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腐女子向け、非実在の戦争のきほん② 予習・馬 下

前回はこちら

 さて、下からいよいよ戦いの話になっていく。
 詳細な土地と年代はあえてなるべく省くので、「世界の変化の一例」として、力まずに流し見してもらいたい。お茶菓子やジュースがあっても良い。
 一応、概ねググるとWikipediaが出てくるように気を使った。細かい部分が気になった人は検索して調べてみよう。
 上で言ったとおり、読み飛ばしても大丈夫。というか、これらの詳細は今後も都度説明するつもりなので、忘れても大丈夫。

④、騎兵の誕生と隆盛

 人が馬を使役しだしても、騎兵がすぐに生まれるわけではない。高度な馬術には高度な馬具が必要だった。馬に指示を出すための馬銜(ハミ)と手綱は早くに発明されたが、鞍はもう少し遅いようだ。

 おそらく荷物引きの応用として、馬が最初に戦場へ直接投入されたのは、戦車、いわゆるチャリオットであった。2頭、あるいは4頭の馬に荷車を引かせ、馬を制御する御者と、弓矢や槍などの長物を装備した攻撃者を乗せる。(御者と射手の組み合わせって、なんか狙撃手と観測手の組み合わせっぽくてBLっぽいよね。)
  「チャリオットって強いの?」と思われる場合は、時速30~40キロで自動車に突撃されることを想像してみていただきたい。ちなみにこの速度で自転車に当てると車輪が歪み大破する。しかも車のボンネットは人を傷つけにくいようクッション性を高めてあるが、チャリオットは兵器なので、むしろ殺傷力を高めるように車体に刃物やトゲが生えていたりもする。
 ましてや、このころは医学も未発達だ。いまでこそ当たり前に使われる消毒だが、概念として認められるのは、現実世界ではおよそ150年前のことである。怪我をすれば感染から死に至るのは容易であった。
 (どうでもいい情報だが、「消毒の論文掲載」と「ガソリン自動車の発明」はめちゃくちゃ時期が近く、幼馴染カプっぽい空気感がある)
 恐ろしいチャリオットだが、馬車を引いている分、人と馬だけの騎兵と比べて、機動力が落ちる。地形が悪くてひっかかってしまうようでも使いづらい。
 また、チャリオットを作るには頑丈な車輪を作る技術が必須である。戦場で人工物が故障しないのはとても重要で、チャリオットにしろ、うっかり車輪がはずれようものなら、その場でポンコツになってしまう。敵陣に突入したところで車輪の回転が詰まってしまったり、馬との接続が外れてしまったりしたら、哀れにも袋叩き間違いなしである。

 騎兵躍進の前に「鐙(あぶみ)」の話をしておこう。
 「鐙(あぶみ)」とは、足を乗っけるところである。
 構造は極めて単純で、つま先を通してひっかける輪っかが、鞍からぶら下がっているだけである。日本のものはL字型の踏み台形状だったりする。これで馬に座ったまま足を踏ん張れるというわけだ。本当にシンプルな考え方だが、なぜか発明はとても遅かった。いわゆる「中世」でも初期の方は鐙がまだない。異世界に飛ばされて鐙がなかったら、まっさきに発明すると良い。
 鐙の発明が遅かったことは、鐙なき時代の人々の騎乗スキルが優れていたことを意味する。鐙の登場する前、馬の上でしっかりと座るには、太ももで馬の胴を気合を入れて挟むしかなかった。それでも人々は騎乗して、その上戦争をしていた。これでは体幹どころか太ももまでバキバキになる。やはり鐙のない古代から騎兵はエッチなのだ。
 しかし、人間が体に力を入れるのに、足を踏ん張れるのはとても重要なことである。鐙の有無は、槍を構えたときに大きな差が出ると言われている。
 馬上で槍を構えて走ると、敵に見事槍が当たったとき、相応の衝撃が来る。このとき太ももで馬を挟む力だけでその衝撃を受け切るのは、エッチではあるが安定性に欠ける。鐙の発明前は、馬上で使う槍が投げ槍であることも多かった。対して鐙があれば、足に力を入れて馬上でしっかり踏ん張ることができる。
 一度発明された鐙は、その後全く廃れず今も乗馬に用いられている。今、自動車なき世界を考えられないように、一度発明された便利グッズはあったほうが強いのである。

 多くの人に想像されるような騎兵の時代が本当に花開くのは、鐙の発明以後だろう。
 騎乗した人間にどのような戦い方があったのか、サラッと見ていこう。

 みんな大好きなのはやはり突撃だろう。文字通り、騎馬の集団で相手に向かって突進し、なぎ倒す。大迫力である。騎兵突撃が嫌いな人なんていません。いや、騎兵に突撃されて壊滅を味わった人なら嫌いかもしれない。
 騎兵突撃というと、みんなダークソウルで親の顔より見た甲冑を思い出すかもしれない。上の人がガチガチに甲冑に身を固め、ときに下の馬すら鎧を身に着けている、いわゆる「騎士ライクな格好」は、突撃で威力を発揮した。装備が増えるとその重量で足は遅くなるが、その分攻撃を受けにくい。多少こづかれたぐらいではびくともしない。こういった防御力の高い騎兵が重騎兵である。甲冑をつけた人間はとても重たいので、それをものともしない巨大な馬が好まれた。個人的には騎兵は重騎兵が一番エッチだと思う。着衣の究極完成体だ。余談だが、騎乗用の西洋甲冑は座った姿勢に合わせて作られており、下馬するとお尻の防御力は存外に低いのでドキドキする。尻派の人はぜひ調べてみてほしい。日本の甲冑は下馬してもお尻がしっかりガードされているのだが……
 もちろんできるだけ装備を軽くして、馬の持つ機動力を活かすこともできる。軽騎兵である。軽騎兵には様々な役割が与えられたので、その用途は騎兵の中でも特に多い。
 例えば最速で走るのは、伝令、すなわち情報伝達にはもってこいだろう。
 足が速いということは、それだけ高速で相手に接近できるということだ。奇襲、つまり相手が戦闘の準備を整える前や、ちょっとした慢心やミスなど、わずかな隙を突いて急接近して襲撃するのにもよく用いられた。電光石火である。
 また軽騎兵の特技と言えば、騎射に特化した弓騎兵である。日本では流鏑馬と呼ばれる。馬に乗って相手に接近し、射程に入ったら射撃し、その後馬の足並みを活かして全力で逃げる。「ヒットアンドアウェイ」というと、ゲームが好きな人は聞いたことがあると思う。そう、飛び道具を持った騎兵もいるのだ。弓騎兵は数が揃うととんでもないことになる。見るからに強そうだが、騎乗して弓を引いて敵に当てるのはとても難しい。騎乗と射撃の両方に熟練していなければいけない。
 飛び道具を持った騎兵が強いとなると、当然火薬が登場すると火器を装備した竜騎兵が現れた。「竜騎兵って実在したの!?」というネタは定番なので、今知った人もご安心を。名前の由来には諸説あるが、鉄砲が火を吹くのでドラゴンっぽい、という説が一番流布している。

 要するに、一口にエッチな騎兵といっても、エッチな騎兵は種類が豊富騎兵同士のカプも、掛け算のパターンは豊富だ。

⑤、騎兵対策の発展と衰退

 さて、強キャラはメタられるのが定め、騎兵も時代が進むにつれて陰りを見せるようになった。

 騎兵にどう対抗すればよいだろうか。
 ここで前回のファランクス戦法の記事を思い出してほしい。「止めて叩く」は何に対しても有効な、基本的な戦術である。騎兵に対する基本的な対抗策も、同じく障害物飛び道具となる。
 ただし、相手が騎兵の場合、そもそも「止めて叩く」難易度が跳ね上がる。体重は軽くて数百キロ、重ければ1トン近く、遅くとも原付程度の速さで突っ込んでくるので、ぶつかってきたときの衝撃は人間とは比較にならない。

 騎兵を止めうる障害物はなんだろうか。
 一番シンプルなのは地形である。峻険な山の上でなくても、坂道があれば馬の速度は落ちる。丘の上に陣取れば、その分チャンスが生まれる。高いところはそれだけで守りやすい
 あるいは、人間が障害物を作ってしまうことだ。「物理的な壁」、すなわち城壁だ。戦う上で土木工事はとても重要である。家の高さの壁となると、さすがに馬も超えることはできない。ただし城壁は莫大なお金がかかる。まず建築コストが凄まじく大きい。一度建ててしまうとメンテナンスに管理費用もかかり、壁自体を守備する衛兵を置かなければいけない。壁自体をきちんと守るのはとても重要で、敵に城壁を乗っ取られたら、奪い返すのは至難の業だ。そうなったらほぼ負けである。
 もう少しコストを下げると野戦築城となる。野外にを設置したり、を打ち込み、馬の進撃を阻む。長篠の戦いで「馬防柵」が作られたのを社会の授業でやったのを覚えている人も多いのではないだろうか。
 野戦築城も、構築できればとても強力だ。しかし土木工事なので、容易に動かすことはできないし、やはり人件費や材料費は高額となる。また、防御施設の完成より、敵の攻撃のほうが早い場合も大惨事になってしまう。
 より簡易な「移動式の障害物」は実現できないだろうか。先のファランクスに習って、人が密集するように動き、障害物の役割を担うのはどうだろう。馬がぶつかってきても崩壊しないよう、人の並び方、陣形を考えるのである。人間同様に、槍をずらっとならべて槍衾を作るのは有効だ。
 実現すれば、工事費用はかからず、少なくとも工事するよりは完成まで速そうだ。しかし建設されたオブジェクトに比べると、馬に対する確実性は下がる。「人が足りない」とか、「練度が足りない」などの味方の要素から、「敵の騎馬が機動力に長けていて回り込んできてしまった」とか、あるいは「敵の馬の装備が想定以上に重く、パワーが有った」とか、敵の要素によっても突破される危険がある。
 このように、ひとくちに防衛のための障害物といっても、様々な形態が考案された。ここまで読んで「移動できるよう車輪を付けたものを障害物にしたらどうか」とか「槍を持たせた人員を四角形に並べてはどうか」とか思った人は冴えている。

 最初から「どう見ても突破できない設備」を用意して攻撃されないに越したことはないが、お金と時間は有限なので、そこまでの設備投資ができないことは多い。突破できると考えた敵が突っ込んでくるかもしれない。特に陣形によって馬を止めたい場合、単に走ってくる馬を止めるだけでなく、ちゃんと相手を仕留め、戦闘を継続する能力を剥奪しなければいけない。基本的に、損害を受けなかった敵は再度攻撃してくる。だんだんホットになってきた。

 かわいそうだが、ときに敵の生命と一緒に、敵の馬の生命をも剥奪せねばならない。止まって棒立ちになっている馬であれば歩兵でも倒せるが、騎兵である以上は上の人が猛反撃してくること必死である。前回の記事のように、可能なら飛び道具を利用したい。馬を止める障害物と組み合わせて、馬に有効な飛び道具を出すには、どうすればよいだろうか?
 馬は図体が大きいので当たり判定も大きいが、高速で動く。飛び道具も、馬の速度に対抗しなくてはいけない。
 一つはやはり絶え間なくまとまった数の飛び道具を飛ばすことだ。弓矢は連射することができるが、絶え間なく射撃するには射手がよく訓練されていなければいけない。優れた射手と大量の矢が必要だ。
 装填に時間のかかるクロスボウも、数を揃えることができれば強力だ。クロスボウは弓矢ほど武器に熟練していなくても使えるが、装填に時間がかかるため、達人が次々と矢をつがえるほどは連続して放つことはできない。クロスボウを絶え間なく撃つなら、本体と射手をたくさん用意し、射撃と装填を順番に行わせることだ。
 基本的に、火薬の爆発を利用して弾体を発射する火器や、架空の投射兵器も、同様に「たくさんぶっぱなす手段を考える」概念を応用するのが一つのフィクションの考え方だと思う。
 しかし、おそらく一般に想像されるより実際の火薬の歴史は長い。銃器の発展は機械の改良と改善の歴史であり、すなわち機械化人力で行っていたものをなんらかの構造に任せることの歴史である。いかに継ぎ目なく弾を撒き散らすかに人は腐心してきた。

 銃火器の発展の歴史は濃い。騎兵が中心の記事なので、ここではさわりだけ説明する
 アナログな道具と機械化された道具の違いは、使い手の練度の差より、技術の発展の差が大きいことだ。皆が”銃といって一番想像するタイプの拳銃”は、引き金を引ければとりあえず誰でもおよそ6発の射撃ができる。弓矢を立て続けに6発射撃できたら、相当の手練である。クロスボウであれば装填済みのものを6台用意しなければいけない。
 しかしそこにまで至るのには、随分時間がかかった。
 初期の火器は銃口(弾丸が飛び出る穴)から銃身(弾丸が通過する、銃の筒状の部分)に弾と火薬を入れ、更に棒で奥に押し込む。この装填(そうてん・銃に弾と火薬を供給し発泡できる状態にすること)の方法を前装式と言う。ただでさえ手順が多い上、発砲と装填で姿勢が大幅に違うため持ち替えの手間が発生し、一度に一発しか撃てない。これで馬を止めるには、クロスボウ同様に立て続けに射撃できるよう人数を揃える必要がある。俗に言う「三段撃ち」はこの概念だ。

 「一つの火器を連射」させようとすると、話は更に複雑になる。
 火器の連射に必要なのは、まず素早い装填の仕組みである。
 上記のように、一発撃ってから、倒しきれなかった敵が到達するまでにもう一発放てないとなると、数を揃えるしかない。より早く装填できれば、射撃できる回数は増える。前装式でも練度が上がればかなりの速度で装填することができるが、逆に練度への依存度は高いと言える。
 スムーズに射撃するために、前込式の時代から様々な装填方法が考案されたが、最終的に今の銃器はほとんどが後装式(このワードなんかドキドキするんだよな)で、銃身の後ろから弾と火薬を挿入する。これだと、銃身の長い銃を、装填のたびに持ち替えなくて住む。
 実際に装填の仕組みはどのように進化したか、時代を飛んで現代の銃を見てみよう。映画などで、銃に持ち手のおしりからカートリッジを突っ込むのを見たことあるだろう。あれも装填で、弾と火薬を銃に供給している。かんたんな動作で、誰にでもできる。
 
 次に必要なのは冷却だ。これがアナログな飛び道具と一番違うところである。火器は火薬の爆発を利用して弾体を発射する。火薬の爆発は高熱で、何度も撃っていると、だんだん銃本体が加熱され熱くなってくる。金属は熱で変質し、強度が落ちていくので、銃砲身を冷却しないで使い続けると、火薬の爆発の衝撃に耐えられなくなっていずれ故障する。壊れるだけならまだよく、悪ければ銃身が爆発する。拳銃なら射手の手が吹き飛び、大砲なら周囲全員が吹き飛ぶ。最悪の場合、周囲の火薬に誘爆し、大惨事となる。過熱を防ぐ手段も他と同様に多様に考案されてきたが、話が難しくなるのでここでは省略する。
 もちろん、銃火器の故障要因はこれだけではない。複雑な機械ほど故障の要因は増える。死なない命がないように、壊れない機械はない。チャリオットの車輪同様に、いかに装置の故障を減らすかは、機械化の重要なポイントである。装置が複雑になるほど、メンテナンスの重要度や専門性も増してくる。
 火器と機械化の発展は、エッチなBL的にも発展の余地が大きい。メカニックやエンジニアといった仕事は多くの関係性を生んだ。馬と騎手のカプがあるように、乗り物と搭乗者のカプも存在する。また騎兵と砲兵のBLは近世モノの専売特許だ。
 
 こんな感じで、おおむね機械の発展とともに、騎兵は衰退していった。当たり前だが、実際の戦いがここまで単純だったことは、おそらくない。一つか二つの兵科同士でぶつかるうちはわかりやすいのだが、時代が進むほど戦いは歩兵・騎兵・射手砲兵etcと揃った状態でマッチアップする軍隊の編成が複雑になるほど、動きも複雑になる。
 今回その複雑な仔細の経過はすっ飛ばすが、現実世界において、この騎兵に対抗するための「障害物と飛び道具」戦法はほぼ完成している。
 最後に、馬を戦場から排除することに成功した、現実世界の実際の例を紹介する。

 まずは障害物、鉄条網である。
 鉄条網は有刺鉄線で作られた障害物であり、有刺鉄線は、言ってしまえば一定間隔で棘のついた針金だ。このトゲの部分もまた、斜めに削いだ針金をまきつけて作られている。どうして今から約150年前まで開発されなかったのが不思議なぐらい、単純な構造だ。鐙同様、異世界に飛ばされて存在しなかったら、まっさきに発明したほうが良い。これをクルクル束ねて、横たわるコイルのように地面に敷いておくと、あら不思議、驚くほど通行者に絡まる。
 有刺鉄線は、馬のみならず、人も動物もあらゆる生き物を阻む。この単純な針金の前で、ついに誰も生身で突撃することはできなくなった。

 飛び道具の方は、ガトリングである。
 ガトリングとは、銃身の筒を束ねて、ぐるぐる回転させる、鉄砲のでかいやつである。ここに至っては装填作業も大幅に機械化され、ガトリングは銃弾を断続的に装填する仕組みも優れている。
 言葉では分かりづらいと思うので、モルカー6話の予告(※執筆時放映前)でテディが装備しているのを見たほうが早いだろう。銃弾を発射しながら銃身が回転するので、五月雨のように弾が飛んでいく。先の記事で、大量に飛んでくる飛び道具の脅威を矢で説明したのを思い出してほしい。要するに、一度に大量に飛んでくる飛び道具は殺傷能力が高い。それが一分に百発以上飛んでくる銃弾になるともはや人も獣も当たらないほうが難しい。とても強力だ。
 ガトリング装備のモルカーは、突撃してくる騎兵を正面から退けられる。

 鉄条網とガトリング、両者を組み合わせるととてつもないことになる。足止めした相手を一方的に撃ちまくれるのである。どちらか一つでもあると、馬の機動力は完全に役に立たなくなった。
 文章で見ると容易に感じるが、これほど人が騎兵の排除に知恵を凝らしてきた記録が残っているということは、何も考えなかった場合は騎兵にボコボコにされたと言って差し支えない。今でこそ「騎兵 対策」でググればいくらでも戦法が出てくるが、古い時代は情報伝達が未発達で、人の歴史を知ること自体に、今とは比較にならないハードルがあったことを念頭に置いておきたい。

 なおこのあと鉄条網を突破する方法もあれこれ考案され、これを正面から踏み越えて突破するためにうまれたのが、大砲を載せキュルキュル進む金属製のほうの「戦車」である。「対抗策考案の歴史」は今日に至るまで続いている。

 かくして、騎兵と、馬という愛すべき生き物は、ようやく戦争の最前線から降ろされた。
 それでも、銃弾に倒れる馬がゼロになったわけではない。地球上に、ガソリンより飼葉のほうが供給が容易な地域がある限り、馬は使われるだろう。
 現代に至るまで、多くの馬が人の生命と運命をともにし、戦場に散っていった。
 以上が記事の本文である。文字数は実に最初の記事の3倍以上ある。ここまで読んでくれた方、お疲れさまでした。そしてありがとうございます。

⑥、やっぱり騎兵はエッチなんだよね

 想像だが、ここまで読んでくれた多くの人はこう思っている。
「フィクションを作るのに、ここまで凝る意味ではあるのだろうか?」
 ぶっちゃけないです。単なる好み。
 そう、本当に個人の好みでしかないが、逆に言うとエッチかどうかで自分自身に妥協したくない。この記事がエッチなBLのために作成されているということは、繰り返し述べておきたい。
 全く根拠のない自説だが、エロティシズムの構成要素には情報の多さがあるのではないかと思う。モザイクが憎まれるのは、画像の情報量を下げるからではないか。
 となると、エッチなBLの解像度も必然的に高いほうがよい。漠然と「軍人」とか「兵士」のカプより、「騎兵と歩兵」のカプがよく、それがさらに「カタフラクトとヴァリャーギ」となると、より高度な文脈が発生し、エッチなBL濃度が濃くなってくるのだ。どこまでやるか自分次第ということは、つまるところ自分の欲望との戦いに行き着く。

 とにかく、話は長くなったが、一番最初の話題に戻そう。腐女子として最初に伝えたいことは、日常的に騎乗しているキャラは、全員腰回りがバキバキに鍛えられているセクシーなぶっとい体幹の持ち主と考えていいことだ。しかも動物とコミュニケーションするキャラなので余計にセクシーである。そこに剣だの銃だの鎧だのが加わり、戦うために野を駆けるとき、これはもうスーパーミラクルホットなことになる。なんと、騎兵がエッチな理由はこれだけではないのだが、この話はまた今度する。

 こういった明日BLにしか役に立たない知識がつくことの楽しみに、「同族と、文脈がでかい会話をする」というものがある。
 例えば騎兵のキャラが受けだと「昼は馬上で夜は男の上か」などといった、品性に欠ける大喜利を楽しむこともできる。当然攻めの場合も、突撃による突破は得意、夜戦もキャバルリー・チャージだ。


次回!「ぶっちゃけ養成に金かかるエリートはみんなエッチだよね」(仮)Casus Belliスタンバイ!

https://note.com/cockatrice/n/n260d261e3947?magazine_key=m966717bd39fe


おまけ・戦場の馬が見られるコンテンツ

戦火の馬」(映画)
 このページを開いた有識者は絶対くると思っているだろう映画。
 ご都合主義のある映画ではあるのだが、主人公が馬なので、まるっと映画一本分ひたすら馬を見続けられるのは魅力的だ。また特筆すべきは「マークⅣ戦車を乗り越える軍馬」が見られる点だ。
 正直この場面がこの映画で一番泣ける。
 動物が死ぬシーンがでてくるので、苦手な人は注意。


謝辞

 前回の記事を公開してから予想の千倍、下手したら1万倍ぐらいの人に見ていただいて激しく動揺している。おそらくこの数日、今までの人生で一番誰かから褒められたと思う。先の記事をお読みになったすべての方にお礼を申し上げる。
 先の記事を、有識者各位に取り上げていただけたのは、完全に想定外だった。というのも、私が学部をトリプった駄目学士であることに起因している。節々でなるべく学術的な空気感が出ないようにしたつもりだった。ヘッダー画像を御覧いただきたい。WikipediaのバナーとWeblioの盾をもたせると、ほかがどんな装備でも駄目な学生に見えてはこないだろうか。Chevalier d'Internetである。
 先の記事は本当に参考文献Wikipediaと本一冊、作業時間6時間でつくられており、人に取り上げられてから慌てて文献を確認している様子が、今回の参考文献激増でお察しできると思う。今回の記事にも至らない点はあるが、お恥ずかしながら今回で本代が尽きてしまった。文献の不足についてはアマチュアの軍資金不足ということでどうかご容赦いただきたい。
 詳しい人にご紹介いただけたのと同様に、軍事や歴史に馴染みがなかった人々に「今までは知らなかったけどよくわかった」という感想をいただくのもとても光栄だ。自分が好きなものの魅力が伝わったことを嬉しく思う。ぜひエッチなBLに、そして各々の愛する推しやカップリングに使っていただきたい。
 感想として記事内のAとBのカップリングを述べてくださる方もいた。カップリング愛好家として、感謝感激の極みである。掛け算は、2者の間に流れる物語を最低限理解していなければできない。掛け算ができるということは、掛け算ができるラインまで話を理解したということである。
 上記の人々に重ねて謝意を表明する。
 noteの機能からサポートを投げてくれた方にも、特筆してお礼を申し上げる。恥ずかしながら投げ銭文化にあまり馴染みがなく、友人に相談したところ、「投げ銭は誰かの役に立ちたくて投げる人が多いのではないか」と回答を頂いた。とてもありがたく助かっている、ということを明言しておくとともに、頂いたお金で買った本の書評なども今後書こうかと思う。
 最後に、今までツイッターで参考文献の数々を教えてくれたフォロワーの方々に、とりわけ感謝の意を示したい。一番長い方ではもう10年以上の付き合いとなる。ときに本を贈っていただけることさえあり、これまで知識以上のものを支えていただいた。「人はパンのみにて生くるにあらず」と言うが、親切な人々が支えてくださったのは、まさに「パン以外の生きていくのに必要なもの」の部分であった。先の記事の投稿自体が、これまでの積み重ねがなければ実現しなかったと強く感じている。想定外に賛辞をいただいた記事だが、筆者からは、今までに交流してくださった人々へ、同じだけの賛辞を贈りたい。
 フォロワーの方々へ改めてお礼を申し上げます。いつもありがとうございます。


参考文献

戦闘技術の歴史1 (創元社、S.アングリム他、2008)
戦闘技術の歴史2 (創元社、S.アングリム他、2009)
ヨーロッパ史における戦争 (中央公論新社、マイケル ハワード、2010)
馬の世界史 (中央公論新社、木村凌二、2013)
知のビジュアル百科49 馬の百科(あすなろ書房、ジュリエット・クラットン=ブロック、2008)
小学館の図鑑NEO 大むかしの生物 (小学館、2019第18刷)
交易の世界史 上 (筑摩書房、ウィリアム バーンスタイン、2019)
鉄条網の世界史 (角川書店、石弘之・石紀美子、2020)

東京農業大学「食と農」の博物館 展示案内59 『馬を知る』

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