遺ったものと勝手に受け継ぐもの。

先日のnoteで父が逝去した話を書きまして。
カメラを勝手にもらった話を綴りましたが
もうひとつ「?」というものが発見されたので
そのお話を。
父の膨大な量の仕事資料がある棚を漁っていたら
古い箱がコロンと出てきたのです。
こちら。

画像1

神戸シャツという神戸にあるオーダーメイドのシャツ屋さんの箱です。
父はお菓子の箱や缶に、昔の写真を入れたりしていたので、ここにも
なにかしらの写真か資料でも入っているのかなと思って開けたところ

画像2

まっさらな布とお仕立券。
「まーーーた、そのまま忘れさられている〜〜!」と
前回の二眼レフカメラを思い出しつつ、お空に向かってため息をついて
母に「これなに?」と訪ねたら
「あ〜〜。昔お世話になった方からもらったものの、なかなか
 作りにいけないし、お世話になった方からだから勿体なかったのかも」
みたいなザ・父親なエピソードを聞かされた次第だったのです。
発行が47年。これ昭和47年だと思うんですね。じつに1972年。
自分が生まれる7年前。いま計算したら48年前!?
(やべえ、俺の年齢がバレた)
ただ、本当に布の部分は一度も開けてないらしくて捨てちゃうのも
忍びないなあと思い、じゃあ仕立て券は使えないけど
仕立ての代金は自腹で出して、この布が使える状態ならば
仕立ててもらおうかなと思ったのです。
こういうの、多すぎやぞ。父よ。なんであなたのカメラに続いて
俺がポケットマネーでいろいろやっているんだ……。


ということで、神戸シャツさんのホームページとかメールでの
問い合わせ先あるのかなと思ったら、なかったので
とりあえず、神戸シャツさんが紹介されていたネット記事にあった
メアドに「これこれこうで」「お支払いするので布の状態だけでも」
みたいな「おまえ何年前の話してる?」と叱責されても
仕方ない大変に大変に失礼なお問い合わせをしたのでした。
数日後、2度目の鑑賞となった『TENET』を見終わると着信履歴があり
市外局番から神戸っぽいとのことはわかったものの、その日は遅かったので
翌日、お電話を差し上げまして「本当に厄介なお話ですみません!」と
謝り倒そうとしましたら
「弊社にパソコンというものがなくてご連絡が遅くなり…」
と、こちらが申し訳なくなるご挨拶からいただき
状況の確認等をお話させて頂いたところ
「弊社のポリシーとして、お仕立券をお持ちでしたら
 いつのものでも対応いたします」
というド肝を抜くご回答。約50年前のものですよ!?
め、め、名店は違う〜〜〜と白目をむいていたら
すでに東京支店にお話を通してあるので、布のご確認をしますとのこと。
ただし、布が無事であっても
「当時とパターンが違っており、恰幅によっては布がたりない可能性」
「布の状況により、合わせなどをしない方法になるかも」
などなどの諸注意をいただく。
いや、そもそも、このお仕立券が生きているなんて思ってなかったので
そんなご丁寧に……。と、ただただ神戸のほうに土下座しつつ
何度も「本当に…」「あの…」とお電話をしている次第。

で。行ってきました。
東京支店。
ここで「あの、先日お電話でお問い合わせを」と話したら
店員の方がすぐに対応くださり
箱を出して「これ……なのですが…」とめちゃくちゃに申し訳なさそうに
出したら「うわ〜(笑顔)」っていう珍しいものを見た反応。
いや、そりゃそうですよね。古いですもんね。
僕もそうなります。
「箱がかわいいですね」「フォントもいいですよね」など話をしつつ
さっそく箱から布を出して確認。
まったく箱から出していなかったこともあるのか
折り目部分に少し染色劣化があったものの布自体は大きな問題はなく
「折り目部分の色などがご了承いただけるなら」と快諾くださって
さっそく採寸とどういった形にするかを話して完了。
来月できるとのことです。

なんか不思議ですね。
父が約50年作れなかったシャツ(絶対に忘れてた)を
子供の自分が問い合わせして、作ってもらう。
父が恩師からもらった布をその息子が仕立ててもらうっていう
変な構造ですが、カメラと同じく可能な限り
これも長く着ていきたいなあと思っております。
眠ってた50年を超えるのはさすがに自分の年齢では
難しいかもしれないけど。
どんなシャツになるのか楽しみですね。




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