今邑彩さんの「ルームメイト」を読んで自分なりに考えた

2022年5月2日読了。

そもそも多重人格は、自分が耐えられないほどのつらさに直面したとき、自分が壊れないように作り出される。別の人格を作り出せば、そのつらさから逃げられるから。

春海は赤ん坊だったときから虐待紛いの扱いを受けていて、それはつらいことだったと思うけど、健介が死ぬまでは別人格は作り出されなかった。理由は健介がいたから。つらいことはつらいだろうけど、健介がいつも母親から守ってくれていたから、ギリギリのところで保っていたんじゃないか…

それが、いつも庇って守ってくれた健介が死んで自分一人になってしまって、ギリギリだった精神が壊れたんだと思う。母親から虐待されても守ってくれた健介はもういないっていう現実が、決定的に耐えられないつらさだったんじゃないかな。

健介が死んだその日におまえが死ねばよかったと母親に罵られた春海は、多分無意識にお兄ちゃんって助けを求めた。健介は母親に酷く当たられる春海をいつも守っていたから、春海の精神が崩壊した瞬間に生まれた。

作り出された人格が兄の健介だったのは当然のことだと思う。いつも自分を気にかけてくれて愛してくれて、絶対的に自分を守ってくれるのは健介だけだったから。


でも、謙介の人格が作られた理由がよくわからないな。
兄と同じ名前を持つ先輩・謙介に兄を重ねているところがあって、元々好意はあった。謙介がどのタイミングで生まれたのかわからないからなんとも言えないな。

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