ひとと長く付き合うには

最近合コンに呼ばれることが度々あって感じたことなのだけれど、初対面で相手のことを知ろうと直接的な質問をする人ほど、うまくいっていない。ひととの距離を縮めるには、お互いのことを深く知り合う必要があると思ってのことかもしれないけど、それは小さな誤りだと思う。
ある社会学者が、人間社会には必要以上に他人と関与してはいけないという暗黙のルールがあると述べている。たとえば電車の中やエレベーターの中でひとはできるだけ他人と離れようとするし、何かの事情やきっかけがない限り話しかけたり目を合わせたりはしないし、してはいけない。しかしお互いに関与し「知り合い」になり一緒にいる場合、その場では相手を無視するわけにはいかず、コミュニケーションをとる必要がある。こういう場面において定型の質問(出身、趣味、仕事など)をする人は多いけど、必要以上にお互いのことを聞く・話すというのは、二人の距離を縮めることにはならないと思う。たとえ一時的に盛り上がったとしても、関係は長続きしにくい。相手に関する情報をたくさん得ると(もしくは相手が自分についてよく知ると)、それによって互いの共通点と差異に多く気付いてしまい、好意や嫌悪を感じる機会が増え態度変容が起こり、結果的に関係が続かなくリスクは大きくなるからだ。
長い間関係が続く友人同士ほど、実はお互いのことを詳しく(細かく)は知らなかったり、久しぶりに会っても他愛のない話に終始するものである。(これには多少性差があるかもしれないけど) ひとと長く付き合うというのは、何気ない会話が続くとか、逆に沈黙が苦にならないとか、お互いのことを知り合うことなく(知り合うことを必ずしも必要とせず)時間を共有できるということだと思う。
それでも、相手のことを知りたい、自分のことを伝えたいという想いにかられることは誰しもある。実際、全くお互いのことを知らないまま付き合い続けることは不可能である。そのため、ひとと親密になる過程においてはお互いを知るということをある種の危機として捉えながらも時に積極的に乗り越える必要があると思う。相手との恋愛関係への発展や持続を期待するのなら特に。