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ビビリ粗品と限界効用逓減の法則


 3月20日放送のアメトーーク!ビビリ-1グランプリが本年度も大いに盛り上がりを見せ、放送後数日経過した今もSNSでは「粗品」と入力すれば検索予想に「ビビリ」が挙がる。ビビリ粗品くんへの視聴者の反響は、3時間番組で粗品くんのビビリロードVを引っ張りに引っ張ってトリに置いた製作者の予想通り高かったと言える。参りました。

 その理由を”昨年のビビリ-1王者だから”としてしまうのは安易だが、ではビビリ-1王者であれば誰しもここまでの注目を集めるのか?と言うと、二本矢印の必要十分条件の問いではないが、必ずしもそうではないと思う。詰まるところ粗品くんだからこそ、こう、見ている人達が”是非に”見たいと思う理由があるのではないか、と軽率な思考停止した女ファンとしては贔屓目に考えたいのである。

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 そこでこの欠片の知性も働いていない発想を担保してくれるお堅くて響きが難し(そうな)法則を求め、今回モラトリアム文系大学生が行き着いたのが限界効用逓減の法則だ。大学が無くなった今我々はさながらアテネ市民であるので、この世にも低俗な時間の使い方に白目を剥かないで許して欲しい。始まれば私には必修の再履が待っている。

 話、いや時を戻そう。独経済学者ゴッセンが提唱したこれは超簡単に言うと、ケーキは一口目が最も美味しく、暫くしたら味に飽きてくるので我々はコーヒーを挟むという話だ。つまり、ケーキ単体よりもケーキセットの方が満足度が大きいのである。人間はどんなに好きな物でもやっぱり飽きてくるので、変化をつけることである程度ずっと満足します、というのを超格好付けるとゴッセンの第一法則(限界効用逓減の法則)と第二法則(限界効用均等の法則)になる。第一法則が「消費で得られる感動(=効用)は回数を重ねるごとに減っていきます」ということで、第二法則が「だから一つのものでは無く分散して消費すると、なんか良い感じに飽きません」ということを説明している。
 これは色々な場面に当てはまり、例えばアルバイトも続けていると飽きてくるので変えるし、結婚してても不倫はするし、酒好きは月日と共に愛飲する酒をハイボールからワイン、ビールへと転々とするし、ディズニー映画は初見が1番泣ける。

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 で、粗品である。

 19才での鮮烈なオールザッツ漫才優勝、M-1・R-1史上初かつ最年少二冠王者、同志社大学(中退)、弱冠27才にしてガヤ芸人ではなく、バラエティ番組のMCか雛壇でもMCのすぐ隣の最前列の印象が強い。賞レース総舐め、素人がすぐ真似したくなるキャッチーな体言止め突っ込みの発明、今をときめく第7世代の筆頭、特技はあのラン・ランと共演する程のピアノ(他の楽器も演奏出来、公式プロフィールには音楽全般と記載)と絶対音感、趣味は一度に何十万円溶かすギャンブル。
 もう、一言で表すなら、強い。何が出来ないんだ?動物の名前言えないだけ(注1)では?なんというか、キャラ立ち華やかな全方位型次世代小栗旬である。風格も実力も年齢に対して十分過ぎるのである。あの座った時の凛と伸ばした背筋、場に物怖じしないトーク力、大御所たけしさんへの激ヤバ突っ込み(注2)や、つい先日の競艇52万賭け、同志社大学の中退(一悶着あったようですが...)など、様々なエピソードから伺えるが肝の座り方が常人ではない。お笑い戦闘力が数値化出来るなら間違いなくLv400は超えている。

 そこにビビリ-1の女子顔負けに悲鳴を上げまくり床を転けまくる粗品くんがどういう効果を与えるか。


虫嫌い。

大きい音こわい...

むしきらい!!!水!!!!!!?段ボールおちこわい!!!!!!へび?!!!!虫こわい!!!!!!!!!!!でんき!!!!!風船!!!!!!!!!ヤオ!!!!!!!

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(えっ何?かわ?えっえっ何?そしなくん?そしなくん?えっ?ヤオ?えっ?保護?えっ国?動く?指定遺産?)

 上記は思考停止したキモオタの一例であり普通の方は多分こうはならないだろうが、見事に限界効用均等の法則が1人の中で強烈に作用している。しっかりした粗品くんはしっかりした粗品くん単体よりも、しっかりした粗品くんとヤオ!粗品くんの両方見せた方がよりモンドセレクション最高金賞となり、視聴者はより粗品くんを気になる存在として認識するのである。

 人間はポテチの後にかっぱえびせんに行くよりもチョコレートに行きたい。だからチョコポテチは天才だ。欲張りなので一回で二度楽しみたいし、その振れ幅が大きいと大満足なのである。昔から少女漫画の主人公は最初は優しい幼なじみに揺れ動いても、最終的にクラスの不良ツンデレと付き合うのはそういう理由である。より“ドキドキする”とは、満足度で言い換え可能だ。つまり許容範囲の飴ムチギャップが勝つ。
 その意味では、ひとりの人間を応援しているオタクはある意味皆お得かもしれない。人間は複雑怪奇であり、誰しも一度に二度は美味しいことになる。


 そういえば粗品くんは以前のロンハーでM-1以降あの「いや〇〇!」ツッコミを封印していると話していたが、確かにそれも理にかなった戦法であると言える。無駄に何発も連続された場合一回あたりに視聴者が得られる粗品効用—最も単純化すれば面白さ—は逓減(徐々に下がる)し続けるので、そうであれば他のギャンブラーとかビビリとか新しい印象を与え、打つタイミングを考えあれをキメた方が満塁ホームランが狙える。彼は自分の売り方をよくわかっていて結局ビビリ含め隙が無さそうだ。

 というかそもそもビビリとは何か考えたら自己防衛本能の強さ、進化の中で獲得した優れた危険予測能力の高さであり、頭の良さが別の形で現れているのかもしれない。そろそろセンターとかやめて世界共通ビビリ模試とか始めて稀代の天才を発掘しよう。令和だし。問題用紙を開けたら虫の模型が乗っかっている仕様だ。

 我ながら自分の文章はどうも毎度尻窄みで嫌になるが、兎角ビビリ粗品くんへの需要はゴッセンのお墨付きなので各所前向きに小出しにして欲しいし、ビビリ-1で気になった方は一度彼らの公式YouTubeチャンネル(注3)視聴してみて下さい...毎日更新してくれる律儀さとコンテンツの乖離がまた面白いと思います。


注1 :  粗品さんは知識に極端な偏りがあることが”粗品の無知”として偶にネタにされる。動物の例では、3月5日放送「霜降りバラエティ」内の企画「粗品ネア」で、パグの画像を見てブルドックの小さい版、”ミニドック”と回答し新たな犬種を生み出した。基本的に小型犬をチワワと捉えていそうな節がある。

注2 : 「世界まる見え!テレビ特捜部」にて、脱走劇のVを観た後のたけしさんと所さんがあの調子で長話を始めたので、流石にボケだと思った粗品さんが「いやずっとなんの話しとんねん!」と斬り込み、見事場が静まり返ったエピソード。隣に居たせいやさんも流石に動揺したようだが、2月27日放送「アメトーーク! 僕らビミョーな6.5世代」でも濱家さんが第7世代に対しては上の世代が(タメ口突っ込みを許すなど)甘くそこが強いと話されていたので、個人的には立ち回りとして大正解なのでは無いかと思う。おじいちゃんと孫では無いですがそんな感じですか。


注3 : しもふりチューブ。毎日18時頃更新される。


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