犬と僕


久しぶりに絵の具を引っ張り出した。本当は淡い色が良かったけど、白がなかったので諦めた。

犬が季節の変わり目でご飯を食べなかった。

夕方の時にもう一度ご飯をあげてもお皿には残っていた。
しばらくした後に「もう下げたいし食べて」って家族と話しながら犬に話しかけたら、お皿の方に向かい、黙々と食べ始めてびっくりした。察しが良い犬だし、本当は何を言っているか理解しているんじゃないか?と思う。その犬の好物はチョコレートだ。犬に与えたら死ぬことを理解しているからチョコレートと名をつくものはあげたことがないのに、帰ってきたら犬は鞄の中を荒らしていて、チョコレートの銀紙が食い破られて散乱していたりする。可愛いぬいぐるみだけをお気に入りにする。ピチューと、ジェラトーニさんと、ピンクのハート形のクッションが、同じ部屋で散らばっている。

犬は少し前にうちにやってきた。
初めの頃は赤茶色の毛並みだったが、成長するつれ薄茶色に変わった。
私は動物が苦手だったから、ゲージの中にいるのを見つめたりするだけだった。そこから解放された時は、自分の部屋に逃げていた。犬は怖かった。
しばらくすると、犬は逃げる私をよそに私の部屋までくるようになった。追いかけられた。階段まで登るようになった。ベッドの上でおさまっていたり、床の上で溶けてみたり、私のひざに登ろうとした。
いつの間にか私は彼女に慣れることができて、抱っこをするようになったり、眠る私の背中の上で座ることを許していた。
彼女はいつも温かい体温で私に優しさをくれる。とても頭が良くて、気品溢れる方だ。いまではすっかり、犬のことが大好きになった。

犬はいつも寒がりで、勝手にヒーターの電源をつけたり、ついていないヒーターの前で座っていたりする。クリスマスの日に、犬に犬用ケーキをあげたら文字通り目が輝いていて犬が笑っていたから、その様子を家族とめちゃくちゃ笑った後に、珍しく雪が降っているから外に出してみよう、と犬を外に出すと、さっきまでのとけた笑顔が嘘みたいに消えて、虚無につつまれていた。寒がりなのは、犬も関係ないらしい。