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Club with S 誕生

「ノンバイナリーって超レアキャラすぎない?」

男女どちらのジェンダーにも属さないノンバイナリーとして生きていると、嫌でも実感させられる。

自分が、存在しない……

《男・女》と書かれた性別欄、トイレ、更衣室etc…
体は確かにここにあるのに、自分の性別が“ない”前提で世界が形作られている。
まるで、透明人間になった気分。
なんとか自分を保とうと、“ノンバイナリー”と検索してみる。
情報が少ない。
ゆえに、当事者がなかなか見つからない。
じゃあ、と英語で“non-binary”と検索してみる。
やっと海外の当事者を見つけた。
でも、発信されている内容は英語だ。
ひとつひとつ訳してメッセージを読み込む。

ねぇ、日本にいるノンバイナリーの人ってみんなこんなことやってるの?

英語ができない自分も悪いんだけどさ、だからって、自分のジェンダー・アイデンティティに辿り着くためにこんなに遠回りしなきゃならないって、いや、今そんな余裕ないんだけど。

日々、可視化されない・認知されない、という差別を味わっていて、その苦しみを少しでも癒そうと、ノンバイナリー当事者と出会いたかった。
直接お話できなくてもいい、ただ、自分と同じジェンダーの人がいる、と知って安心したかった。
この世界のどこかにいる誰か、と繋がる近道が欲しかった。
探した。
なかった。
だから、つくった。

それが、Club with S

ノンバイナリーによる、ノンバイナリーのためのコミュニティ。
ここに行けば、確実に、当事者に出会える。
そんな場所。

LGBTQ+(←LGBTって書かれるよりLGBTQ+って書かれた単語を見た時のほうがなんか嬉しくならない? これってノンバイナリーあるある?笑)の中でも特に少数派とされるノンバイナリー。

僕らは“彼ら”をminority(少数派)ではなく、special(逸材)と呼びたい。


「え、君もノンバイナリーだったの?」

Club with Sはオンライン上のコミュニティ。
ノンバイナリー当事者と、クエスチョニングの人、そして運営チームだけが参加できるビデオ通話を定期的に開催する。
具体的には

・参加するために応募フォームへの記入が必要
・顔出ししなくてOK(運営するスピーカーは顔出しするよ)
・聴くだけでもOK
・匿名での参加
・無料

参加者の意見を聴きながら、何度でも改善するし、やり方は柔軟に変えていく。

参加する若い人たちの安心のため、そして誰よりも自分の安心のために、年齢制限を設けることにした。
《30歳未満》
自分のメンタルヘルスは何よりも大切にしたい。

ずっと、自助グループのような存在を求めていた。
だけど、ジェンダー学の専門家ではない、人権問題に詳しい法律家でもない、ましてやメンタルケアのできる精神科医でもない自分に、いったい何ができるのだろう、と思っていた。
それなら、逆に、“The 一般人”な特性を活かした場所をつくろう、と考えた。
とことんグループの扉を叩くハードルを下げよう、と考えた。

休み時間、隣に座っている同級生に声をかけたら、たまたま同じジェンダー・アイデンティティだった。

この感覚が理想。
団体名の“Club”も、放課後に仲間同士で集まっておしゃべりしているイメージから付けた。

今、扉の前に立っている君へ。
一歩踏み出すのはまだ怖い?
そうだよね。
僕らは君の手を引っ張ったり、背中を押したりはしない。
ただ、もし君が動き出したくなったとき、手を繋いで、一緒に扉を開けよう。


「たまにはジェンダー以外の話もしたいよね?」

ジェンダー・マイノリティとして過ごしながら、一番面倒くさくて、かつエネルギーを消費するのが“説明”。

男・女しか性別が存在しないと本気で思っている人たちに、まず、それ以外の性別が存在することを説明して、さらに自分のジェンダー・アイデンティティを具体的に伝えて……
って、いくら時間があっても足りない。

差別的な発言をする人やトランスフォビアの人にはこっちから勝手に離れていけば済む話だけど、LGBTQ+アライな考えを持った人でもノンバイナリーを知らないことは多いから、逡巡する。
信頼できる人に、悩みを打ち明けたり、自分のジェンダーを認識してもらった上でいろんな話をしたいのに、そこに行き着く前にエネルギーが尽きる。

Club with Sなら、すぐ本題に入れるよ!

好きなこと、苦手なこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、励まされたこと、考え込んでいること……
誰かに話したかった、でも、時間や心の余裕がなくて話せなかった、たくさんのこと。
ここで、好きなだけ語ってほしい。

ノンバイナリーのグループ、なんて聞くと、なんだかアクティビスト集団みたいだけど、世界に向けて声を上げるために生み出したわけじゃない。
当事者たちがお互いの存在を確認し、証明し、肯定するためだ。
どこまでもコアな、祝福への軌跡だ。

誰にもspecialな君を否定させはしないし、君のジェンダーを殺させはしない。
その結果、一人しか残らなくなってしまったら?
それこそ本望だよ。
たったひとり、君だけのためにClub with Sをつくった。
見つけてくれて、ありがとう。
存在してくれて、ありがとう。
そしてその瞬間、自分もやっと君にとっての“たったひとり”になれる。

僕らは君の沈黙に全力で耳を傾ける。
君が存在してくれたから、今、Club with Sは生まれる。


Stay Weird, Stay Different and Stay Queer.


Picaru



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