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支援職がぶつかる"他職種連携"の壁を乗り越えるために

ー"他職種連携"という課題にぶつかっている全ての対人支援職のみなさまへ。
わたしたち専門職はこの課題から何を学び、これからの支援活動をどう歩 んでいけばよいのでしょうかー

イベントの目的

先日、Assembleでは、【精神科医VS臨床心理士】ふたりの臨床家が患者のこころに向き合う-二つの視線の交差点-という、架空事例をもとに事例検討会を開催しました。

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このイベントは、立場や役割・受けてきた教育が異なるふたりの臨床家が、両者の視点から見立てあうことを通じて、共通点と相違点を探求していくことが目的でした。そしてその探求を経て、よりよい協働関係を構築する手がかりを得ることも一つのテーマとなっていました。

当日参加と動画視聴を合わせ、約50名の臨床家のみなさまがお申し込みくださり、これらのテーマに高い関心が寄せられていることがわかりました。

イベント終了後、わたしたちが辿り着いたことは、簡単に言ってしまえば、「着眼点は同じだよね」ということ。また「互いの専門性を理解し信頼することがクライアントへのよりよい支援につながるよね」ということでした。

おふたりの共通点と相違点

事例を読み解く中で、ライフイベントに着目する点はおふたりに共通したものとなりました。
特に、いじめ、離婚、死別、失恋といった"心がダメージを受けたであろうイベント"に焦点をあて、クライアントの心理的な意味づけを想像し深い理解に至るプロセスは共通しておられました。
その中でも、阿部先生は、特にクライアントの言葉を、それが発生した文脈にまで思考を巡らせ、意味を正確に捉えることを大事にしておられました。岩倉先生は、ストーリーの連続性と非連続性という点に目を光らせていらっしゃったのが印象的でした。

イベントの中で、岩倉先生がご自身と阿部先生の相違点について、「僕はより主観的(サイコロジカル)にみている。阿部先生は客観的事実やバイオロジカルな視点から、少し引いてみている」とおっしゃっていました。
より内的な世界に目を向けサイコロジカルな意味づけをすることが得意な臨床心理士と、ソーシャル・バイオロジカルな視点を合わせ包括的にアセスメントする精神科医という差異がありそうです(もちろん、この差異はおふたりの臨床におけるオリエンテーションによるものであり、全ての臨床心理士と精神科医の相違点というわけではないと思いますが)。

相違点がもたらす臨床的意義

相違点があるということは、どちらが正しいということではなく、それだけクライアントをさまざまな視点から、より立体的に理解することにつながることを意味していると思います。
つまり、片方が見落としがちな視点をカバーでき、クライアントがよりよく生きていくために別の視点からのアプローチを検討できるということです。
また、安易に、そして盲目的に自分の見立てやアプローチが正しいと過信することは、臨床家にとってはリスクとなりうるので、別の視点から吟味することは、そうしたリスクを小さくしてくれると感じています。

例えば、「眠れない状態が続いている」というクライアントに対して、臨床心理士は、不安に焦点をあて、サイコロジカルな意味づけを探求しようとしがちです。
しかし、アルコール問題による生物学的な要因が症状を形成している可能性もあり、精神科医の専門性を発揮することが優先的である場合もあります。

連携の前提にある”他職種理解”

近年、医療や教育、福祉など対人支援職の現場に求められているのは”他職種連携”ですが、このテーマについて、現場はまだまだ試行錯誤の段階にあると思っています。
専門職という職人は、その教育課程において、連携に必要な知識やトレーニングを十分に受けていないのが現状です。
そのため、その大半は連携のあり方がわからず、自らの専門性が脅かされる危険を感じてストレスを抱えたり、その正しさを誇示するために他職種を非難したりすることが起きやすくなっています。
このような現場で行われる支援は、クライアントにとってよりよいものを提供できているとは言いがたく、不利益をもたらすことさえあると考えています。

今回、このイベントを通じて浮き上がったのは、"他職種の専門性への理解と信頼"でした。
お二人の連携の姿勢は、相手の専門性を理解しよう、自分の専門領域なのかどうか真摯に判断しよう、専門性が相手にあると判断した時には、自分の専門性から見えた見立てを加えて信頼してリファーしよう、というものでした。

他職種理解の機会をつくり出していきます

対人支援の領域では、専門職だけが集まって勉強をする場は多いものの、他職種がフラットに意見を交わし、相互理解を深める場が少ないことが課題であると思っています。
一方で、クライアントへの想像を働かせ、深い理解に至ることを専門とする支援職ならば、他職種への理解にもその想像力を働かせることができるのでないでしょうか。

Assembleでは、これからも他職種の先生方をお呼びして、事例検討会や支援観をお話しいただくような対談の機会をつくっていきたいと思います。
他職種連携、協働が求められている現代社会において、そのような機会をつくり出すことで、よりよい支援が提供されることを目ざしていきたいです。

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