教育基本法前文と教育勅語

§1-1 二つのテキストの背景

 以下§2-1に教育基本法前文、§2-2に教育勅語を載せます。

 教育勅語復活を唱える議論が起きており、これを支持する国会議員もいるほどです。これについては、まず、太平洋戦争を引き起こし敗戦によって否定されている天皇体制である明治政府が発布した明治天皇の詔が教育勅語というところが、現在の日本政府の支配下では復活し得ないテキストであるということだけは皆様におさえて欲しいと思います。

 これに対し、天皇体制政治を否定した現在のシステムで、この教育勅語にあたるものは、教育基本法前文でしょう。
 では、ここで§2−1、2に目を通してもらいましょう。
 教育勅語の読み上げで教育現場で行われていたと言われる12の徳目ですが、特に悪いことは何もなく、みんなが書いてある通りに振る舞えば良い社会ではあるでしょう。まあ、こんなこと言われなくても守れるくらいに日本人にはなって欲しいかなくらいには思いますが、言うは易し行うは難しですから(自戒を込めて、アッハッハ)。ただですね、徳目の後に続く
「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」
(国に危機が迫ったなら国のため力を尽くし、それにより永遠の皇国を支えましょう)
 の部分なのです。これ、現在、岸田内閣が日本国憲法改憲で最もねちこみたい緊急事態宣言と同じです。いかなる場合でも人権を排除できないとする現憲法に背反する部分を含むのです。また、教育勅語は明治憲法下のものですから、とにかく日本という国家のために日本国民が存在しているという前提なのです。

 他方、教育基本法全文では、日本国民の教育によって実現したいものは、「世界の平和と人類の福祉の向上に貢献する」ことであり、教育勅語に比して、かなり壮大なものとなっています。だからといって、日本の伝統の継承を目指すとも書いてあります。

§1-2 教育勅語の復活は支持できません

 現段階では否定されている天皇体制政治を復活したいと願う国会議員が多勢を占め、復活のための正当な手続きを経て復活を勝ち取った暁には、もちろん教育勅語も復活はできるでしょうし、その活動が禁止されることもありません。

 そして、その国会議員を選ぶのは私たち国民です。あの日中戦争、太平洋戦争を引き起こした体制を復活させた方が、私たち一般人が幸せになるとは考えにくいですが、そちらが多勢を占めたら、そういうことになるでしょう。そして朕の臣民で自由のない生活を送るか、非常事態の時は朕の臣民は日本国(じゃあさ朕じゃねえか)のために戦いに行くことを強いられるのでしょう。ですから、私は教育勅語の復活を聞くと背筋が凍る思いです。
 もう、自民党は天皇家の番頭さんだなと思います。そう言った人たちは、投票率が落ちれば落ちるほど、天皇家の票で政治家として存続してしまいます。他の政党がダメであっても、自公をのさばらせて私たちが朕の臣民になったら、日中戦争や太平洋戦争など起こされた時に何も私たちを守ってくれるものは無くなります。教育勅語の復活論は、これを支持する政治家や言論人が皇室の番頭さんであって、私たちのための政治はしてくれない政治家や人だと認識できるリトマス試験紙みたいなものです。

§2-1 教育基本法前文

 我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。

§2-2 教育勅語原文

教育ニ關スル勅語(明治二十三年十月三十日)
 朕惟フニ我力皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ徳ヲ樹ツルコト深厚ナリ我力臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ済セルハ此レ我力國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ徳器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨り朕力忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先遺風ヲ顯彰スルニ足ラン

 斯ノ道ハ實ニ我力皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其徳ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ

教育勅語(現代語訳 教育勅語(現代語訳) https://i-peace-ishikawa.com/2017/04/27/教育勅語(現代語訳)/  様より)

投稿日: 2017年4月27日 作成者: 県平和センター

教育勅語は、明治天皇が首相と文相に自ら与えた勅語であり、文中では「爾臣民」(なんじしんみん)、すなわち国民に語りかける形式をとる。
まず皇祖皇宗、つまり皇室の祖先が、日本の国家と日本国民の道徳を確立したと語り起こし、忠孝な民が団結してその道徳を実行してきたことが「国体の精華」であり、教育の起源なのであると規定する。続いて、父母への孝行や夫婦の調和、兄弟愛などの友愛、民衆への博愛、学問の大切さ、遵法精神、一朝事ある時には進んで国と天皇家を守るべきことなど、守るべき12の徳目(道徳)が列挙され、これを行うのが天皇の忠臣であり、国民の先祖の伝統であると述べる。これらの徳目を歴代天皇の遺した教えと位置づけ、国民とともに天皇自らこれを銘記して、ともに守りたいと誓って締めくくる。
12の徳目
父母ニ孝ニ (親に孝養を尽くしましょう)
兄弟ニ友ニ (兄弟・姉妹は仲良くしましょう)
夫婦相和シ (夫婦は互いに分を守り仲睦まじくしましょう)
朋友相信シ (友だちはお互いに信じ合いましょう)
恭倹己レヲ持シ (自分の言動を慎みましょう)
博愛衆ニ及ホシ (広く全ての人に慈愛の手を差し伸べましょう)
学ヲ修メ業ヲ習ヒ (勉学に励み職業を身につけましょう)
以テ智能ヲ啓発シ (知識を養い才能を伸ばしましょう)
徳器ヲ成就シ (人格の向上に努めましょう)
進テ公益ヲ広メ世務ヲ開キ (広く世の人々や社会のためになる仕事に励みましょう)
常ニ国憲ヲ重シ国法ニ遵ヒ (法令を守り国の秩序に遵いましょう)
一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ (国に危機が迫ったなら国のため力を尽くし、それにより永遠の皇国を支えましょう)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?