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腐女子向け、非実在の戦争のきほん③ 戦争のある箱庭 上


Q. エッチな騎兵がエッチであるもう一つの理由とは?
A. 高価だから

 人の命をお金で買うってドキドキするよね。YES二次元、NO三次元。
 前回はエッチな騎兵予習をお送りしたが、今回はもう少し具体的にエッチな騎兵の原始的な1パターンと、明日エッチなBLに使える原始的社会科をお送りする。

  大変おまたせしました。
 また、今回から話の難易度の上がり幅が大きくなっていくと思う。なるべく都度説明を入れるが、おそらく不足もある。申し訳ない。
 一応前回までに説明した話にするよう心がけるが、覚えがあるようなないような……と思ったら前の記事を見返してみてほしい。(期間も空いてしまったし)わからないことは、何度確認しても大丈夫。
 
というか、今回は第一回から通して読むと、お得になるようにしたので、前回の話なんか忘れたぞ!という人には手間をおかけするが、最初から通してもらうとわかりやすいと思う。

 前回同様、太字になっている用語については検索すればwikipediaとかweblioなどが引っかかるようにしておいた。
 PCを持っている人は、2窓で読むのもいいかもしれない。

おしらせ
 この部分だけいきなり生々しい政治の話になって非常に申し訳ない。
 実は「腐女子という言葉を使わないでほしい」というご意見を頂いた。
 私は割と強固な”言葉の再領有”(reappropriation)派なので、現状改める意思は無いということを、この場の表明をもって解答とさせていただく。
 バンド「スランツ」やクイアの人々が自ら呼称を選んだように、私を他人がなんと呼ぶかは私が決める。私は腐女子である。

①、戦闘員はどこから来るのか

 命には値段がある。
 戦場の残酷な現実である。徴発された貧乏農民とピカピカの騎士では命の値段は違うのである。今日始めて武器を握るような安物は戦死してもまた連れてくることができるが、鍛え抜かれた精鋭はそうはいかない。

 前回の記事の強くてエッチな騎兵、また強くてエッチな歩兵強くてエッチな射手なども含め、強い人々のデメリットはお金がかかることである。
 パット見てわかりやすいのは装備代、そこに維持費や訓練比がかかり、大事なときにきちんと戦うには、普段からそこそこきちんと生活していないといけない。同じスペックの人間が対面したら、装備のいいほうが勝つ。同じスペックで同じ装備の人間が対面したら、食事がいいほうが勝つ。食事も同じなら、睡眠が安定している方だ。お金のかけどころは、限りない。

 エッチな強い男を揃えるには、どう賄えばいいだろうか。(無論、世界観によってはエッチな強い女エッチな強いエトセトラでもいい)

 平たく言えば、大量の財産があればいい。
 お金をかけても強い軍団を揃えたい。それは古今東西人類の願いであった。だが、全員を最強の精鋭にするほどのお金があることも、古今東西非常に稀だった。大体の場合「お金をかけて高いやつを揃える」と「安い命を数で揃える」のさじ加減が重要となる。
 高級な軍団の宿命として、負けると大損害のリスクがある。金銀は奪われても持ち主が変わるだけだが、生命が奪われることは、永遠に失われることと同義だ。想像してみてほしい、数年かけて養育した精鋭を、一瞬の判断ミスで戦場で無に帰してしまったときのことを。この後の対策を考えるだけで胃痛がしてくる。養育費が賄えなかったり、敵の侵攻が早すぎたりすると、一度負けたら二度と復旧できない事態になる。
 むやみに失ってはいけないが、かといって持て余してもいけない。温存しすぎて戦場に送り込むことなく負けてしまうパターン、いわゆる「抱え落ち」したのでは、そもそも頑張って賄った意味がなくなってしまう。
 慎重さと大胆さを同時に要する、それがエッチな精鋭の難しいところなのである。

 ……では安い兵隊はエッチではないのだろうか?そんなことはまったくない。ストームトルーパーとかグリニア兵、いいよね。激安のモブを偉い人が気分で拾うタイプの作品、めちゃくちゃ興奮します。
 だが、これについては何らかの格差を跨ぐカプがエッチすぎるという話と合わせてやりたいので、また後日

 前置きは長くなったが、お金と手間暇かけた戦う男がエッチなBLになると大変味わい深いことは疑いようがない。王子様も蛮族の頭領もスーパーダーリンの攻めさんも受けさんも戦闘技術や指揮能力に優れている。三国志や戦国時代は、一般的なファンの多さに比例してやおいの題材としても人気だし、騎士や武士のロマンスはBLの中でも古典であろう。みんなが好きな軍服キャラを列挙すれば腐女子の閲兵式が可能である。士官が嫌いな腐女子なんていません。腐女子は軍役をする男が大好き。(自己紹介)

 では、エッチなBL大軍団をどう揃えればよいだろうか?(ノンケや百合などでも良い)
 まず、物語の土台として、軍隊が存在するからには、戦争が起きなければいけない。いち兵士の視点であれ、大国同士の動乱であれ、キャラクター同士が殺し合う物語に絶対に必要なのは、他人である。一人で他殺を行うことはできない。
 すなわち、エッチなBL大軍団が存在するために、第一に必要なのは集団を形成する人々だ。我々が「戦争」という言葉からイメージするのは集まりと集まり同士の争いだ。その世界の人々は、2つ以上に分かたれなければならない。もちろん、凝るなら分母不明な集団同士で泥沼化しても良い。
 よって、今回はエッチなBLを求めて、戦いの後ろ側に広がる世界も探ってみよう。この記事では、人外を使う人も想定して、「自我を同一にしない複数のもの同士の集団」のことを、「社会」と呼称する。より広範な「社会」を俯瞰すべく、最初の記事でやったように、簡易かつ原始的なモデルケースとして、「戦争のある社会の箱庭」をまるごと作り、エッチなBL大戦争を取り巻くものは何なのかを、さらっとピックアップしてみよう。
 繰り返しになるが、以下に続く世界の経過はあくまで現実をたたき台にしたフィクションであり、現実世界の経過とは異なることは、各位の念頭に置かれたい。

②、エッチなエリートの出現 

 社会、と一口にいっても、架空とはいえ、網羅しようとするととてつもなく巨大な規模になる。政治や経済などのそのまんま社会科の分野から、法律や宗教で倫理を跨ぎ、絵画や音楽などの芸術、技術の発展には化学や物理や数学が不可欠になるし、それを伝えるには文字や言葉は必須となる。逆説的に、我々の現代社会を支える、連綿と続く分かちえない多くの繋がりを垣間見ることもできる。
 とても全部は拾いきれないので、今回は「戦争」というテーマで、筆者の力量でエッチなBLと接続しやすそうなポイントを拾ってみる。みんなも日常や空想の中から、エッチなBLにコネクトしそうな部分を探してみよう。

 第一回同様、一度頭を石器時代に戻し、現代的な倫理観をなるべく失ってみる。
 ここにいわゆる「漠然とよく焼かれる村」ぐらいの小さい村があるとする。
 未開の時代、ある小さな村が、幸運にも、事前に襲撃の気配を察知した。
 突然襲われたら一方的に焼かれるのだから、村が敵の存在をいち早く認識したことには、とても大きな意義がある。だが、情報を知っただけで済ませてはいけない。知ったからには情報を利用しなければいけない。
 村長と村人たちは、戦って抵抗することにした。どうせ逃げても行く場所はないのだから。
 未開の時代というのは、逃げる場所がない。人口密度が極めて低く、人々はまばらに集落を作って居住しているので、村から一歩出れば凶悪な大自然の中に投げ捨てられることになる。悪天候や猛暑、寒冷、野生動物が容赦なく襲ってくる。動物は牙や爪で、植物は棘や毒で武装しているのに、人間ときたら道具がなければまるで無防備だ。冬に長時間雨に打たれれば人は死ぬ。寒くなくとも雨に濡れて強風を受けても人は死ぬ。遭難シチュに興味のある人と、アウトドアを始めたい人は、ヤマケイ文庫を買いましょう。
 環境の猛威の中を、文明の息吹無しには生き抜くのは難しく、そのためにこの村の、家も、畑も、水路も、先祖が何世代もかけて築いてきたのだ。雨風や獣をしのぎ、有益な植物を栽培できる環境は、手放したら容易に再建はできない。
 すなわち、今の村にとって問題は、近いうちに戦って死ぬか、しばらく先に飢えて死ぬかという選択を迫られていることなのだ。餓死というのはたいへん残酷な死である。苦しむ時間が長いからだ。今より死が身近だった時代、人々は飢餓の恐ろしさと、その苦しみをよく理解していた。ならばこそ、戦死を賭して、襲撃者に抵抗するのは有りだろう。
 こんなとき、勇敢でなければいけないが、無謀になってはいけない。落ち着いて、冷静に状況を確かめよう。

 情報によると、略奪者は単に悪天候続きで飢えた隣の村の人のようだ。これなら勝機はある。
 村長はまず、村の中から健康な者を選んで、戦闘員とした。兵役である。兵役というと怖いイメージを抱く人が多いかもしれないが、共同体が直接襲撃される原始的な社会では、こうするよりほかない。戦闘員の原始的な形態は、いわばボランティアで、極めて具体的に直接自分や家族を守るために、共同体のために戦う。
 この世界はエッチなBL時空なので、戦闘員は主に男性から構成されるが、実際の逃げ場のない戦いでは、動けるもの全員が戦闘に参加することがしばしばあった。自力で歩けるものは女子供だろうが老人だろうが怪我人だろうが戦力である。

 また、村長は、外部の者に報酬を与えて雇うことを思いついた。傭兵である。
 この村にも多くはないが、稀に他所からの来訪者がいた。その中には狩猟で戦闘と野外行動に慣れていたり、他で人間同士の戦いを経験している者がいる。村長は、彼らに定住する土地や、物品、村の中での地位などの報酬を与えて、味方に招き入れることにした。
 こうして村には外部へ実力行使可能な力、軍事力が誕生した。

 相手が素人なほど、戦闘は単純なぶつかりあいとなり、数や練度はストレートにものを言う。準備万端で防衛に挑んだこの村は、襲撃者を返り討ちにすることに成功した。
 敵は多くの死者を出し、ほうほうの体で逃げていった。逃げ遅れた襲撃者は村人に取り囲まれたため、敵対行為を諦め、武装を手放し降伏した。村人たちは、敵対行為を諦めた敵を捕まえて捕虜にした。
 一度は死を覚悟しただけに、勝った喜びもひとしおだ。みんなで死体から、財産になりそうなものを戦利品としてはぎとろう。もちろん捕虜の装備も没収する。
 捕虜本体はどうしようか?自分の家で労働力としてこきつかってもいいが、直接の怨恨関係のある相手を手元に置いておくのは、なかなかスリリングだ。そういうカプもめっちゃ好きだが、可能なら、家族を探し出して身代金を要求するか、支払われる金額が割に合わないなら「雑に使える労働力」、すなわち奴隷として何かと売り払いたい。
 なお家族がおらず、あるいは負傷し労働力になれない捕虜は、相手の人徳や気分によってもたらされる運命を受け入れるしかない。

 村は廃村の危機から一転、勝利によって豊かになった。
 村長は、生活にゆとりができたので何をすべきか考えた。とりあえずやることは、隣の村への逆襲である。
 ついでに他の隣の村もいつ襲ってくるのかわからないので、余力を生かして制圧してしまおう。征服である。
 武力を盾に脅迫することもできるし、言うことを聞かない場合は侵攻する。あるいは、同じように他の村の脅威に怯えている村は、積極的に傘下に入ったり、共同戦線を張る同盟を組んでくれるかもしれない。
 もちろん、拠点である村の中心部に、柵や壁で防衛施設を構築することも忘れてはならない。
 こうして軍事力を手に入れた村長は、次々と周囲の村を従えて行った。
 そして繰り返す戦争に伴い、技術が発展していく。

 時間が経つにつれ、近隣にも同じような村の集合体が出現してきた。すなわち、同じように征服を繰り返して発展してきた、軍事力を持った村々が他にも現れたのだ。相手も武装しているので、今までのように一筋縄には征服できない。
 また、村の共同体を構成する人自体が増えたので、誰もが戦うことに向いているわけではなくなった。村には、直接戦うよりも、武器を作ったり、畑や羊の面倒を見るほうが得意な人もいるし、戦うことに強い恐怖を抱く人もいる。
 そこで、村長は戦闘員の構成を兵役による無差別な義務から、自ら戦う意欲があるものに切り替えた。志願制である。
 兵士を集めても、合間に農作業だの牧畜だのをしていたのではちっとも訓練にならない。彼らの衣食住は、他の村人全員から少しずつ集めた資産、租税で賄うのが良いだろう。そして、戦うものには、ただ戦う技術を磨いてもらう。村に戦闘そのものを生業とする戦闘員、職業軍人が誕生した。
 兵士たちには空き時間が増えたので、訓練に集中し始めた。訓練時間が長くなったので、より高度な動きをすることができる。
 例えば……軍団の中で前衛と後衛を分け、弓を持つ組と、槍と盾を持つ組とに分けて運用するなどだ。これで一進一退を続けていた、お隣さんとも決着がつくだろう。

 お気づきであろう。この村長こそが、第一回の話のAさんである。
 なんという裏方努力であろうか。優雅な白鳥は、水の下では全力で水をかいている。

 こののち、Aさんはファランクス戦術で隣村のBさんを完封した。Aさんのみならず、参加した兵士たちの名声は大いに高まった。彼らは家族や親戚に尊敬され、少年たちの憧れになり、若い娘は結婚したがるだろう。(まあこの世界はBL用箱庭なので大体の男性は男性と付き合うのだが)
 命がけで戦場生き抜いた兵士同士の仲はとっても濃ゆい

 男性の同性愛関係にある者で構成された軍隊が古代ギリシャに存在した。テーバイの「神聖隊」と言う。

 彼らの兵士としての価値はとても高い。なにせ村の血税を吸って訓練しているのだから、死んでしまってはそうそう取り戻せない。同じレベルの兵士を0から賄うのは大変だ。
 しかしながらお金がかかった分、その威光はすばらしい。日々を戦闘訓練に費やしてきたAさん軍団には、もはや農具を振り回す農民程度では全く歯が立たない。Aさんの軍事力に恐れをなした周辺の村々はますます恭順し始めた。

 しかし村長改めAさんの戦いは終わらない。
 ある日草原の向こうから、見たことのない生き物に乗った人々が現れた。

③、馬との遭遇

 ようやく平和を手に入れたかのように見えたAさん村。彼らがいつものように外で訓練していると、巨大な足音ともに、見知らぬ獣に跨った、見知らぬ人々が現れたのだった。
 Aさんの軍団はものすごい速度で接近してくる巨体の生物を前に、驚きふためいて、村の防備の中に逃げ帰ってきた。肝の座ったAさんもこれには驚愕だ。
 この生物こそが後にこの世界をも変えるEquus ferus caballus、「ウマ」である。

 初めて馬を見たAさんは、直感的に「これはまずい」と感じた。
 これまでAさんたちは、ウシより大きな草食獣を見たことがなかった。人に勝る体格の生物としては、暴れ牛はたしかに危険だが、それは単に巨大でパワフルな生き物だからだ。同じことはライオンやゾウにも言える。
 ところが同じ動物でも、騎兵の恐ろしさは人が動物をコントロールし、野生動物の利益とは無関係に突進してくるがゆえで、ある種ただの野生動物の上位互換である。ウマ自体が「単に人より大きく素早い生き物」としての脅威を保持しており、その上で、乗っかった人間は敵意をもって攻撃してくるのである。生物の持つ特性が、人の暴力の延長線上に出現する。

 「野生動物」と「使役動物」の違いは、必要とされる対策の難易度に反映される。野生の狼を防ぎたい場合、まず思いつくのは羊を柵で囲うことだ。ところが、羊に損害を与えたい人が狼を放って来る場合、柵を破壊して狼を送り込んでくる可能性が高い。必然的に、狼そのものに加えて「柵を壊す人」も対策しなくてはいけない。人が絡んだ動物は、野生動物と比べると対策の難易度が高い。物事が「複雑化する」ために、理解する難易度が上がるとも言える。
 架空の動物も同じように考えることができる。例えば動物としての野生のドラゴンは、お腹が減ったら人や家畜を襲うだろうが、戦争という支配のための目的を持って出向いてくることはない。だが人間が背中に乗って、戦場での敵対者に火炎放射を命じるとなるとどうだろうか?ドラカリス!
では、ゾウに乗ったら最強では!?
 ゾウ騎兵というのは実在する。戦象と呼ばれる。指輪物語ファンにはムマキルの戦列で想像しやすいかもしれない。
 一見強そうな、というか実際強かったゾウだが、ウマほどは流行らなかった。その理由は、ゾウの巨体は目玉の飛び出るような維持費を必要とすること、バカ高い維持費は移動・進軍の難しさの上昇に直結すること、そもそも訓練する難易度もウマより遥かに高いこと、こういった数々のハードル故にまとまった数を揃えるハードルも高いこと、などがあげられる。いくらゾウでも武装した大量の人間に囲まれると殺されてしまうのは、マンモスやナウマンゾウが絶滅したとおりである。
 また、ゾウにはインドゾウ、アフリカゾウ、マルミミゾウと言ったより細かい分類があり、同じゾウでもインドゾウとアフリカゾウでは特徴や性質は相当異なる。このことから、細かな動物の特性からも、兵科や騎兵の特徴を逆算することができるとも言える。馬の品種の多さに通じるところである。
 みんなも架空の動物から、架空の騎兵も考えて遊んでみよう。

 動物のパートナーが居るキャラっていいよね。※他種族を使役可能な人外はヒトと同じく知的生命枠とする
 謎の動物相手にくじけては今までの努力が水の泡だ。Aさんは新参者たちを注意深く観察した。人も動物も、対処の第一歩は相手の観察から始まる。

 まず、Aさんは、自分と彼らが全く違う生活スタイルをしていることに気づいた。
 Aさんたちは一箇所に家を立て、そこにとどまって暮らしている。村という一箇所の拠点にとどまる定住生活者である。石や木で、比較的しっかりした住居を作っている。
 一方来訪者は、そのときどきによって組み立て式の住居を建てたり畳んだりして、大量の家畜と一緒に移動しなが、非定住生活をしているようだった。なんともサバイバルな人々である。
 
 Aさんは知る由もなかったが、来訪者は遊牧民だった。
 遊牧民とは、牧畜に伴って移動を行いながら暮らす人々である。
 一口に遊牧民と言ってもその生活形態は様々だ。彼らは家畜の食べる草を始めとした、必要な資源のあるところへ移動しながら暮らしている。

 遊牧民とは、生活スタイルによる、とても大まかな区分でもある。共通点は一箇所に定住していないことぐらいだ。
 どんな家畜を育てているかも地域や部族、伝統などで変わる。ざっとあげるだけでもヒツジ、ウマ、ウシ、ヤギ、ラクダ、トナカイと豊富で、もちろんこれらの中にも血統や品種がある。
 フィクションにおいては、架空の騎兵同様に、架空の畜産で遊牧生活をすることもできる。エッチな海中種族がエッチな回遊魚の遊牧をしていたりするのもオツかもしれない。

 わかりやすくするために、今回突如現れた人々は、を飼育しながら、あちこち移動しているとしてみよう。いわゆる「馬で生活している遊牧民」としてイメージしやすいステレオタイプである。
 その生活スタイルはそのまま馬に大きく依存している。彼らはもともと物資の乏しい草原で暮らしており、環境を求めて移動する範囲はとても広く、歩くより騎乗している時間のほうが長いと思えるほどだ。それほど馬の背中の上にいるので、幼少期から乗馬に親しみ、誰もが騎乗スキルを持っている。Aさんは、彼らがこなれた様子で大きな動物の背中に飛び乗るのを、遠巻きに観察して驚いたのだった。

 問題は謎の巨大生物、である。羊のように四足歩行だが、羊より遥かに大きい。毛並みは短く、たてがみと尾はながい。頭を下げて地面を鼻先でつついているので、草を食べているように見える。
 人を背中に乗せることができ、その人の指示をよく聞くようだ。とても速く走ることができる。
 
 Aさんは彼らの暮らしぶりをよく観察したが、遠巻きに眺めるだけで得られる情報には限界があることに行き当たった。
 どうして彼らは、このタイミングで突然来たのだろう。考えても埒が明かない。今まで「いつ襲ってくるかわからない隣村」相手には、互いにいきなり攻撃を仕掛けていたが、今回初見の相手にいきなりバトルをふっかけるのは、どう考えても無謀である。彼らが乗っている巨大生物の倒し方が思い浮かばない。
 幸いなことに、来訪者もいきなり攻撃をしてくることはなさそうだった。もしかすると、相手にとっても、行った先にAさん村があったのは、予想外の遭遇だったのかもしれない。
 Aさんは考えた。もし自分が、引越し先で予想外の人々に遭遇したらどうするだろうか。自分だったら、相手がどのような人々なのか、知りたいと思うはずだ。彼らと接触してコミュニケーションをする余地がありそうだ。

④、集団と集団のふれあい

 Aさんは、来訪者に接触を行うための人選をした。
 新キャラに登場していただく。抜擢されたのはCさんである。Cさんは村の発展にともない近隣の村とのやり取りや物流を仕切りはじめて頭角を現し、村人たちに信頼されていた。Cさんはその生活上、より多くの人々と接しており、社交の経験値の高い。初対面の相手と接することに慣れており、相手の感情や意図を汲み取る力が高い。もしかしたら”異文化”と接するのも初めてではないかもしれない。

 来訪した人々とは言葉が通じないので、ファーストコンタクトは身振り手振りである。人のコミュニケーションは、実は「言葉以外」のポイントがとても多い。非言語コミュニケーションと言う。人は無意識のうちに、表情、ジェスチャー、視線、相手との距離など、他人からさまざまな情報を読み取っている。「沈黙」にも感情はある。

 同棲期間の長いカプが「ン(醤油とって)」「ン(はい醤油)」「ン(ありがとう)」などの以心伝心が可能なのも、人にもともと言語外の情報を読み取る力が備わっているからなのだ。カプの場合は、お互いの非言語的な表現を読み取る力に特化しているとも考えられる。尊い。
 
同じように、殺し合いになるカプでも、片方が剣の柄に手をかければ、その動作の意味はどんな言葉より雄弁である。そののち言葉交わさずとも互いに抜剣するであろう。尊い。
 
長い放浪の末再会したカプなどは、どうするだろうか。永遠の別れとばかり思っていた二人が、お互いに全く予期しないところで鉢合わせたら……口元を抑えて驚愕し、両腕を広げて駆け寄り、抱き合って涙を流すかもしれない。尊い。
 
もっと複雑な感情を伝えることもできる。自暴自棄の末見え透いた破滅に向かう片割れを見る目線一つに、愛と憐憫、思慕と嫌悪が宿るのである。尊い。

 もとの話に戻ろう。
 現代にも「コミュ力」という言葉があるように、他者との高度な意思疎通は誰もが持っているスキルではない。
 しかもこの場合は文化が全く異なる相手と意思疎通しなければいけない。腐女子的に言うと「何が地雷か全くわからん、というかそもそも地雷が有るのかどうかもわからん腐女子に自カプを推薦する」的難しさが立ちはだかる。
 とくに小さな共同体だと、コミュ力の高いCさんのような人材は大変重要である。

 Aさん村長に突如抜擢をされたCさんは、緊張しながらもまず贈与を試みた。
 贈与は文字通り、プレゼントだ。一般的に、贈り物は敵意の緩和や友好的な意思として作用する。(そうでないパターンもまたの機会に話そう)
 来訪者が喜ぶ贈り物はなんだろうか。他者にとっての利益を見抜く技術は、交渉において今も昔も重要である。交渉の最も良い決着は、双方が納得する相互利益、いわばWin-Winの決着だ。かならずうまくいくとは限らないが、可能な限りは目指したい。
 Cさんは、相手が欲しがるものを考えた。例えば、今回の相手は一箇所に住まわないので、畑から取れるもの、特に長期的に管理が必要なものは持っていない可能性が高い。ついでにこの世界のこの時代、高度な金属器は大変貴重であった。第一回の通り、この村は戦争の過程でさらっと製鉄を発見してしまっているので、冶金には相当秀でている。領内で鉄鉱石が出ているのかもしれない。
 品物を用意していざ交渉である。居留地まで接近したCさんは、物品を相手にわかるように置いて、距離をとって待った。
 しばらくすると、あちらもCさんに気づいて様子を見に来た。そろそろと近寄ってくる。相手の顔がわかる距離に鳴ると、Cさんなりに「やる、持っていけ」とジェスチャーしてみる。しばらくの逡巡ののち、相手は品物を持ち去っていった。贈り物の意図が伝わったようだ。

 しばらくすると、面白いことが起きた。相手から贈り物が返ってきたのだ。
 Aさん村のそばに来訪者の小集団が現れ、同じように物品を置いて様子をうかがった。Cさんは意図を理解して、彼らが置いていった物品を持ち去った。この相互の贈り物のやりとりは何度か繰り返され、やがて贈与は互いの返礼を前提にし始め、そして同時に物品をおくり合う交換へと発展した。
 そして展開の早いこの世界では、交換はまたたくまに、お互いに納得する価値を交換する交易へと発展した。
 当初は相手の機嫌を取るためだった贈り物が、交換自体を目的に発展したはじめたことになる。様々な利害関係が生まれ、人の集団が増え、社会は一気に複雑化し始める。
 この世界にはまだ貨幣はない。取引は互いに持っていないものを物々交換である。身振り手振りで、互いの望む価値が釣り合うよう調整する。緊張の瞬間である。両集団の交換係はそのうちつきあい始めると思う。

交易できるかな

 あらゆるものが両者の間を行き来するようになるのに、そう時間はかからなかった。家畜、食料、布、金属、材木、香料といった物質から、糸のとり方や布の織り方、地面を掘って粘土で塔を立て火を炊き金属を得る方法などの技術、言葉や哲学といった概念的なものetc……
 交易の発展とともに、集落の中に取引を主目的とした場所として原始的な市場が形成され、時代は急速に発展し始める。ここまで来ると経済と呼んで差し支えないだろう。

 二つの集団には、どう接点が増えていくのだろうか。
 まず、交易代表者同士は顔見知りになる。すると、お互いの言葉がわかるようになって来た。最初はジェスチャーを伴ったニュアンス、それから単語の意味、発音を真似たりして、互いの意志が通じるようになっていく。相手と自分の似ているところと、似てないところがだんだんわかってくる。やはりカプになるのも時間の問題だ。
 
経済と一緒に人間関係は拡大していき、結婚を利用した血縁関係など、より積極的な政治への動きも出現し始める。

 気づけばCさんはAさんの元で出世していた。今や彼は村の経済に対して巨大な役割を背負っている。

 Cさんの活躍で、定住者と来訪者は、しばらく穏便な距離感でいた。様々なものが行き交って、生活も豊かになった。表面上は平和な期間が続いているように見える。
 だがAさんの心中は穏やかではない。
 先述の通り、Aさん自ら開いた交易網は、またたくまに拡散し、Aさんの領地を超えて村々一帯に広まってしまった。素晴らしい物流パワーである。Aさん領も発展するが、相変わらずいつ襲ってくるかわからない隣村の領土も発展する。利害関係は複雑化し、誰が誰に好意や悪意を持っているのかは見えづらくなる。良いことと悪いことが、同時に天秤に乗っている。
 その点、Aさんの元で出世したCさんは抜かりなかった。彼はあっというまに語学に長け、輸送を担う人々から、近隣の情報を尋ねまくっていた。原始的だが諜報である。例えば金属を輸送する人々が何度も出入りしている土地は武装する可能性が高いかもしれないし、食料を買いだめている村は遠征してくるかもしれない、などの情報を集める。
 情報が集まり始めると、Aさんの危機感は具体的になり始めた。敵対している集落が、遊牧民たちを自軍に取り込むかもしれない。あるいは、遊牧民にとりこまれた敵対者が、新たな味方を唆すかもしれない。そうなると非常に厄介だ。Aさんにとって、「平和とは戦争の準備期間」でしかないのだ。

⑤、世界を照らし、焼く炎

 見計らったように、ご近所で事件が起こった。
 Aさんのご近所のFさんの共同体と、来訪者が小競り合いを起こしたのだ。

 Fさんの村は、Aさんと同じように辺縁を巻き取りながら発展し、武装している共同体である。
 些細な喧嘩を発端に人が集まってバトルが発生してしまい、勝敗は痛み分けになったが、遊牧者と定住者双方が死者を出した。
 当事者になったお隣Fさんの集団はカンカンに沸騰して、ホットヘッドになっている。Fさん村は、来訪者を侵略者とみなしたようだ。露骨に防壁を作り始め、守備にあたる兵士を増やし、村の外への対策を強化し始めた。

 来訪者たちにも重要な問題が発生した。
 報復すべきか否か、内部で意見が分かれた。
 ひとたび死者が出てしまえば、人命は人命でしか贖えないという感覚は、現代の人々でも持っていると思う。
 しかもこの世界の人々は、非常に主観的な世界観に生きている。その人の目で見た善悪を、周囲の人間は判断しなければいけない。人々は揃いも揃って身内びいきで不公平だった。
 フィクションにおける復讐の是非はよく議論されるが、その場合それなりの法の統治ありきの倫理観が前提として想定されていることが多い。この世界にはまだ明文化された法律はない。ルールと呼べるものはすべて単に習慣や伝統としてだけ存在していて、社会圧や利益の有無で成り立っている。人倫感覚も赤ちゃんの世界なので、より極端な復讐の肯定がされる。つまり「報復は義務」であり、「復讐を行わないものは仇よりも邪悪」である。本物の男本物の女、様々な本物のなにかであるためには復讐者でなければならないのだ。身内を殺されて黙っているのは偽物である。

 ここで、来訪者の中で報復を主張するほうがDさん中心の集団、穏便に和解したい集団をEさん中心の集団とする。
 Dさんは、騒動で亡くなった人の血族だ。突然家族を殺されて、だれがのうのうと引き下がるだろうか?下手人だけでも引っ張り出して先祖伝来の聖なる伝統を行うべきだ。
 Eさんは、武装に慣れている集団といきなり敵対するのは無謀だと主張した。彼らがどのように戦うのか知らないし、Fさんの村は露骨に防備を強化している。
 構築された防衛拠点を攻めるのは、とても難しい。
 理由は色々あるが、まず勝利条件が違う。攻める側は相手を倒しきるか、降伏させなければ勝利とは言えないが、守る側は単に撤退を選ばせても勝ちだからである。攻める側はうかつに消耗してから諦めて撤退を選ぶと、相手がジリ貧で撤退するのに気づいた守る側は、打って出て追撃してくる。
 Eさんは、いきなり敵対行為に及ぶのは現実的ではなく、早々に和解すべきと主張した。
 EさんDさんに睨まれながら交渉を試みたが、Eさんが想像していたよりずっと、Fさん村は頑なだった。彼は使者を適当にあしらい、追い返し続ける。

 Eさんの誤算は、Fさん村が幾度とない戦闘を繰り返し、一度ならず侵略者を退けてきた血の気しかない武装集団で、そもそも対話にそこまで情熱を持っていなかったことだった。
 いきなり武装の強化に踏み切る人間不信のFさんのことである。彼は自分の村人の行いのほうが正当であると信じていたし、そもそも「下手人の交換だけで解決したい」という話を全く信じていなかった。
 また、幾度も戦闘をこなしているFさんは、上記の「拠点がある防衛側は有利」をよく理解していた。つまり、Fさんが防備を固め始めたのは、一度揉めた相手はまた襲撃してくるはずという人間不信に基づいており、和解も襲撃も起きない場合、もちろんFさんたちが逆に襲撃するのである。彼にとってこの世界はすべてが敵対的で、信じられるのは苦楽をともにしてきた同じ共同体の戦友だけであった。身内を敵に売るなどありえない。つまりFさん村は、来訪者たちが話し合うよりずっと早く、武力による解決を選択していたが、Eさんたちは知る由もなかった。
 何度も来る使者にイライラしてきたFさんは、ついにEさん派の使者を殺して村の外に死体を投げ返した。わかりやすい宣戦布告である。死者が増え、ついにここまで我慢していたDさんの我慢が限界に達した。
 「足を引っ張る身内」というのは下手な敵対者よりよほど腹立たしい。もはや内紛である。最初の揉め事が、新しい火種になってしまった。最終的に、Dさん派はEさん派の責任を厳しく追求し、先に死人を出したのと似たような小競り合いを起こしたあと、Eさんと、Eさんの中心的なメンバーを追放してしまった。

 ここで、今まで外部から様子をうがっていたAさんがすかさず行動に出た。
 目をつけたのは、ほっぽりだされたEさん集団だ。
 Aさん自ら出ていって、Eさん集団に、こんな条件を提示した。
「自分に従うなら、領地に住まわせてやる」
 個人間の取引ではなく、集団を前提にした交渉、外交である。……いささか弱みに付け込みすぎではあるが、一応双方の利益を提示してはいる。
 AさんはEさんたちの馬と人材が得られ、Eさんは生き延びることができる。

 Eさんは迷った。
 上の方で言ったように、この時代、共同体から追放されると生きていくのは非常に難しい。特に家畜を遊牧する人々は、家畜に食事を与える場所が封じられてしまえば致命的になる。遊牧民の家畜は、財産と食料をそっくりそのまま兼ねているライフラインである。家畜の途絶は餓死を意味する。Eさんたちは、追放時にかなりの財産を失っていた。このまま冬がきたら一巻の終わりだ。追放とは、ときに婉曲な死刑である。Dさんは、Eさんを死なせる気だった。自分自身で手は下せなくとも。
 そんなおりに提示された、Aさん領の肥沃な土地と強力な物流は魅力的だ。Aさん本人も権勢を誇っているので、庇護を受けるメリットは大きい。道を違えたかつての知り合いたちの脅威も軽減される。
 だが、提案を飲むことは、同時に支配を受けることだ。そうなればAさんは租税を徴収するし、Eさん集団の風習はAさんの領地のルールに上書きされる。言語も違う。自分たちは、新しい環境に馴染めるだろうか。
 しかもAさんは露骨にこちらの弱みにつけこんでいる。ただでさえ制限される自由が、どこまで奪われるのかは未知数だ。
 なにより、もしAさん傘下に入れば、Aさんは遅かれ早かれDさんと敵対するだろう。もはや壊れた関係とはいえ、かつての顔見知りと剣を交えることになる。生きていくためには仕方がない。だが、例えそのとき勝ったとして、見知った人々が死屍累々となれば、いかに野蛮な古代人といえど、心になんのしこりも残さないのは難しい。(離別の苦痛が耐え難い激痛なればこそ、彼らは復讐を重んじたのかもしれない。)

 迷った末に、Eさんは提案を呑んだ。
 結局、今のEさん集団が食っていくには、他に選択肢はない。追放時に激減した羊と馬だけでは冬を越すのは無理だ。
 自由は尊いが、追放されてなお、自分についてくる人を巻き添えにするわけには行かない。生きていればまた機会はある……かもしれない。
 こうして、Aさんの村に、戦力に馬に跨ったEさん一行が加わった。
 Aさん軍団に少数ながらも騎兵が誕生した。

 こうしてAさんはちゃっかり漁夫の利を得たが、Aさん共同体の外から見れば、とんだ抜け駆けである。
 「いつ襲ってくるかわからない連中に先制攻撃する」をモットーにやってきたAさんは、周辺の村が来訪した遊牧民と結託することを恐れ、例のごとく自分がその第一人者になることでそれを回避したのだ。
 この結果、Aさん共同体と周辺の共同体との関係は極度に悪化した。
 最初に来訪者と小競り合いを行ったFさん集団は、当然面食らった。いきなりAさんが自分たちの敵対者を取り込んだように見える。Fさんは、Aさんほど諜報に力を入れてはいなかった。いきなりAさんが来訪者の騎兵戦力を保有し始め、一体なにがおきたのかわからない。
 また、来訪者の片割れDさん集団にも寝耳に水である。今までただの交易相手だったAさん共同体が、自分たちの追放者と突如結託したのだ。
 Aさんは、Dさんが死なせるつもりで追放したEさんを巻き取った。ただでさえ面目丸つぶれなのに、もしかしたらEさんは、軍事力を保有しているAさんに余計なことを唆すかもしれない。(実際にはAさんがEさんをそそのかしているのだが……)追放ではなく処刑で手を下しておけばよかったと悔いてももう遅い。


 そして当のAさんは、すかさず来訪者Dさんを挑発した。
 一番最初の記事で、「戦争が起きるのは、話し合いに失敗したとき」ということを書いたと思う。
 AさんとEさんは、脅迫的な条件ではあったものの、話し合いによって一応は無血で合意に成功した。これはうまくいった例だ。
 その逆に、あまりに関係が悪いとそもそも話し合いが起きさえしないことがある。Aさんはわざとこれを狙ったようだ。Aさんが追放されたEさんと結託したことによって、Aさんと追放したDさんの交渉の余地はなくなってしまった。
 Aさんは、相手に冷静になる余裕を与えない重要さを理解している。今、定住者Fさんと来訪者Dさんが決裂したまま混乱している瞬間に、両名が共通の敵に気づく前に、片方だけでも潰しておきたい。
 近場に理由なく軍隊を出没させ威圧するなどの嫌がらせの他、Cさんを通じて流通の多くを把握しているAさんには、経済的な嫌がらせも可能だ。
 この期に及んでは、Eさんも覚悟を決めた。運命とは皮肉である。自らの共同体のために戦いを避けようとしていたEさんが、その共同体と戦うことになってしまった。
 もはや決裂は避けられない。

 となれば、さあみなさんお待ちかねのバトルである。

後編に続く。
腐女子の皆さんは、現時点でのDさんとEさんの受攻を考えてみましょう。

参考文献

書籍
戦闘技術の歴史1 (S.アングリム他、創元社、2008)
戦闘技術の歴史2 (S.アングリム他、創元社、2009)
権力と支配 (マックス・ウェーバー、濱嶋朗訳、講談社、2012)
興亡の世界史 スキタイと匈奴 遊牧の文明 (林俊雄、講談社、2017)
馬の世界史 (木村凌二、中央公論新社、2013)
交易の世界史 上 (ウィリアム バーンスタイン、筑摩書房、2019)
外交 多文明時代の対話と交渉 (細谷雄一、有斐閣、2007)
外交談判法 (カリエール、岩波書店、1978)
贈与論 (マルセル・モース、筑摩書房、2009)
沈黙交易 ――異文化接触の原初的メカニズム序説―― (P・J・H・グリフィン、ハーベスト社、1997)
交易する人間(ホモ・コムニカンス) 贈与と交換の人間学 (今村 仁司、講談社、2016)

論文
攻撃行動に対する幼児の善悪判断の発達的変化 (越中康治、広島大学大学院教育学研究科紀要、第三部55号、2006)


Wikipedia、他

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