対視するのか。
これは障碍者と健常者の関係にも似たところがあるなと感じながら見ていました。

またドレスローザ編では格差の問題と、国と国民の関係性がテーマかなと感じてみていました。
国民から忘れられたおもちゃたち。国王ゼウスと国民たちの間の信頼関係。
もちろんルフィとドフラミンゴの死闘もとても見ごたえがありました。
ギア4のバウンドマンになるときのルフィのかっこよさはたまりませんね。

さらに、都っとランド編では家族がテーマかなと感じました。
ビッグマム海賊団も、サンジのかぞくであるジェルマ66も、機能不全家族で、そこにたいしてプリンやサンジがどう向き合うのかが描かれていたように思います。
カタクリとルフィの戦い、スネイクマン、見分職の覇気、どれも夢中になってしまいました。

ワンピースでは登場人物の悲しい体験が克明に描かれています。
オハラを追われたロビンのエピソード、
ブルックとラブーンの話、
白煙病で追われる身となったトラファルガーローとコラソンの物語、
牢屋に閉じ込められ、父親や兄弟から愛情を受け取ることができなかったサンジ。
三つ目族であることを隠すために伸ばしていた前髪を子供たちに切られてしまうプリン、
時々見ているのがつらくなるほどの悲しい経験をしながらも、
それでも前を向いて強く歩んでいこうとする登場人物の姿に、
40過ぎの大の大人がすっかり励まされています。

そんな僕ですが、1年ほど前から徐々に視力が落ちてきました。
さらに、この数か月で急激に視力が落ちてしまいました。
それまではテレビ画面に目をくっつけるほど近づくと映像を見ることができましたが、今ではそれも見えなくなりつつあります。

そんななか、解説放送を頼りにワンピースを楽しんでいます。
2月2日放送回では、サンジがたばこをかみしめるという細かい描写をしっかり説明してくださいましたね。
2月9日放送回での花魁道中の描写は、言葉だけでは想像するのが難しい内容でしたが、将軍おろちのシルエットをしっかり説明してくださいました。

もちろん映像を見たい、ルフィやサンジやゾロや海童の動きを見たいという思いは消えませんが、
解説放送のおかげで、僕はいままでとそれほど変わらずワンピースを楽しめています。

ほんとうにありがとうございます。

これからもぜひ続けていただきたいと心から願っています。

昨年、V6の楽曲がオープニングテーマになったとき、
2,3週にわたってV6メンバーとワンピースの声優さんとのトークが解説放送のトラックで流されることがありました。
健常者にとっては映像を見ながらトークも楽しめて特別なコンテンツになったのかもしれませんが、
いつも解説放送尾頼りにワンピースを楽しんでいる視覚障害者にとっては、
アニメの内容が全く伝わらないという悲しいものとなりました。

解説放送は常にアニメの内容を伝えるものにしていただきたいと強く思います。
コメンタリーのようなコンテンツはネットを経由してスマホなどから聞けるようにすれば、
映像を見ながらコメンタリーを楽しむこともできるのではないかと思います。

ワンピースはあと5年で最終回を迎えるという話が少し前に出ていましたね。
ラストスパートの5年、解説放送とともに、僕も麦わらの一味と一緒にワンピースを手に入れる旅を続けさせてください。

いつも本当にありがとうございます。