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『ありがとう』という言葉の持つ残虐性(#93)

Twitterで流れてきた1つの漫画。
ふだん漫画はほぼ見ないが、何となく読んでみた。
読んでみたら今の社会を反映していてとても面白かった。読むタイミングによって思うことが違う気がするので、今の感想を残しておこうと思う。

あらすじ(ネタバレあり)

↓ここから先はネタバレありなので、漫画を読んでからにしてください!

一人暮らしの愛子のもとに姉の香織から贈り物が届く。
中身は『やすお』。
家事全般をこなす人間型ロボット。

しかし『やすお』が思った通りに家事をこなしてくれない。
「身体に覚えさせよう」と叩いたり叱ったりしながら教育するがそれもうまく行かず。
送り主の香織に相談すると、使い方が良くないことを教えられる。
ちゃんと「ありがとう」を言え、「ありがとう」が一番の栄養だ、と。

『やすお』は政策によって半ロボット化された「元は平均的な能力の人間であった人」。
「絶対的な格差と不平等こそが幸福と生産性を最大化する」というAIの構想による政策で、とある若い年齢で一定数の平均的な人間がロボット化させられる。
少数の犠牲の元に全体の利便性を求めた結果だ。
それが『やすお』(女性の場合は『はなこ』)である。

とある日、愛子はあることがきっかけとなり、意図せず『やすお』を強く殴ってしまった。
『やすお』は故障し業者に引き取られることに。

最後まで『やすお』に「ありがとう」を言えないままで。

感想(ネタバレあり)

・『やすお』という存在がロボット化されることで、非現実的、よもや未来に起こりうる最悪なストーリーとして読める。しかし、今の社会も「ロボット化」されてること以外、ある程度の中流層以上が低賃金の方々の働きで支えられているから現実と大差ない

・壊れたら使い捨て、ということも労働搾取と変わらない。働かせるだけ働かせて、倒れたら代わりを探すだけ。やりがい搾取にも通ずるかも

・「ありがとう」という言葉が「ロボットの栄養」という描写がジワジワとえぐられる。今の社会も「お客様からの笑顔のために」とか「お客様のありがとうのために」とかありふれたキャッチコピーとして存在するし。「ありがとう」という言葉さえ言えば使いっ走りしてもいい、という意味にも取れる。

・逆に若者にも「ありがとう」をちゃんと言っているか?とも取れる。『やすお』を家族の家事をしている人と置き換えれば、家族に「ありがとう」を伝えているか?とも取れる。

・「ある一定年齢で大した能力なかったらどうせ使いモンにならんからロボット化」という描写がチクチクする

いま時点ではこんな感じでしょうか。
日を改めて何度も読んだら受け取り方が変わりそうな不思議な漫画でした。

この漫画はネタバレしていても読んだら感じるものが必ずあると思うので、ぜひ読んでほしいです。

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