逞しい顔で会おう

2022年2月11日、金曜日。九段下。
MOROHAの日本武道館、単独ライブがあった。

MOROHAの日本武道館単独は初めてで、18時開演までの間、ずっとソワソワしていた。

このご時世でライブに行くのを躊躇した友人の代わりに、初ライブ・初武道館・初MOROHAの知り合いを連れて行った。ツアーグッズのTシャツをスタンド席から見下ろし、「アフロさんって品川に似てるな」や、ツーブロで「MOROHA」という剃り込みをいれたお兄さんを見て「すげえな、いつもは上の髪の毛下ろしてるんやろうな」などと言いながら過ごした。友人の横にはいかにもな感じのメンヘラカップルと、私の横には、普段はSEなどのお堅い仕事をしてそうなおじさんが座った。座るや否や、ジングルで体を揺らし始めてちょっと嫌になった。ライブが始まるまでのBGMで「ノる」という行為は自分的にダサいと思ってしまう。

18時を15分ほど過ぎた時。UKがのっそり歩いてきて、アフロがストレッチをしながら入ってきた。暗転からのイントロで客を盛り上げる、などといったごく一般的なバンドのやり方ではないところが、MOROHAらしいなと思った。

一曲目が始まった瞬間、隣のおじさんが泣いた。ノるより先に泣いた。色々あったのだろう。ライブの曲数が重なるたび、周りの鼻を啜る音がどんどん大きくなっていった。みんな、泣いていた。私は、彼らを馬鹿にするのでもなく、同情するのでもなかった。ただ、ステージだけを見て、アフロの叫びを、UKのギターを全身で吸収していた。時折、涙も流した。MOROHAが、来ている人に1対1で訴えかけ、デコをと拳を突き合わせていた。

これだけは言える。普通のライブではなかった。


歌詞の中で、一人一人が、心に響く部分が違うと思った。1文字も聞き逃せないから、ノる暇もなく、ただ体は固まったままだった。なんかもう、凄かった。

最後の曲の前に、アフロが言った。

「また笑顔で会おう!いや、笑顔じゃなくてもいいな。逞しい顔で会おうな。」

この一言がアドリブで言えるのが、ファンそれぞれに、響く理由だと思った。笑顔で装うとかじゃなくて、強くて逞しく、自分の中で美しい顔。泥まみれでもいい。この人たちは、今後も人を救っていくんだろうなと強く感じた。

MOROHAのライブは、聴く方が疲れる。本当にその通りだった。人生1のライブだったと胸を張って言える。

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